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フエンテス の検索結果:

フエンテス『テラ・ノストラ』:英訳で読んだときと感想は同じ。力作だけど(それ故に)アナクロ。

… なんと、カルロス・フエンテス『テラ・ノストラ』の日本語訳が出てしまった! 出る出る詐欺にはひっかかるまいと思って英訳版を読んだ身としては、もう少し待てばよかったか、と悔しい思いもある一方で、それがもう数年前だしあのとき読んでおいてよかったという気もする。 さて、ご記憶の方はご記憶だろうけれど、ぼくの『テラ・ノストラ』に対する評価は、決して高いものではない。詳細に関しては以下を参照してほしい: cruel.hatenablog.com 簡単にまとめると、以下の通り: 力作なの…

ダイヤモンドのピケティ特集:周辺の反応に力点。いちばんの見所は奥谷禮子の支離滅裂な極悪ぶり。

…ティが最近カルロス・フエンテスを読んだと言っていたところで、メキシコ革命の影響ということは、『老いぼれグリンゴ』でも読んだのかなあ。いずれにせよ、『テラ・ノストラ』を完読したこのワタクシには死角はないのだった。うふふふふ。ピケティ本そのものの解説は、見開き二ページにおさえている。そして日本の状況と世界の状況についての簡単なまとめ。日本の話は、富裕層が節税に走っているという話だが、うーん、いま一つピントがずれているとは思う。一方世界各国でのピケティとか格差の状況をまとめた部分は…

フエンテス『我らが大地』:売れたぜ

カンボジアで3ドルで売れたぜ。重いの持って帰らずにすむ! 山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.

カルロス・フエンテス『我らが大地 (テラ・ノストラ)』: その5 読了!!

…へ。ここはカルロス・フエンテス十八番の、二人称で語られる。1999 年大晦日に、南米文学の主人公たちがパリに結集している(メンツは前回参照)。そしていかに南米が駄目になり、すべての希望が失われてしまったかを嘆きあう中、「お前」はうろつく。世界はもはや終末を迎え、疫病で人々は大量に死に絶え、経済格差と物質文明の中で貧困者や飢餓者が増大し、そして政府が市民を世界中で虐殺する中、「お前」はカーテンを閉じ、暗闇の中、同じ食べ物を食べつつ、己の世界と記録に閉ざされている。かれは過去の様…

カルロス・フエンテス『我らが大地』: その4 第3部「次の/別の世界」(の途中)

…た己の姿に動揺する。フエンテスにとって、旧世界と新世界との関係はそうした曇った/歪んだ/埋もれた鏡。でも、その無限の(もちろん神話的な)繰り返しが続いても、それはまったく同じことの繰り返しではない。その円環を変えられる。少しずつ変えられる。そしてそれを変えるのが、3という数字。1は自分だけ、2は対立と殺し合いにつながるだけ。3によりそれが融合され、対立がずらされて、多様性へとつながる。フェリペ、ルドヴィコ、セレスティーナがそうであったように。新世界で、生と死と記憶が同じ人物で…

カルロス・フエンテス『我らが大地』: その3 第2部「新世界」読了

………だんだんここで、フエンテスがやろうとしたことが明らかになってくる。フエンテスは『埋められた鏡』でやったみたいに、スペイン史とラテンアメリカ史/メキシコ史をごっちゃにしたようなものを構想はしている。ただし本書ではそれがあまりうまく融合できていない。フエンテスは、この両者をあわせたような一本の歴史みたいなものを考えているけれど、それをやるためには、どっかでスペイン人入植者たちによるメキシコの破壊と虐殺と収奪を扱わねばならない。さてフエンテス自身はもちろん白人として、破壊収奪虐…

カルロス・フエンテス『我らが大地』: その2 やっと第一部「旧世界」読了

…指摘していたけれど、フエンテスも本書でこの酢のエピソードをキリストへのいじめとして扱ってるのね。 誰も教えてくれない聖書の読み方作者: ケンスミス,山形浩生出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2001/01/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (32件) を見る 山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非…

カルロス・フエンテス『我らが大地』: その1 な、ながいし技巧に走りすぎ……

…見る一連のカルロス・フエンテス著作を読んできて、あとはこれと Hydra Head さえ読めばフエンテスはすべて(読むべきものは、ってことね。『老いぼれグリンゴ』とか読む気がしません)おしまい、ということでついにTerra Nostra こと『我らが大地』を読み始めました。ぼくはスペイン語はできないので、英訳だけれど。水声社だか現代企画室だかから邦訳が出るとか出ないとかいう話も聞いたけれど、もうその手は桑名の焼きハマグリでございます。ぼくにももう時間がないし。とは言ったもの、…

寺尾『魔術的リアリズム』:ラテンアメリカ文学の流れの手際よい紹介。

…ちなみにこの著者は、フエンテスの翻訳で彼のこけおどし無内容小説をちゃんと論難できる人なので、鑑識眼と率直さはぼくは信用している。それがうまく出ているのは、魔術的リアリズムの商業化を論じた後の章。イザベル・アジェンデ批判を非常に怜悧に行っている。単純な娯楽読み物だ、と。そして、それをちゃんと識別できずにいい加減な議論を行っている日本の文学研究者たちにもちくりと手厳しい。もちろん、娯楽読み物にはそれなりの意義があるので、それが悪いわけではないけれど、ガルシアマルケスと並べて論じら…

