ケインズ『平和の経済的帰結』翻訳終わったぜ。

はい、先月末にはじめたケインズ「平和の経済的帰結」、終わったぜ。乞食ども、持ってきやがれ。

ケインズ「平和の経済的帰結」(pdf 1.2 Mb, 商業的に出そうなので公開停止)

そのときに述べた通り、題名のPeaceは、講和条約のことではあるんだけれど、文中でケインズが、ドイツに対する「戦争による被害と平和による被害」という具合に、戦争と平和を対比させて書いている部分がいくつかあって、それを考えると平和のほうがいいかな、と。

基本的に主張は簡単。

ドイツにすっげえ賠償金を払えって言うけどさ、無理じゃん。

  • まず、賠償金のうち、即座に50億ドル支払うことになってる → 即座の支払に使える現金とか資源とか、あんたら全部接収してかすめ取ったじゃん。払えないよ。
  • そして今後ドイツは経済活動を通じて儲けて払えといってる → あんたら炭鉱も奪い、船も奪い、工場も接収し、経済活動するために必要なものを全部分捕ったじゃん。それでどうやって経済活動すんのよ。
  • んでもって、無理矢理取りたてるために賠償委員会なんてものを作って、ドイツのあらゆるところに口だしできるようにして、あらゆるものをむしり取らせんだろ? ドイツがこつこつ再建しようとしたら、それ全部かっさらうんだよね? →ドイツ人だってそれじゃやる気出ないだろ。無理よ。
  • さらに、いまはグローバル化で世界経済がつながっている。ドイツが賠償のために黒字を出すということは輸入しなくなるということ。→ すると戦勝国のほうが市場が減って、かえって自分の経済が苦境に陥るよ

そもそも、こんな相手を身ぐるみ剥いでまともな生活すらできなくするようなことを要求するって、それ自体が人道にもとる野蛮行為だろ。それに、そういうことしないという約束でドイツは休戦に応じたんだろ。それを完全に反古にするって、ひどくね?

ホント、まさにドイツがギリシャに対してやってること(ここ数日、ギリシャ関連報道ないからどうなってるかわからんが、まあまともな方向に向かっているわけがない)。とにかく金返せ、緊縮財政して返せ、そうでなければ資産売り払え、資産売り払ってどうやってその後返すお金を捻出できるのかわからんけど、とにかく返せ――

あと、第2章のウィルソン大統領とクレマンソーの人物描写も見所。

 

なお、この後の自体の推移については、Wikipediaの記述をご参照あれ。

第一次世界大戦の賠償 - Wikipedia

あと、sinking fundsなるものの意味がやっとわかったわ。辞書を見ると減債基金なる訳語があるんだけど、結局それが何なのか今までは漠然としか理解できなかったんだが、借金返済のときの、元本返済相当部分のことね。「基金」となっているのは、住宅ローンとかみたいに元利均等払いで元本もだんだん返していく場合ではなく、balloon payment方式で最後にどーんと元本一括返済する場合、その元本分をどこかに積み立てておく、というわけね。「一般理論」でも何カ所か出てきたんだけど、これでやっとすっきりした。