朝日新聞書評ボツ本

藤沢『アフリカの風に吹かれて』:身辺雑記だけでは……

アフリカの風に吹かれて―途上国支援の泣き笑いの日々作者: 藤沢伸子出版社/メーカー: 原書房発売日: 2012/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 51回この商品を含むブログ (2件) を見る援助の現場はかなりきつい状況だ。甘い顔をするとみんなにたかられる…

ラートカウ『自然と権力』:いろいろ事例は豊富ながら、結局なんなのかというのが弱くて総花的。

自然と権力―― 環境の世界史作者: ヨアヒム・ラートカウ,海老根剛,森田直子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/07/10メディア: 単行本 クリック: 58回この商品を含むブログを見る本書の基本的な主張というのは、別に環境問題というのは20世紀の工業化で…

ボードロ&エスタブレ『豊かさのなかの自殺』:うーん、いろいろ要因が複雑ってことはわかったが……

豊かさのなかの自殺作者: クリスチャン・ボードロ,ロジェ・エスタブレ,山下雅之,都村聞人,石井素子出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2012/06/25メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 116回この商品を含むブログを見る社会学の創始者の一人デュルケムは、19…

米山『空き家急増の真実』:今後重要になる問題。

空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ作者: 米山秀隆出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2012/06/02メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 25人 クリック: 563回この商品を含むブログ (11件) を見る真実といっても、別に特別な真…

ばるぼら/増渕『岡崎京子』本2冊:資料としてはありがたいが、崇拝者本にとどまり新しい視点をくれるものではない。

岡崎京子の研究作者: ばるぼら出版社/メーカー: アスペクト発売日: 2012/07/11メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 94回この商品を含むブログ (14件) を見る この二冊が同時に出たというのは、基本的に映画「ヘルタースケルター」のタイアップ and/or 便乗…

大谷『都市空間のデザイン』:古代中世の話で9割が終わる都市空間デザイン論というものの現代的意義は?

都市空間のデザイン――歴史のなかの建築と都市作者: 大谷幸夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/02/09メディア: 単行本 クリック: 33回この商品を含むブログを見る ぼくは都市工学科で、大谷幸夫研究室の後継研究室の末席を汚す身でもあるし、大谷幸夫の…

金『北朝鮮建国神話の崩壊』:インタビューや資料の追跡などのプロセスはおもしろい。ただ、明らかになる内容が必ずしも衝撃というわけじゃなくて……

北朝鮮建国神話の崩壊―金日成(キムイルソン)と「特別狙撃旅団」 (筑摩選書)作者:金 賛汀筑摩書房Amazon実は下のマーティンを読み始めたのは、この本を読んで、ここに書いてあることがどこまで目新しいのか確認したかったから。この本は、北朝鮮の建国神話の…

平野『ライブハウス「ロフト」青春記』:知ってる人には本当にジーンとくる本なんだが……

ライブハウス「ロフト」青春記作者:平野 悠講談社Amazon うーん、どうしたもんか。ロフトといえば、知っている人はみんな知っている、知らない人はまったく無縁な世界だけど、音楽のみならず最近のロフト+1とかでもアレだし、日本文化で重要なスポットではあ…

共同通信『建物と日本人』:日本のいろんな建築を新旧とりまぜ紹介。ガイドブック的にはいい。

日本人と建物 移ろいゆく物語作者: 共同通信社取材班出版社/メーカー: 東京書籍発売日: 2012/06/21メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 136回この商品を含むブログ (1件) を見るいろんな建物に人間エピソードをからめて紹介した、新聞連載の単行本化。悪く…

『放射能を食えというならそんな社会はいらない』:おまえがいらない。

放射能を食えというならそんな社会はいらない、ゼロベクレル派宣言作者:矢部 史郎発売日: 2012/06/29メディア: 単行本(ソフトカバー) ゼロベクレル派宣言なんだって。シーベルトもなんか怪しい陰謀がらみだから信用できないって。でも、ふつうの食品もふつ…

