- 作者: 後藤和久
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昔、金子隆一『大絶滅!』を読んで、隕石説は結構劣勢になっているのか、と一時は思っていたんだよね。金子はプリューム説、つまり地殻変動による火山噴火で恐竜が絶滅したという立場で、今後もそうした地殻変動に備えるような地球管理体制を構築せよ、という勇ましい本だったので結構おもしろく読んだ。
が、本書は隕石説が圧倒的に正しいと主張し、火山説を含む異論について、その問題点を指摘する。隕石説が劣勢に見えたのは、同じ隕石説内でも細かい内輪もめがあって、異論に対する一体的な対応ができなかったから、という。でも実際には、異論のほうがかなりの少数派であって、議論の決着がついていないかのような印象はかなりまちがっているんだよ、とのこと。
学説の解説や、その論証、反証については、現場で活躍している科学者だけあって詳しいしそこそこおもしろい。メキシコのでっかいクレーターが見つかったあとの各種学説の潮流も説明されている。
ただぼくは金子本を読んだあとであちこちの記述を見て、著者が懸念するほど隕石説が劣勢だとは思っていなかったので、逆にこんな本(そして著者たちが書いた論文)が必要だったということにかえって驚いた。あと、モノグラフだから当然なんだけれど、「やっぱ隕石です」という一言にまとめられる本で、あまりふくらまない感じ。書評に大きくとりあげる感じではないと思ったのでパス。でも、この問題に関心ある人は、さっと読めるしよい本だと思う。
追記
メキシコの隕石かインドのプリュームか、だと思ってたら、インドの隕石でプリュームが起こり、という合わせ技もあるのねー。もう好きにしてって感じ。
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