フエンテス『誕生日』:シャーリー・マクレーンに捧げられている時点で警戒するが、中身はバロウズ風ナボコフ。

…日作者: カルロス・フエンテス,八重樫克彦,八重樫由貴子出版社/メーカー: 作品社発売日: 2012/09/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (4件) を見るすでに見切ったフエンテス。この作品も、難解と言われて、難解なのに/だから傑作とも言われているとか。しかし実際にはかなり簡単な話で、ある家で起きた殺人だか一家心中だかのような事件があって、その死に至るまでの短い時間の中に、ありとあらゆる時空間のできごとが幾重にも折り重ねられていると…

カルロス・フエンテス『セルバンテスまたは読みの批判』:民主主義につなげる議論は強引すぎるが、文学論としてはあり得るし、小説家としての自負は伝わってくる。

…となる。でもここでもフエンテスは、政治的な話にこれを無理矢理つなげようとする。つまり、ドンキホーテは、単一の読みを離れた多様な読みを可能にするわけで、つまりは読みの民主化をあらわしているのである、ということですね。ここで話は前半のうだうだしいスペイン史のおさらいにつながる。さらにドンキホーテは、自分の愛するドゥルシネア姫が、実は鈍くさい村娘アルドンサであることを知っている。でも愛が、彼女を気高い姫として読ませてしまう。つまり、村娘と貴族の姫という階級の差を、愛が乗り越えさせる…

カルロス・フエンテス『埋められた鏡』:スペイン史とラ米史を強引にくっつけただけで、文化と政治経済の関係についての考察が不十分なために単なる文化ナショナリズムに堕している。

…歴史作者: カルロスフエンテス,Carlos Fuentes,古賀林幸出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1996/01メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (3件) を見る本書が書かれた1990年代初頭、ラテンアメリカは確かあんまりよい状況ではなかったんだっけ? で、フエンテスは本書で、それに対する文化ナショナリズムの高揚をはかる。 経済や政治に問題が山積していても、われわれにはなお祝福すべきものがある。(中略)われわれを貧困におとしめた危機はまた…

カルロス・フエンテス『メヒコの時間』:反米と、近代VS伝統をむずかしく言い換えつつ自己正当化を試みた本だが、すでに古びて現代的な意味はないと思う。

…くは最近、カルロス・フエンテス(そしてバルガス・ジョサ)についてそういう時期がきているようだ。フエンテスは、ずっと昔から積ん読だった『聖域』を読んで、これはもう見切ったという気がした。で、『空気澄み渡る地』でその認識がだいたい裏付けられて、それでもう他のも恐るるに足らず、と思い始めて次々に処理している。で、今日は『メヒコの時間』。これは駒場の生協で買って、四半世紀も本棚で寝ていたことになるのか、と思うと感慨深い。原著は『脱皮』の後の1971年に出ていて、翻訳は1975年とえら…

フエンテス『澄みわたる大地』:後のいやな部分が未確立で、しかも手法により攪乱されているので結果的に出来はとてもよく、おもしろい。が、万人に勧めようかどうしようか……

…大地作者: カルロスフエンテス,Carlos Fuentes,寺尾隆吉出版社/メーカー: 現代企画室発売日: 2012/03メディア: 単行本 クリック: 97回この商品を含むブログ (7件) を見るまず、『聖域』よりはずっといい小説だった。特に、その後のフエンテスを知らずにこれが出てきたら、逸材だと思っただろう。ただ、その後を知っていると、『聖域』の書評で書いたような欠点の萌芽もすでにかなりあらわに出ていて、各種の文学的な実験手法(というほどいまは目新しく思えないが)は、何…

チャトウィン&セロー『パタゴニアふたたび』:パタゴニアをテーマにした文芸ネタの楽しい博識くらべ

…トウィン,カルロス・フエンテス,安藤哲行,芹沢真理子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/06/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 84回この商品を含むブログ (18件) を見るただ一箇所、ブッチ・キャシディかなんかの末路を書いたところで「アメリカに帰国し、畳の上で死んだ」(p.45, 強調引用者) という訳になってるところがあって、ニヤリとしてしまったよ。毛唐に畳暮らしさせちゃいけねえや。おさまりがいいんで、つい使いたくなるんだけどね。かく言うぼく…

フエンテス『聖域』:神話構造を現代に重ねる習作。根底にあるナルシズムのためにいやな小説になっている。

…者: 木村栄一,C・フエンテス出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1978/04メディア: ? クリック: 40回この商品を含むブログ (1件) を見る最近出た「空気澄みわたる地」あとがきで「意味不明」と言われていたので、ずっと積ん読(冒頭の、ユリシーズは実はセイレーンの歌を聴いていなかった説まで読んだ)だったのを引っ張り出して読んでみた。確かに意味不明と言われても仕方ない。が、自慢だけど、ぼくは結構、この小説の「意味」はわかるのだ。が、『聖域』は意味がわかるとなおさらい…

シモン『農耕詩』の堀江敏幸書評は見事

…シモンの逡巡するような文章をそのまま表現したような書き方がとてもいい。まあ1400字ももらえているから、というのはあるんだが。一方で、なんかもっと思い切りよく一言で語ってしまうような書評を書ける余地もあるような気もするし……フエンテスがもうすぐだから、そっちでがんばってみようか。 山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.