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永浜『図解ピケティの「21世紀の資本」』:変なところもあるが内容がきちんと咀嚼されており悪い本ではない。

ピケティ 書評

決して悪い本ではない。ただ、ピケティの解説書からは結構はずれる部分もある。一応、ピケティのストーリーも追っているんだけれど、一方で格差拡大の原因の筆頭に永浜が挙げているのは、グローバル化とそれに伴うアウトソーシング。ピケティは、それについて触れつつも筆頭の原因であるとはしていない。また、格差解消の手段としては株式投資のすすめ。そして日本の格差が小さい理由としては、日本は農耕民族で安定を狙うが欧米は狩猟採集民族で一攫千金を狙う気質があるから。うーん、こう書いていると、ちょっとトンデモそうな本に思えるかもしれないけれど、こういう変な部分もありつつ、一応はストーリーはおさえているし(といっても各種アンチョコ本はみんなおおむねこの点は合格だが)、アベノミクスに対するピケティをふまえた評価も、ぼくから見れば非常にしっかりしている。
 あと、グラフはサポートページのぼくの訳したものをほぼそのまま載せていて、新書サイズに縦二つおさめるから凡例やキャプションが小さいのなんの。あまり見やすくはない。
 こういう欠点はあるけれど、本の内容を咀嚼しているし、ピケティの極論についてはそのむね指摘している。アベノミクスに対する評価も、こないだ紹介した三冊だと、各種の雑誌に載ったピケティによるアベノミクス批判部分を抜粋して、否定的な評価を主に挙げていたけれど、この本は『21世紀の資本』の主張もふまえ、また実際の労働市場の動きなども見つつピケティの主張との整合性を押さえている。そんなこともあって、ぼくの評価は比較的よい部類。