土橋正「文具の流儀」:ユーザーとしての哲学がないためにただのウンチク本になっている。

文具の流儀: ロングセラーとなりえた哲学

文具の流儀: ロングセラーとなりえた哲学

ロングセラーの文房具について、メーカーにヒアリングしてその歴史と開発エピソードをまとめた本。

でも著者のほうには哲学があるわけではないので、単にいろんな話をきいて集めただけに終わっている。その哲学のなさというのは、冒頭でボタンダウンのシャツはブルックスブラザースのものしか買わないという話にあらわれている。

それはなぜかというと、ブルックスブラザースというメーカーが、昔も今もボタンダウンのシャツを作り続けているからです。

つまり、その分野の専門メーカーであるということです。

永年ボタンダウンシャツを作り続けているがゆえに、このメーカーはその道をきわめているのではないか、と思うのです。

つまりこの人は、自分が利用者としてブルックスブラザースのどこを評価しているのか、という視点がない。単に長く作ってるからなんかいいんじゃないか、というだけ。ちなみに上の引用で「専門メーカー」ってぼくの知ってる意味とはちがうなあ。

したがって、それぞれの商品紹介も、単に話をきいただけ。ユースケース皆無。ちなみに、この人は文具紹介サイトも持っているけれど、印象感想文以上のものは書かれていない。

いくつか懐かしい文具も紹介されているのはうれしい気もするけど、本としてはまったく紹介したいとは思わない。あ、それとこの人、文具云々と言っているくせに烏口ってどんなものか知らないんだね (p.350)。つけペンと勘違いしている。あと最後のロットリングの使用記とか、やってはいけないことばかり悦にいってやっていて、製図実習で苦労した身としては読んでいて吐き気がした。ダメー。こんなのとりあげません。



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