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マカオのカジノは貧乏人で儲ける

Economist

もうずいぶん昔から、日本にカジノを作ろうとかいう話があちこちで取りざたされていて、オリンピックが決まったのを期に外国人から金をむしれるようにあれこれ、という話も最近はよく耳にする。で、The Economist にアジアのカジノに関する記事が出ていた。

The Rise of the Low Rollers (The Economist, 2013/9/7 pp.53-54)

たーいへんに面白いっす。基本的には、アジアにもどんどんカジノが今後できるみたいだよ、という記事なんだが、でもその中でもマカオがすごい、という話。やっぱり、ばくちが好きなのは中国人。それと本土でつながっているのが何よりのメリット、ということで、さらにいまや香港空港とマカオを橋で直結する計画が進んでいて(ええっ、珠江の河口を横断するの!!??)、またマカオの隣の広東省の島 (横琴) がいまやカジノ特区でマカオのカジノはそっちに展開とか。

で、ぼくがこの記事で驚いたこと。

  • ラスベガスよりマカオのほうがカジノとしてでかい!


たぶん関係者には常識なんだろうけれど、土地勘のないぼくにはかなり意外。単体でなら、ストリップのあそこよりリスボアがでかい、といったようなことはあるにしても、全体でもそうなのか!! しかも、桁違いにでかい! どう見てもラスベガスのほうが規模がでかそうな印象があるんだが、ギャンブル気狂いの中国人集団にはかなわないということかしら。
ついでに、シンガポールがこんなにでかいというのも知らなんだ。アトランティックシティより上なの! ラスベガスに迫るほどなの??!!


  • ジェットセッターの大立て者ギャンブラーにくらべ、泡沫ギャンブラーたちのほうが利潤はずっとでかい!


一回で何百万も使うような大立て者ギャンブラーのほうが、数千円ずつスロットマシンするくらいの泡沫ギャンブラーなんかより絶対に売り上げでも利潤でも大幅に貢献していると思ったら……チリも積もれば、というのと、大立て者は確かに大金は落としてくれるが(だから売り上げはでかい)ご機嫌伺いにすさまじい金がかかるので、かえって利ざやは薄い一方で、貧乏人は面倒見なくてもだまって金を落としてくれるから楽、ということなんだって。

いやあ、予想外。テレビのラスベガスドキュメントなどでは、いかに大立て者ギャンブラーたちのご機嫌をとって何度もきてもらうか、というのがカジノの成否をわけるのだ! といった話をしょっちゅう聞かされていたので、しょせん泡沫客なんか大して貢献していないのかと思ったら。

(追記:スロットマシンやルーレットで10-20ドルくらいおそるおそるチップを張って、100%損してもまあ気分だけ味わえればと思って文句も言わない貧乏人にくらべ、ジェットセッターはたまに勝たせないと「おまえのところはツキがない」とか言って逃げるしなあ。これを見ると、VIPギャンブラーなんか無視して貧乏人相手のせこいスロットマシン並べておくのが一番儲かる、ということになりそうだ。でもそれだとカジノの派手派手しい部分がなくなって、貧乏人もこなくなってしまうんだろうか。しかしよく考えると、貧乏人相手のせこいスロットマシンだけ並んだカジノって、つまりはパチンコ屋のことだよね。パチンコ屋こそ利潤追求型カジノの究極形態なのか??!!)

しかし、かつてのマカオは、ギャンブルはあっても比較的のんびりしたいいところだったのに、先日いったら中国人の団体客に文字通り埋め尽くされていて、本当に驚愕した。その数年前には、リスボアがいつのまにか、あの悪の要塞みたいなすさまじいシロモノになっていたのも驚いたけど……やたらに埋め立てもすすんで、ベラヴィスタの前が完全に埋め尽くされてちっともベラヴィスタでなくなっていたのもかわいそうに。島のほうも空港ができてかなり変わったらしいし。うーん。

それにしてもなぜ中国人はあんなにギャンブルがスキなのかはなぞ。プノンペンもでかいカジノがあるが、ほとんど中国系のやつばっか。ラオスのサヴァナケットにもカジノがあるが、飛行機でそこの親玉と隣り合わせになって話したら、やっぱ中国人だって。南アの真ん中にあるレソトにもカジノがあるが、客は中国人だらけ(現地の商店は相当部分が中国人オーナーです)。それでみんな、ブラックジャックとかで、札を上から思いっきり気合いをいれてテーブルにたたきつけたり、あと配られたカードを見るときに、親指と人差し指でギリギリ絞り出すようにしてじわじわ見るのをやるのは、あれはどういうまじないなのか知らないけれど、みんなやるよなー。

ちなみにシンガポールにもカジノがあって、外国人はタダで入れるがシンガポール人はかなり高い金を払わないと入れないようになっていて、露骨に外国人から金をむしり取るんだなあ、と感心していたんだけれど、実態はちがうそうな。現地の中華系の連中が、高い金を払ってもやってくるんだって。

しかし、カジノの構想とか見るともちろん高級なハイソ感を漂わせようとしているけれど、こういうのを見ると、実際どうなるのか考えてしまいますわな。日本にもギャンブル好きはいるけれど、どうよ。そして収益を考えると、貧乏人が中心ってことはいま競馬やパチンコに精を出している連中が結局は中心顧客層ということになるわけ? そしてそこに大量の中国人ツアー客が押し寄せ……かなりイメージとちがうものになるのかも。



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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.