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日本の左翼知識人のうろたえぶりだけが伝わってくる一冊。

書評 毛沢東

毛沢東 20世紀思想家文庫 15

毛沢東 20世紀思想家文庫 15

たいへんに不思議な一冊。小田実は、ベ平連ベトナム戦争への反戦団体、ひいては反米サヨク市民団体)で有名な人だが、別に中国に詳しいわけでもないし、中国語が読めるわけでもない。毛沢東の伝記的、思想的な記述は本当に通り一遍で、受け売りレベルにとどまるし、それすらあまり勉強していないのは明らか。

そんな人が中国にちょろっとでかけてあれこれ見聞きするのだが、それによって毛沢東について何か新しい知見が出るわけでもない。かれは文化大革命でコロコロ変わった毛の発言に戸惑い、それでも毛沢東サマのおっしゃることなら、と盲信していたら、その後毛の方針自体がまちがってました、とはしごをはずされて、どうしていいかわからずにひたすら途方にくれている。あれもわからない、これも判断がつかない、これもどうしていいかわからない、結局毛沢東をどう評価して良いかよくわかりません、というだけの本になっている。

現代の偉人を新しい目で見直すはずのシリーズに、なぜこんな「どう見直して良いかわからない」などという本が入っているのは謎だが、一方でこれは当時の(そして今の)日本の、良心的にはちがいないが今にして思えばおめでたい左翼知識人、ひいてはそのお先棒を担いでいた岩波書店が置かれた状況をよくあらわしている。かれらはずっと社会主義毛沢東を絶対的な正義として掲げてきて、その評価が変わってしまったときに、どう対応していいかわからなくなっている。そのうろたえぶりを、本書は素直に伝えているといえなくもない。その意味では、その戸惑いぶりを見るために一読する価値はあるかもしれない。が、一読だけ。そして読んでも、毛沢東については何もわかりません。日本の左翼知識人の混乱ぶりに興味がある方だけどうぞ。

(ちょっとアマゾンのコメントとかが最近たくさん削除されているのに気がついたので、バックアップを取るようにする)