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柳下『皆殺し映画通信』:一気に読んではいけません。

書評

皆殺し映画通信

皆殺し映画通信

柳下の、ダメ日本映画紹介本。紹介されているクズ日本映画のどれも、明らかにくだらなそうだけれど、柳下の紹介がうますぎてというべきか、かえってそのクズぶりがおもしろそうに見えてしまうというのが困ったもの。でもだまされて一本でもうっかり機内で見たりすると(ガッチャマンとか)もちろんそういう迷いからは覚醒できます。

一本、二本の紹介は実におもしろくて笑って読んでしまうけれど、だんだん読むうちに、おなかいっぱいな感じで、さらに読み進むと、日本映画ってこんなろくでもない代物しかないのか、と暗澹たる気持ちになるので、一気読みはおすすめしない。とはいえ、少しずつ読んでも日本映画の傑作が増えるわけではないのは事実ではあるんだが。

ある意味で客層の問題でもあるんだろうねー。うちの母親は昔、テレビ局に勤めていたんだけれど、NHKと馬鹿な視聴者を常に罵倒していて、「ドラマとかで、最後に犯人が見落とした決定的証拠にカメラがズームインして、勝ち誇っている犯人が間もなくつかまりそうな予感を出して終わりとかにしたら、すぐに『それであの犯人は逮捕されたのか!!』とか『どうして刑事はあの最後の証拠にきがつかなかったんだ! だめじゃないか!』とか電話してくるバカが多すぎてウンザリ」と愚痴っていたんだけれど、そういうのにあわせようとすると、すべてをせりふで説明する映画づくりにならざるを得ないんでしょう。とはいえ、それをやっているから最底辺へのデススパイラルが続いて現状があるというのも事実で……

また、紹介されているものはあまりにひどいので、ついつい本書はよほどひどいのだけ選んで採り上げているにちがいないとか思いたくもなる。アマゾンのレビューとかでも

あからさまにダメそうな作品や企画ものなどをチョイスしてレビューしている

なんて書かれているし、他でもそういう評価はみかける。でも実際はまったくそんなことはない模様で、そういうこと言う人は、たぶん邦画ってジブリしか見てない人なんじゃないか。罵倒されている中には、そこそこお金かけたりでっかい宣伝したりした「大作」映画も入っているし、実は結構よいサンプリングなんじゃないの? ここに採り上げられていないものもひどさは五十歩百歩。こないだも機内で北川景子がのそのそしてる、執事が事件解決するやつとか見かけたけれど、ほんっと情けない代物。みんな、映画(でもテレビでも)に大仰な舞台芝居平気で持ち込んで――いや思い出すのもいやなのでやめた。

ということで、一日あたり服用は三編以下に控えること。最後まで楽しく読めるでしょう。しかし柳下、お疲れ様です。MST3000みたいにダメ邦画を流してる横で柳下がひたすら突っ込み入れ続ける深夜番組とかあればいいんだけどなー。

Mystery Science Theater 3000: The Atomic Brain [VHS]

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