吉田編『変貌する聖徳太子』:聖徳太子信仰の変遷を描いて、それにともなう日本人の宗教観や聖人観を探ったおもしろい論文集

変貌する聖徳太子 日本人は聖徳太子をどのように信仰してきたか作者: 吉田一彦出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2011/12/08メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 243回この商品を含むブログ (2件) を見る専門家が集まった論文集というのは、その業界の関心事…

市野川『社会学』:後書きで書いている通り、全部書き直してほしいと思う。

社会学 (ヒューマニティーズ)作者: 市野川容孝出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/06/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 120回この商品を含むブログ (1件) を見るこれが社会学業界の中の人に向けた、社会学の基本論点整理ならこれ…

エッケルト『原子理論の社会史』:ゾンマーフェルト学派の評伝なんだが、ちょっと専門的すぎ。

原子理論の社会史―ゾンマーフェルトとその学派を巡って作者:ミヒャエル エッケルト海鳴社Amazon 19世紀末あたりからの原子理論の研究と発達において、特にドイツではゾンマーフェルトを中心とした人々が、ある学派とも言うべき物を構築して活躍し、それはそ…

チェ・ゲバラ革命日記:キューバ革命前夜の日記だが、日記なので散漫。

チェ・ゲバラ革命日記作者:エルネスト・チェ・ゲバラ発売日: 2012/06/11メディア: 単行本1956-1958年、ゲバラがハバナに進軍して制圧し、キューバ革命を成功させる前夜のお話。官軍の武勇伝といったところだが、どうしてこれまで未公開だったのかはよくわか…

モスコウィッツ&ワーサイム『行動経済学スポーツ』:行動経済学部分はおもしろんだが、スポーツのほうがどうも……

オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く作者: トビアス・J・モスコウィッツ,L・ジョン・ワーサイム,望月衛出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2012/06/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 137回この商品を含むブログ (11…

都甲『21世紀の世界文学30冊』:紹介としてはよいながら視野が狭く筋が通っていない。

21世紀の世界文学30冊を読む作者:都甲 幸治発売日: 2012/05/01メディア: 単行本世界文学、と称しつつ紹介されているのは英語の小説、特にアメリカ中心。著者もそれを気にしているようで、「はじめに」であれこれ言い訳する。英語も大してできないし(まあこ…

カヴェーリン『二人のキャプテン』:うーん、ぼくの期待していたカヴェーリンではなかった。

二人のキャプテン作者: ヴェニアミン・アレクサンドロヴィチカヴェーリン,入谷郷出版社/メーカー: 郁朋社発売日: 2012/05メディア: 単行本 クリック: 56回この商品を含むブログ (2件) を見るカヴェーリンは「師匠たちと弟子たち」も「ヴェルリオーカ」も好き…

ガードナー『専門家の予想はサルにも劣る』:よい本。特にエーリックの醜態は見物。

専門家の予測はサルにも劣る作者: ダン・ガードナー,川添節子出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2012/05/23メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 210回この商品を含むブログ (5件) を見る 専門家の予想というのはなかなか当たらん、それどころか専門家はみん…

ハンフリー『ソウルダスト』:意識の話はむずかしいわー。

ソウルダスト――〈意識〉という魅惑の幻想作者: ニコラス・ハンフリー,柴田裕之出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2012/04/27メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 195回この商品を含むブログ (10件) を見るうーん、意識やクオリアの話はどうしてもウダウ…

垂水『進化論の何が問題か:ドーキンスとグールドの論争』:グールドに甘すぎると思うし、結局「どっちもえらいんです」でなあなあに丸め込むのはつまらなすぎ。

進化論の何が問題か―ドーキンスとグールドの論争作者: 垂水雄二出版社/メーカー: 八坂書房発売日: 2012/05/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 313回この商品を含むブログ (6件) を見るドーキンスとグールドは対立することもあったが、どっちも進化論を…

