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『コミックでわかるピケティ入門』:入門書の中で一、二を争う要領を得ない本。監修の藤田康範はまともに目を通したのか?

ピケティ 書評

コミックでわかるピケティ入門

コミックでわかるピケティ入門

前にも述べた通り、ぼくはいま、マンガによるピケティ入門書の監修をしているので、この評価は中立でない部分がある。その点はご留意を。

Having said that...

マンガも要領を得ないし(ギャグも寒いし)、間にはさまっている文による解説部分も、まちがってはいないようだけれど、ピケティの本についての説明として非常に部分的で、あれが結局どういう本なのかとか、何が評価されているのかについてたいへんわかりにくい。

マンガの部分だと、r>g が出てきて、昔の英仏は格差社会だけどどれがその後おさまり、でもその後スーパー経営者が出てきて格差が拡大したけど、でもスーパー経営者の高所得は運によるものなんだって。スーパー経営者って、英米特有の変わった現象ってピケティ本には書いてあったけど……

で、フランスで最低賃金に相当する額の相続を受ける人たちが12%を超えると、人口の50%が最低賃金の生活を送ることになるんだって。うーん、この理屈のつながりがまるでわからないよ。

次に、国同士の格差の話が出てきて、なんだかこれもピケティの話ではそんなにでかい部分じゃないよね。

で、資本主義の第一、第二法則の説明になるんだけど、式をそのまま挙げているだけで、結局r>g だから資本家が儲かる、という話だけ。そして資本税の話がちょっと出て、なんか主人公の元上司の女トレーダーが反資本主義の研究所の親分になりましたとさ、というのがマンガ。

その間の解説も、このマンガのトピックをちらちら説明し、マルクスの話をやたらに詳しくだし、日本についての含意やピケティの評価と批判のところもものすごく通りいっぺん。

参考文献に、ぼくのあんちょこを挙げてくれているのは、ありがたい。でも読んでピケティの全体像とか考え方は、ぼくは把握しづらいと思う。マンガのストーリーも、トレーダーが実はかつて金融商品を通じて儲けたのを後ろめたく思って格差是正に目覚める話なんだが、意味がよくわからない。アメリカはバブルを経験したことがないとか、機械とかが減価償却すると維持費が下がるとか、言ってることも意味不明の部分多数。監修者の藤田康範は、マジでこれ、一度でも目を通したの? 数あるピケティ入門書の中でも、かなりの劣等生。

付記:なお、田中秀臣評ではかなり評価が高い。ぼくはあまり賛成できないんだが、見ているポイントがちがうんだろうし万人の評価が一致するはずもないので、読む方は双方参考にしてください。