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安田監修『図解ピケティ入門』:日本の格差についての詳しい記述は、各種解説書の中ではダントツ。グラフの解説も親切。

各種の解説本の中で、まず他よりも大きな判型なのが特長。これで何がよいかというと、グラフとかを『21世紀の資本』から持ってくるだけでなく、そこに注目点をいろいろ書き込むことで、そのグラフの何を見ればよいかまで親切に説明していること。多くの人は、実はあまりグラフをまともに読めないので、これは嬉しい配慮。

全体の構成は、以前の標準解説本と同じく、見開きでポイントを解説、というもの。ただし、ぼくのアンチョコスライドの質問をちょっと改訂しただけでなく、フローとストックの説明といった基本的なポイントの説明もあちこち入れて、本当に入門書的な配慮がされている。ピケティ本についても、使われているデータの範囲(地理的、歴史的)についてもまとめて、どういうデータをもとに何を言っているのか、というのを明示。「資本主義の本質を解明した! すげえんだぜ!」「格差是正を訴えたからえらいのよ!」といった教条的な解説にせず、冷静さを保っているのは立派だと思う。下の永浜本で、格差拡大の筆頭原因がグローバル化によるアウトソーシングと述べられていて、本書でも似たような論点はあるが、そのときにもOECDの報告書を引いてその主張の典拠を明示してあり、ピケティ本で言えること、言えないことは意識されているのがわかる。

そして本書でいいのが、最後の日本への示唆、というか日本の格差の解説。世代間格差、地域間格差、男女格差、正規/非正規格差といった、いろんな格差の現状についてデータを挙げて説明してくれている。多くの入門者は当然、日本はどうなってるんだと思うはずなので、これは非常によい点だし、類書で見られない優れた点だと思う。一方、類書によく出てくるアベノミクスの評価とかについては、おそらく意図的にまったく触れていない。p.82の小見出しには出てくるが、文中では一切触れていないのは、たぶん元々あったのを後から削ったんじゃないかな。それはそれでありだろう。ピケティの議論とアベノミクスの評価は、本来かなり別の話だと思うので、入門書でそれを無理に入れると話の通りは悪くなる面はあるし。

ということで、ぼくはこれまで出たピケティ解説書の中では非常によいと思うし、また日本の状態の説明ともつなげているので、その先への目配りもあっていいんじゃないかと思う。いまの時点では、ベスト3に入る入門書じゃないかな。