Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 6

Against the Day

Against the Day


承前

ところでInconvenience号一行はヴェニスにいる。なにやら13世紀末にヴェネチア共和国が内アジアに作っていた植民地とそこへの交易路の再発見をどうしたこうしたとかだが、もちろんそれはかのシャンバラでもあり、ピサ大学教授の話ではその旧植民地はこの世界に並置する別の世界に所属するとかなんとかで、その地こそは北半球の陸塊の中心であり、したがってそこを支配するものは世界を支配するのである! (「えー、でも南半球まで入れたら成り立たないんじゃないですか?」「南半球なんて、カンガルーの住む変なところとアフリカのドジンとアメリカのオマケしかないところだろう、無視無視!」)当時の人々は精巧な光学機器を使ってその道を確保していたが、その後方解石の発見により、これがその隠された道の発見に使えることが明らかとなり、方解石をつかった多形歪像鏡が夢の建築を作り出せるとか。ベニスでも宿敵ボルシャイア・イグラ号が見かけられる。そして前日にタロットカードで予言された通り、Inconvenience とボルシャイア・イグラがにらみあう中でサンマルコ大聖堂の塔が煉瓦4つずつの断片と化して突然倒壊。なにやら謎の存在から放たれた振動銃が使われたのではないか?

何が起きたのか両者が川辺で会談するうちに、日本の黒龍会を主宰する内田良平*1の話が登場。ロシア側はかれを暗殺する任務を追っていたが、Inconvenience 号は内田から仕事を請け負ったりしている。黒龍会満州からロシアを追い出して日本が占拠しようとして満州に犯罪者を集めているのだった。


ところでウェッブの殺害者二人はもとの町に舞い戻り、女ほしさでたまたま出くわしたウェッブの娘と片方が結婚してはその後二人で輪姦していると、かつてウェッブがやっていたダイナマイト事件がまだ継続しているので、おまえらウェッブを殺してないんじゃないの、ウェッブの娘とできているのも怪しい、契約不履行ならしかるべき処分を、という人物が登場して、殺害者二人はびびりまくり。


さてそのウェッブの息子の一人フランクは、父が殺されたこともあってデンバーへ逃亡。だが弟を失踪させ、父の死とも関わりのあるヴァイブ社がなぜかいろいろ探りを入れてくる。鉱山出身のかれは亜鉛鉱の勉強をはじめ、文化人類学アステカ文明を研究するレン・プロヴェナンスとつきあいはじめる。彼女はピラミッド型の謎とか、アステカ文明がある時突然平野から異様に不便な山岳地帯に移ってしまった謎なんかを追いかけている。が、それとは関係なくフランクは一人で故郷の町に戻り、金鉱に自分の亜鉛合金技術を売り込もうとして出会ったのが、金鉱監督として働くメルレ。二人が話しているところへ、日本の貿易使節団なる連中がやってきて、みんなコダックのカメラを持って写真を撮りまくっている。かれらはアメリカの魂を求めてやってきたとか。実はかれらは明石男爵の手先で、産業スパイであるとともに帝政ロシアに刃向かう人々すべてを支援しようとしており、ここにも共産主義者たち/アナキストたちがいるというのでやってきたとか。フランクはメルレと仲良くなって地下の小人を見せてもらったりとかその娘ダリアと仲良くなったりとか、父親ウェッブの幽霊としゃべるようになって父殺しの二人を捜したりとか。




(つづく)



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*1:黒龍会内田良平ってホントにいたんだね。よく調べたもんだ。