ミアシャイマー『なぜリーダーはウソを?』:うーん、あたりまえすぎて……

うーん。なぜミアシャイマーなんか読む気になったかはよく覚えていないんだけど、読んで見てとてもつまらない分類学に堕しているようにしか思えなかった。なぜ対外的なウソをつくかといえば、意図を隠したりとか、はったりかませたりとか、時間稼ぎとか、有利な条件を得るためとか、自分たちのヘマを強弁で隠蔽したい場合とかだ、という。うん。そりゃそうだろうね。それで?

国民に対してのウソは、自分の望む方向に国民を煽動したいとか(よくも悪しくも――良い場合というのは、ナチスをつぶすためにウソをまじえて国民の世論を参戦すべしに持っていくような場合だそうな)、その裏返しだけれど国民に過剰な反応をしてほしくないとか(キューバ危機で、トルコからのミサイル撤去を国民に内緒にしておくとか)。あとはもちろんヘマのごまかし。

まあ、それもそうだろうねえ。それで?

で、特にアメリカは地理的に他から隔絶されているので、そのままだと比較的安全でモンロー主義に陥りかねないから、各種参戦とか軍事行動とかをどうしてみしたい場合には、アメリカ政府は「このままだと恐ろしいことに」と国民の恐怖をウソであおるしかないし、それは今後も続くよ、とのこと。でもウソばっかついてると、バレたらやばいしリーダー層に対する信頼も下がるから諸刃の剣というか、あまり多用しないほうがいいんだけど、困ったものですね、とのこと。うん、その通りでしょう。それで?

どれも、そもそもウソってのはそういうもんでしょう、という話に終始するので、読み終わって何か新しいことがわかったという感じはない。対外的なウソは、みんなが思ってるよりは少ないとか、ちょっと意外な話もあるけれど、あまり多くはない。その意味で、ちょっとがっかり。短いから、そんなに腹も立たないけれど。

訳者解説は、結構充実していて、日本での同様の事例をまとめてくれているのはありがたい感じ。鳩山の「トラスト・ミー」が、本書に挙げられているような、わかってやってるウソですらなく、自分自身ですらルーピーに思い込んでいただけという、国際、国内へのウソにおさまらない、自分自身をもあざむいた、まぬけなウソというべきか、無内容な「真実(本人的には)」というべきかもわからん変なしろものだ、という指摘は、ちょっと笑えてなかなかいいと思うし、本書の難点指摘(分類に終始しすぎ)というのもその通り。オレがオレがの自己顕示的な部分がもう少し少なければいいな、とは思うけれど(メールアドレス、こっぱずかしくないんですか?)、それを考慮してもよい解説だと思う。


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