Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 11

Against the Day

Against the Day


第4章 Against the Day

サイプリアン・レイトウッドなる人物がいきなり登場。こいつ、前に出てきたっけ?(数年ぶりに読み直したら出てきていたけど、なんかゲイだったくらいで大したことしてない) TWIT関係者。ウィーンでうろうろしているところを、ロシアの二人組スパイにリクルートされるんだが、送り込まれた先で変な大佐のSMプレイの相手をさせられたりしている。トリエステを経て、ウィーンに戻ったところで、TWITから逃げようとしているのにどうやら職場もTWITの息がかかっているらしく、意気消沈しているヤシュミンと再会し。友だちと引き合わせて、何とか彼女を助けようとする。具体的に何か起きたわけじゃないが、彼女は元気を取り戻し、二人で娼婦街を散歩するとゲイのサイプリアンがSM嬢に反応。ヤシュミンが足コキすると、サイプリアンは生まれて初めて女相手に射精する。


一方、資本家スカースデール・ヴァイブとその一味もそこらをうろうろ。ヨーロッパのアート作品を買いあさったりしている。リーフとキットは、父親の敵であるスカースデール・ヴァイブに狙いを定めるが、例によってあれこれ口論しつつヴェニスに到着。そのヴェニスには、ダリア(あらすじ9で母親と別れてヴェニスで暮らしてる)がいて、キット&リーフと再会。で、リーフはいつの間にかルペルタ・チャーピンドン=グロインというブロンドのねーちゃんとできてる。(だれだか忘れてたけど、前にもバター犬つれてちょっと出てきた)。

 さてキットはダリアに、自分がヴァイブを殺すつもりで(もちろん彼女はとっくにそんなことは知っていたが)、これから内アジア(シャンバラね)に行くんだと告げる。でも、いつか必ずここに戻ってくるからと確約。彼女のいまの雇い主は、そんな男は忘れちまいなとアドバイスするけど…… その殺し方について三人で話をしたり。

さてその晩、ダリアのご主人が、彼女を説得して舞踏会に連れ出すんだが、そこの客の一人がなんとスカースデール・ヴァイブ。電飾つきの渡し板をのぼってくるところで、リーフとキットの友だちが護衛いっぱいのヴァイブに(丸腰で)突進して射殺されてしまう。そしてヴァイブは群衆の中のキットをはっきり見据えて、ニヤリとせせら笑う。

リーフとキット、ヴァイブ殺しをなんとなくあきらめるようなそんな感じ。キット、ベニスを離れて、トリエステに向かう。どこからそれを知って見送りにくるダリア。キットは、二度と厳密にはここに戻ってこない、というんだが……


さてキットくんは何をしに内アジアに行くんでしたっけ? そうそう、ヤシュミンの養父のハーフコート大佐を探すようTWITに言われてたんでしたっけ。で、そのときヤシュミンから父親宛の手紙も言付かっているんだけど、その手紙の紹介。彼女はもうTWITは信用できないと言うんだけど、彼女もなんかシャンバラがどうしたとかで、何がしたいのかよくわからん。キットは、トリエステからブカレスト黒海を経てバクー、カスピ海を越えてカラクム砂漠、サマルカンドから、やっとこカシュガルへ(この間たった3ページだが)。

ところがカシュガルについてみると、行方不明になったはずのヤシュミンのお父さんはぜーんぜん行方不明になんかなってない。どうもだれかがヤシュミンをTWIT庇護下に置くためにウソをついたみたいだ。お父さんのオーベロン・ハーフコートは、タリム・ホテルで優雅に欧州風の暮らしを楽しんでいて、ホテルで向かいに住んでいるロシアのイフゲニー・プロクラドカとまぶダチ。イフゲニーは上海から蒸気式 3D シアターを持ち込んでそれに引きこもり状態。

そこへキット君が登場するんだが、ヤシュミンを巡ってハーフコートはキットにいろいろ探りを入れたりして*1、でもかれがそのままシャンバラへ行くつもりなので、地元のフィクサーであるザ・ドースラの指示を受ける。日本軍の三八式有坂歩兵銃を持たされ、かれはドースラの師匠に会えと言われる。残ったハーフコートは、ヤシュミンからの手紙を読んで、自分が堕落してこのままではダメだと嘆き、カシュガルを離れて砂漠に出て、数週間後にブカラに現れたときには実にかっこよくなって(でも目の狂気は消えない)いた。ヤシュミンのことばかり考えて、夢で彼女に連絡を取ろうとしたりとかなんとか。そしてかれも、チベットのかつての王子によるシャンバラへの路を述べた手紙(のドイツ語訳)をあさったり。シャンバラへの路はタクラマカン砂漠の北にあるという――


キットくんは旅を続け、イルクーツクを経てバイカル湖に到達した。それを見て、かれは天啓のようなものを感じる。湖から川が流れ出すところが、ブリヤート族の聖地で目指すべきところらしい。ふと気がつくと、いっしょにいたはずのガイドも姿を消し、もはやキットは一人きりだった。

そこに至るまで、ドースラの案内で近くの村からガイドのハッサンを雇い、「予言者の門」という迷路をくぐりぬけた。テンシャン山脈を通り、トルファン、火炎山、さらにウルムチを経由。野生の大麻の中を抜け、オオカミに囲まれ、ノボシビルスクにたどりつき、そしてそこから鉄道でシベリアのパリと言われる(が実はただの西部ゴールドタウンみたいな)イルクーツクにやってくる。

さてキットくんはここで、輸出入業にたずさわるスウィシン・パウンドストックなる人物と接触しろと言われていた。かれらは指示をうけて、そこからエニセイ川流域のツングースカ地帯に入り込む。

(つづく)



クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.

*1:ここにヤシュミンと大佐の愛人関係を読み取るべきかについては諸説あり。