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田崎『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』

やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識

やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識

昨年の東電福島原発事故による放射線の影響で、このぼくを含め日本住民のほぼ全員が、恐怖と不安の中で、この一年半を送ってきた。目に見えず、馴染みもない放射線を不安がるのは当然のことだ。だがお手軽な対応を求めて怪しげな情報に踊らされ、ためにする極論を真に受けて無用に不安をつのらせる例もいまだに多い。
困ったことに、少量の放射線による影響については、まだわからないことも多い。でも、はっきりわかっていることもある。そしてそれを知ることで、極論がどうして極論なのかも理解できる。
本書は、ある科学者がそのわかっている/いないことを調べて、ていねいに説明した本だ。
一読してわかるのは、本書の誠実さだ。読者をバカにしない。不正確な例え話でごまかさず、科学的に高度な内容が必要なら、端折らず説明する。科学者とはいえ、放射線の専門家ではない著者は、国際放射線防護委員会などの報告や提言を活用する。でも鵜呑みにはしない。その機関が各種結論や提言を出した論拠や考え方もきちんと説明する。原発事故に伴う政府不信や科学不信から、こうした既存機関すべてを否定する論者さえいる。だが否定するにしても、その主張をまず理解しなければ。本書は、そうした否定派ですら議論のベースにできるのだ。
本書は「安全です!」とも「危険です!」とも言わない。本書の記述を受けてどう行動するかは人々の裁量次第で、どういう裁量があり得るかについてまで親切に議論されている。でも、どんな行動についても、本書は自信と安心を与えてくれるだろう。
なお、本書で触れられていないのが放射線の測定。安物測定器を買ってボタンを圧し、出た数字に一喜一憂する例も多く見かける。これについては丸子かおり『放射線測定のウソ』(マイナビ新書)で勉強を。また放射能への長期的な対応も、現場レベルでは獅子奮迅の努力が行われているが、情けないことに国としてはいまだにまともな体制やガイダンスが調ったとは言いがたい。『スウェーデン放射能汚染からどう社会を守っているのか』(合同出版)は、チェルノブイリ後の社会レベルの対策と個人の対応について同国政府がまとめたもので優秀。
まだまだぼくたちは、否応なく放射線とつきあわざるを得ない。今後、社会的な対策を整備する中でも、本書の水準が共通の前提となれば議論は本当に生産的となるはず。本書はネット上で書かれ、いまも全文ネットで公開されているので、買わない人でも是非ご一読を。これがいま必要とされる放射線リテラシーだ。(紙面掲載 2012/11/11, 朝日新聞サイト)

コメント

まず Disclaimer. ぼくは著者と個人的に知り合いなので、上の書評もそういうバイアスがあるかもしれない。この点はご注意を。しばらく前に話をしたときには「こういう本業以外のことで話題になって名前が知られても ちっともうれしくない」とぼやいていたんだが、御意にござりまする。今回の地震でも原発事故でも、工学部系がもっと活躍すべきなのに全然出てこなくて、理学部系の人々ばかりがあれこれ奮闘しているのが本当に情けのうございますよ、工学部出身としては。

しかしこれを書くために、世の中の一般向け放射線解説書を山ほど買って読んだが、卒倒しそうなものばかり。玄米食べると放射性物質を排出できるとか、納豆は放射線浄化するとか。母親のため/子供を守るためと称するシロモノの多くは、「これ、母親側向けなんですか? 小学生でもここまで幼稚でひらがなまみれのシロモノは頭痛がして読んでいられないのでは、オレが小学生ならこんなバカに守られること自体を不安に思うぞ」と思うものだらけで、あれやこれや。わかりやすい=幼稚、へたくそな比喩まみれで肝心なところはむずかしいから逃げる、というのが、イメージをつかんでもらうとか称してやたらに行われているけれど、たいがいの人はたとえ話を正確に理解する能力をもっておらず、どの部分が何に対応しているのかもわかっていない。だからそういう幼稚さは、わかりやすいつもりでかえって誤解を広めている場合のほうが多いと思う。
文中に紹介した他の二つの本は、少なくともそういうところはない。少し注文はあるし、また特にスウェーデンのやつはトナカイがどうしたとかにやたらにページが割いてあって、日本でそのまま応用ってわけにはいかないし。でも1100字以下ではそこまで書けないわー。

放射線測定の本とか、エンジニアや測定屋がちゃちゃっと知ってることを書いてくれればいいだけで、しかももっと需要あると思うんだが……多少はあるんだけれどね、目先のガイガーがウンターとかに特化している感じ。その部分では三才ブックスラジオライフ系のやつとかも(今回ちょっと入手がまにあわなかったが)いいのかな? でももう少し測定全般についてもほしいなあ。

ガイガーカウンターのすべて (三才ムック vol.430)

ガイガーカウンターのすべて (三才ムック vol.430)

とはいえ早野教授らのWBCをめぐる奮闘ぶりを見ると、実は目先の線量をはかる以上の部分まで含めてまともに測定がわかっている測定屋もそんなにいないという状況なのかもしれない。まして国としての対応となると……



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