グーグルが欧州ロビイスト募集中ですわよ、奥様。

小ネタ。グーグルがこんな求人広告を出していたよ。

うーん、スキャンが裏写りして読みにくい。が、なんとかなるでしょう。出所は The Economist 2007/3/10 号 p.19 だ。こういう募集があるから、みんな The Economist は購読しなさいって。ときどきいろんな国の大臣募集とかもあるし、広告を見ているだけでも楽しいんだから。


さて募集されているのはヨーロッパの公共政策と政府関係を担当する弁護士チーム。要するにヨーロッパ向けのロビイストってことですな。中身は、プライバシー、表現の自由著作権、競争、セキュリティ、オンラインコンテンツの規制、広告と技術に関してあれこれ旗振り役をする、というもの。なるほどね。

いま出ている『サイゾー』の「山形道場」で、グーグルは昔からいろんなエサを使うことで、人々が自主的に自分のプライバシーを切り売りするようし向けるというビジネスモデルに頼ってきたんだ、という話をした。(まだオンラインにはあがっていないけれど、あと1ヶ月もすればここで読める)。gmailもグーグルマップもすべてその一環で、どこぞで携帯電話に乗り出したり地域 Wi-Fi を展開したりするのもおそらくまったく同じ発想からだろう、という話。

この手の話は、アメリカであればそこそこやりやすかろう。一時、gmailはプライバシー侵害だという騒動が持ち上がっていたけれど、いつの間にやら立ち消えてしまったようだし。アメリカのグーグルでこんな政治的なロビイスト部隊がいるのかどうかは知らないけれど、そんなに派手には動いていないんじゃないか、たぶん法務部のおまけ程度じゃないか、とは思う。ぼくは読んでないけれど、梅田本や佐々木本には何か書いてあった? ……と聞くだけ無駄だろうね。どうせ何もないと思う。

追記:Google NetPACを作ってアメリカでもロビイングしてるよ、とのこと。情報ありがとうございます。


でも、ヨーロッパはこの手の話にいちいちうるさいし、変に狂信的な連中もいたり、ナショナリズムと悪しき形でそれが結合したりする例も大きい。今後、グーグルがヨーロッパでビジネス展開するにあたって、たぶんそれが障害になりそうだと思ったんだろうね。アップルの DRM 騒動やマイクロソフトに対する執拗ないやがらせ(もちろん本ブログは MS ひもつきなのでここのところの割引加減はいろいろ勘ぐってくれてもいいが、それにしてもあれはいい加減しつこいと思うのだ)、フランスのグーグルに対する国粋主義的な物言いなんかを見たら、まあその気持ちはよくわかる。あらかじめきちんとロビイスト集団を作っておいて……というわけだ。それともどうだろう。単に既存の事業をヨーロッパに広げるだけでなくて、何か新しい事業をたくらんでいるのかな? いろいろ深読みができて、なかなかおもしろい。

応募資格を見ると、日本人は(それもここの読者の大半を占めるであろうひょっとこブロガーたちであればなおさら)明らかにお呼びでないけれど、我こそはと思わん方は是非どうぞ。勤務地もいろいろ選べて楽しそうだよ。ちなみに日本での活動にあたっては、何かこういう根回し要員というのは手当てされているのかしら、と思ってしまうのだけれど、どなたかご存じなら情報よろしく。もしあるなら、その人たちの力を借りられればアレとかコレとか……


ところで意味はないけど、ゾウ。



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