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常田『太陽に何が起きているか』:最近の太陽活動とそれを解明した活動のまとめ。おもしろいが地球との関連が弱い。

太陽に何が起きているか (文春新書)

太陽に何が起きているか (文春新書)

太陽黒点が減っていて、太陽の活動が低下しているようだという研究と、それを解明する観察衛星プロジェクトの話をまとめたもの。最初と最後が太陽の話、間にはさまっているのが人工衛星プロジェクトの苦労に理論的な話をからめた部分。

まあまあおもしろい。ただ、いま太陽活動に興味を持つ理由の一つは、それが地球環境、特に地球温暖化に与える影響みたいなものだと思うんだけれど、そのあたりが最後のほうであれこれ出る割には歯切れがわるい。「太陽活動の変動による地球環境への影響はない、もしくはあったとしても微々たるものというのが、気候学者たちの一致した見解です」(p.173) で、それならどうでもいいではないですか、という感じ。すると、その後で太陽定数の変動とか、スベンスマルクなんかの宇宙線による雲の形成とかであれこれ紹介しているのは何なのか、というのがわからなくなる。スベンマルク説が正しいと、どういう影響があるのか、とかきちんと説明されていない。だもんで、結局何なのよ、という感じ。「もうちょっと研究しないとわかりません」というんだけど、それは事実にしても、いろんな可能性だけでも示してくれないかなあ。もちろんそうした新書系の本としては、桜井『眠りにつく太陽』なんかもあるし、それとの重複を避けるという配慮かもしれないけれど。

眠りにつく太陽――地球は寒冷化する(祥伝社新書215)

眠りにつく太陽――地球は寒冷化する(祥伝社新書215)

むろん、一方でこの桜井本にあるような政治的な背景や陰謀論寸前の話にうんざりする読者層も当然いるので、そういうのを避けるのは一つの見識だろう。著者は太陽に関する研究のあれこれをテレーンと紹介したかっただけで、ついでに人工衛星がらみの自分のこれまでの仕事を紹介したかったということだろうし、その意味では悪い本ではない。苦労話は少し書きすぎだと思うので、もっと減らした方がよかったかも。でも極端ではない。でも、編集部の意向とはいえ、帯にでっかく「観測衛星ひのでがとらえた太陽異変 地球への影響は?」と書いておいて、何もありません、というのはいささか拍子抜けすぎると思う。太陽がN−Sの二極ではなく、最近は磁極が二つずつある四極構造になっているようだというのは知らなかったし、おもしろい。そこらへんの磁場出現メカニズムの説明とかも、わかりやすくてよいので、純粋に学問的に太陽研究の現状を知りたい人には有用だと思う。

しかし、スベンスマルク宇宙線が増えると雲が増えて寒冷化するという説を発表したせいで、温暖化扇動研究者たちに学界でいろいろいじめられたと言っていたし、どこかでスベンマルク説はどーんと否定されましたという記事を読んだけど、本書を読むと実は先日のヒッグス粒子発見の影で、スベンスマルク説の正しさを証明する実験も行われていたそうな。

“不機嫌な”太陽?気候変動のもうひとつのシナリオ

“不機嫌な”太陽?気候変動のもうひとつのシナリオ

すると温暖化の議論もまたいろいろ荒れそうで、楽しみ。



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