文学の終焉とかいう本は、たいがいが検屍解剖と葬式で文学を延命させようという姑息な試みであることが多いんだけど、本書も例外ではない。あれこれ引用をちりばめて深遠そうな身振りはするんだけれど、序章で泊付けに脳科学を持ちだそうとして引用されるのが、
養老孟司と
茂木健一郎だというのが、この本の高尚ぶった底の浅さを露呈している。で、最終章は
ポスコロ談義をこむずかしく言い直す。
スピヴァクの本ですら、もう少し見通しもよかったし、社会問題へのすり寄りしか生き延びる道はないと明言していて潔かったが、この本のウダウダぶりはちょっと耐え難いものがある。でもまあこういうのをありがたがる人も、ブンガク業界の中にはいるのかもね。結局文学は科学とかみたいな分析はしないのが身上で、要は自分語りなのだってことを延々述べているにすぎないんだけど。自分語りはみんなブログとか
ツイッターとかでやりたいみたいだしそれを読みたい人もいるようだから、そうやって文学が延命したいなら、まあ内輪でやってれば? でも
朝日新聞で紹介するような一般性は皆無。
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