宮崎・玉川『都市の本質とゆくえ』:不勉強すぎ。

都市の本質とゆくえ: J.ジェイコブズと考える

都市の本質とゆくえ: J.ジェイコブズと考える

おまけで拾ってきた本。ジェイコブズのあまりうまくない要約をしたうえで、ジェイコブズ批判に対してあれこれ「反論」した本なんだが、不勉強すぎ。ジェイコブズ批判として挙がっているのって、ぼくが『アメリカ大都市』解説で触れたものだけ。いやあ、ジェイコブズ批判って他にもあるよ。このズーキンもそうだしハーバート・ガンズのもあるし、上のグレーザーも問題点は指摘してるよ。学者ならもっとちゃんと調べようよ。ぼくは片手間だけどあんたたち本業でしょ? そしてソローその他への反論も、ちゃんとした反論になってない。都合の悪いことはかんちがいとかなんとかでごまかして、とにかくへりくつつけてでもジェイコブズ様のご託宣はすべてすばらしいことにしたがるばかり。そうやって批判をないことにしてしまっても意味はないでしょうに。そういう批判が出てきた理由や背景を分析しないと。そしていまこういう本を出すんなら、その後の展開、ジェイコブズの議論の問題点やそれを受けて何がどう変わっているか、そこらへん整理しないと。

そして後半は、自分が前にジェイコブズせんせいにお目にかかったときにはどうのこうの、というくだらない自慢。インタビューにおもしろい部分もないわけじゃないが、まれ。ジェイコブズの解説だというんだが、もう少しちゃんとやろうよ。物理的にも内容的にもうすっぺらい。本業の学者の書いたものが、ぼくの片手間訳者解説に劣るってどういうことだよ。



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