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ピケティ『格差と再分配』読んだ!本文読んだぜコノヤロー!

格差と再分配:20世紀フランスの資本

格差と再分配:20世紀フランスの資本

 この本、出ると知って、でもだれが読むんだろうと老婆心ながら心配になりました。ピケティ『21世紀の資本』便乗をねらった安易な本はたくさん出たけれど、この本は確かに便乗ではあっても(だってあの本が売れなければ、この本が翻訳出版されること自体、まずあり得なかったと思うから)、安易ではどう考えてもあり得ない。『21世紀の資本』より分厚くて字が詰まってるんだもの。そして17000円というこの値段! だれが買うんだ??!! 図書館である程度の需要が担保できればいいってことなのかなあ。

が、一応ピケティで儲けた身としては、買うのは義務だろうし読むのも義務だよなあ、と思って一応献本もされたけど、自分でも買いました。で、ヒイヒイ言いながら読みましたよ。もうほとんどページを機械的にめくり続ける世界だけど。で、ついについに、年内完読いたしました。本文だけだけど。この先付録も見るなんてありえなーい!あと、すべてのページの3分の1を占める注もほとんど見てない。でも完読だぜ、どうだ、コノヤロー!

その価値はあったかというと、まああった。ただし、本のほとんどはフランスの細かい統計的なデータの説明、それを長期的に見るにあたって、細かい制度的な改訂をどう補正したか、といった記述。

 そして結論は、21世紀の資本のフランスに関する部分で語られたものとだいたい同じ(というか、本書を元にして『21世紀の資本』が書かれたのであたりまえだけど)。フランスの購買力は、20世紀を通じて5倍くらいになった。で、格差は大きかったものが激減し、でもそれが70年代くらいからまた大きくなった。変化の原因は、労働所得はあまり変わらず、むしろ戦争とインフレによる資本破壊と、そしてその後の平和と低インフレと相続による資本増大に伴う、資本所得の変化である、ということ。そして、税金を通じた再分配が格差解消に大きく貢献したということ。だから経済発展すれば格差は自然に解消、というものではないこと。

最後には、格差と経済成長の関係について少しコメントがあるけれど、基本はまだはっきりしない。でも、格差が小さい時代のほうが大きな成長があったのは事実。また社会の安定性にはどうも関係しているようだ。21世紀の現在、格差は19世紀の水準には達していない。でも今後悪化する可能性はある。データも不足しているので、もっときちんと研究できる下地を作りましょう、というのがざっとしたポイント。

 これを読むと『21世紀の資本』が(あれでも)読者に配慮していろいろ読み物的なおもしろさを考えていたのがわかる。バルザックの小説をネタにした話やフォーブス長者番付を引き合いに出した分析は、こっちの本には出てこない。『21世紀の資本』は、読み物的な楽しさも狙ってそういうのを入れたんだろう。こちらは、もうずっと真面目。経済学者たちは(できればきちんと買って)読むべし。そうでない人は……まあ是非読めとすすめるのはためらわれるところ。でも、読んで損はしない。ホント、「すばらしい本だから精読すべし」と言ってあげたい気持ちはテンコ盛りなんだけれど、さすがに無理!でも本屋で手にとって、カールしながら最初と最後を読むのがいいんじゃないか。