黒井『群れの文化と個の確立』:原子力の研究者なら原子力業界の話でもしてくれよ。凡庸な官僚論なんか書いてないで。

「群れ」の文化と「個」の確立 群れの文化史観序説 (MOKU選書)作者: 黒井英雄出版社/メーカー: MOKU出版発売日: 2012/04/16メディア: 単行本 クリック: 71回この商品を含むブログを見る題名見た瞬間にどんな話するかわかる本。でも、ここまでひねりがないと…

ピンチョン『LAヴァ椅子』:散漫。猥雑にならずに散漫。ぼくにはあんまり。

LAヴァイス (Thomas Pynchon Complete Collection)作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,栩木玲子,佐藤良明出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/04/01メディア: 単行本 クリック: 101回この商品を含むブログ (47件) を見るピンチョン全集、これを扱わない…

丸山『深海魚雨太郎の呼び声』:言い訳がましい石川淳みたいでぼくにはあんまり。

深海魚雨太郎の呼び声〈上〉作者: 丸山健二出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/05メディア: 単行本 クリック: 47回この商品を含むブログ (2件) を見るなんか野性的な生命力の権化のような太郎が生まれ落ちて捨てられても、成長しうだうだ、という話では…

高山『黒人コミュニティ』:黒人コミュニティのダメなところを率直に述べたよい本。

黒人コミュニティ、「被差別と憎悪と依存」の現在――シカゴの黒人ファミリーと生きて作者: 高山マミ出版社/メーカー: 亜紀書房発売日: 2012/05/09メディア: ?行本-平装購入: 12人 クリック: 965回この商品を含むブログを見る本書に書いたようなことを、社会学…

横山『妖怪手品の時代』:手品でいろいろ妖怪を出す芸の系譜。楽しくてよい本です。

妖怪手品の時代作者: 横山泰子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2012/04メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 85回この商品を含むブログを見る江戸時代には、くだらないのから手の込んだ物まで、妖怪をいろいろ出して見せるようなお座敷芸や手品がたくさんあ…

橘『(日本人)』:風呂敷は広げたがぼくにはあまり目新しいことはないし性急。

(日本人)作者: 橘玲出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/05/11メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 155回この商品を含むブログ (39件) を見る橘令の日本人論みたいなもんなんだけれど、前半とかはずっと、ピンカーや進化心理学やダイアモンドや、その他あ…

ブラウン『ユーロの崩壊』:ユーロはダメで、それは中央銀行が悪いとのこと。

ユーロの崩壊―ヨーロッパにおける金融失敗からの脱出ルート作者: ブレンダンブラウン,Brendan Brown,田村勝省出版社/メーカー: 一灯舎発売日: 2012/04メディア: 単行本 クリック: 19回この商品を含むブログを見るユーロの失敗と現在の惨状について述べた本。…

新田『アメリカ文学のカルトグラフィ』:あんまり認知地図になってません。

アメリカ文学のカルトグラフィ ――批評による認知地図の試み作者: 新田啓子出版社/メーカー: 研究社発売日: 2012/04/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 49回この商品を含むブログを見る批評による認知地図の試み、というんだが、あまり認知地図にはなっ…

大槻『サブカルで食う』:大槻モヨコ殿の一代記。楽しいよ。

サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法作者:大槻 ケンヂ白夜書房Amazon 大槻先生がお書きになった――というより語り下ろした、というべきか――サブカル論というよりは自分の一代記。でもその中で、バンドやりたいとかクリエーターやりた…

篠原『全-生活論』:全体性が重要といいつつ全体性って何かも言えず、<母性>にすり寄る情けない本。

全―生活論: 転形期の公共空間作者:篠原 雅武以文社Amazon うーん、やめてほしいんだよね、この手の哲学的なお遊びに「転形期の公共空間」なんて副題つけるのは。公共スペースデザインの話だと思って読み始めたら、特に目新しい発想が何もない哲学者が、己の…