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テスラ『ニコラ・テスラ:秘密の告白』:ちゃんとしたテスラの著書。信じなさい!

ニコラ・テスラ 秘密の告白  世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙

ニコラ・テスラ 秘密の告白 世界システム=私の履歴書 フリーエネルギー=真空中の宇宙

えー、本屋でトンデモな方々の本に混じって並んでいたので、まずこれは本物なのか、というのが気になるところ。テスラの書いたものは三ページだけで、あとはトンデモ陰謀論者の妄想が並んでいたりしないだろうなあ……

……とこわごわ買ってみたが、まったく問題なし。

本としては、以下の二つの全訳(上のやつは自伝メモ "My Inventions" kindle 版のはずなんだがなぜか表示されない):

My Inventions (English Edition)

My Inventions (English Edition)

The Problem of Increasing Human Energy

The Problem of Increasing Human Energy

ぼくは前者しか持っていないけど、ちゃんとした全訳になっている。翻訳もあぶなげない(章題は日本で勝手に変えているみたいで、ちょっと不適切だと思うが)。たぶん後半も大丈夫そうだ。

で、とっても短いしおもしろいので、是非読んでほしい。実は二冊目を訳した第二部が『フリーエネルギー:真空中の宇宙』という題名になっていて、出やがったな妖怪フリーエネルギーめ、と思ったんだけれど、これは編集部が勝手につけただけ。中身にはフリーエネルギーなんて出てこない。それどころか人間の持ついろんなエネルギー源をきちんと考察し、風力も太陽光も地熱も潮汐も検討して実にシビアな診断を下している。百年以上前だが、今読んでも全然遜色なし。

前半の自伝は、やっぱガキの頃から奇妙な人だったというのはよくわかる。当時の、戦争を終わらせるための戦争(第一次大戦はそういうもんだと言われていた)なんていうのがナンセンスだという考察や、技術的な平和論への懐疑とか、きわめて明解だしこちらも今読んでもちゃんとスジが通っている。あらゆるものが、試行錯誤なしに一発で動いてしまうとかいう豪語はすごい。

たぶん全体として、これはどこまで本当かと思うのは、一番最後の電力空中伝送のところだけだろう。定在波を使って任意の地点にエネルギーを送れるという話。でも彼もまだこのシステムは研究途上で、最後は、自分が途中までやったこのプロジェクトを後世の科学者が完成させてくれ、という訴えで終わる。ちなみにもちろん、ちゃんとやってる人々がいます。

http://japan.digitaldj-network.com/archives/51944399.html

(この人たちのKickstarter の資金集めは失敗しちゃったみたいだが、またやらないかな)

彼の伝記とか研究とかはすでにいろいろあるし、バカな陰謀論に入り込んでしまったり(この本のアマゾンレビューも早速そんな連中に荒らされていたり)オカルトにつなげたりと、あまりまともな紹介されずキワモノ扱いされがちだけれど、でも偏見なしに読む価値ある。実は奇矯ながらかなりまともな人だったんじゃないかなあ。ちなみに、いま交流より直流の伝送が一部で復活しつつあるけど、どうなんだろうね。テスラが何というか興味あるところ。



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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.