チャルディーニ『影響力の武器』/『影響力の正体』:同じ本なんですがなぜ?(付記:ちがう本だそうです。追記参照)

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく

影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく

こないだ本屋で、チャルディーニの新刊『影響力の正体』がソフトバンクから出ているのを見て、あれ、新しい本なんてあったっけ、と思って眺めていたんだけれど……

なんか立ち読みで目次を見ても見覚えあるし、中身も見たことある話ばかり。でも『影響力の武器』を読んだのはしばらく前なので、うろおぼえかも、と思っていたんだが、今日改めて丸善で並べて見ると、どっちも Influence の邦訳。(上の表紙写真にも原題が出ていて、どっちも同じなのがわかると思う)

で、両者の差がよくわからないんだが、どうも以前から出ている誠信書房『影響力の武器(第二版)』というのは、原著の第四版の訳で、こんどの『影響力の正体』(ソフトバンク版)は、原著第二版の訳かなんからしい。

十年留保とかが効くような古い本じゃないし、どうしてこんなことができるのか不明。奥付を見ると、どっちも版権は取っているらしいんだが、版権を持っているのがそれぞれ本人ではなく出版社なので、原著が版元を変えたときになんか別個に交渉ができるようになった、ということなのかな?

原著の第四版と第二版との間に、そんな目に見えてすごいちがいがあるかどうかは知らないが、ざっと見たところまったく見覚えのない章が追加されていたりはしない模様。新しい『影響力の正体』のほうが、新しい訳なのと個人で訳しているのとで(誠信書房版は、学者が集団で訳している)、若干訳がこなれているかな、という部分はあるけれど、そんなに極端にちがいがあるわけでもない模様。少なくともぼくは旧訳で、まったく意味がわからないとか理解不能とかいう状況に陥ったことはなかったもので。誠信書房版のほうは、日本版への序とかちょっとだけおまけがあるけれど、すごい付加価値というわけでもない。

そんなわけで、すでに持っている人は別に買い直す意味はなく、新しく買って読もうという人は、ソフトバンク版のほうが安いし造本はすこしあかぬけているし、翻訳が少し改善されているので、こっちを買ってもいいかな、という感じ。でもどっちでも基本的には同じだよ。読者が混乱しないように、ソフトバンク版ではまずすでに邦訳があることと、新版の売りについて何らかの説明がほしかったなあ、と思う。

付記:なんでも、原著が教科書版と一般書版でフォークしていて、そのちがいだとか。

togetter.com

ありがとうございます! こういうの、ホント解説で説明しといてほしいなあ。




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