安部『マンガですぐわかる! ピケティ』:マンガが役にたってない。オチは仕方ないか。

まずdisclosure. ぼくもいま、某社の「マンガでわかるピケティ」みたいなのの監修をさせられているので、以下はフェアな評にはなっていないかもしれない。その点には留意してほしい。

Having said that...

マンガでピケティを解説しようというのは、まあありがちな発想ではある。ただマンガにするなら、マンガなりの表現というものは欲しい。ところが本書のマンガというのは、あまりマンガにした甲斐がない。

お話は、新東京大学なるところで、生徒が二人しかいない教室に、あのトマ・ピケティ教授……のいとこ(まったく、安易さにもほどがあるのでは)の、シャルル・ピケティ教授なる人物がやってくる。で、ずっと同じ教室で、『21世紀の資本』のダイジェストをひたすらしゃべるだけ。マンガなりのストーリーがあるわけでもないので、ひたすらネームを読むしかない。あまりマンガにした意味がない〜〜。

そしてそのマンガも、シャルル・ピケティ教授の顔は3-4種類、胴体も3-4種類しかなくて、それをドローイングソフトで適当に組み合わせただけみたいな感じ。生徒役の二人も同様。背景もほんの数種類。

読者は、マンガということで手に取るんだろうけど、ちょっとこれはかなり期待を裏切られると思う。

そこで言われているピケティ『21世紀の資本』のダイジェストは、まあダイジェストだけなので特にまちがってはいない。池田信夫や竹信本のように、関係ない自分の主張がたくさん入っているようなこともない。その意味では、まあそんなに悪くない。が、最後のオチは、「これからの私たちがやるべきこと」とタイトルに入ってるだけあって、読者個人に何ができるか、という話なんだけど、えー、株式投資に不動産投資、果ては成長率の高い企業に入る、そして各種自己投資、長く働いて自分の生産性を上げろ、そして結局は格差の中で自分がどう生きたいかをよく考えろ。

うーん、まあそういうことをしてもいいけど、あんましピケティと関係はない。ピケティ本はあくまでマクロの話なので、あまり個人に直接の示唆が出るようなものではないので、こういうオチになるのは仕方ないかな。ぼくが監修してるやつでも、マンガのラストはこれに近いものになっているし。