2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

カルロス・フエンテス『セルバンテスまたは読みの批判』:民主主義につなげる議論は強引すぎるが、文学論としてはあり得るし、小説家としての自負は伝わってくる。

セルバンテスまたは読みの批判 (叢書 アンデスの風)作者: カルロスフェンテス,牛島信明出版社/メーカー: 水声社発売日: 1991/12メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (7件) を見る文学論かと思ったら、それだけではない。本書は『埋められた…

カルロス・フエンテス『埋められた鏡』:スペイン史とラ米史を強引にくっつけただけで、文化と政治経済の関係についての考察が不十分なために単なる文化ナショナリズムに堕している。

埋められた鏡―スペイン系アメリカの文化と歴史作者: カルロスフエンテス,Carlos Fuentes,古賀林幸出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1996/01メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (3件) を見る本書が書かれた1990年代初頭、ラテンアメリカ…

カルロス・フエンテス『メヒコの時間』:反米と、近代VS伝統をむずかしく言い換えつつ自己正当化を試みた本だが、すでに古びて現代的な意味はないと思う。

メヒコの時間―革命と新大陸 (1975年)作者: カルロス・フェンテス,西沢竜生出版社/メーカー: 新泉社発売日: 1975メディア: ? クリック: 13回この商品を含むブログを見る 人生において、ずっと先送りにしていたものを何の理由もなくふと思い立って清算してしま…

フエンテス『澄みわたる大地』:後のいやな部分が未確立で、しかも手法により攪乱されているので結果的に出来はとてもよく、おもしろい。が、万人に勧めようかどうしようか……

澄みわたる大地作者: カルロスフエンテス,Carlos Fuentes,寺尾隆吉出版社/メーカー: 現代企画室発売日: 2012/03メディア: 単行本 クリック: 97回この商品を含むブログ (7件) を見るまず、『聖域』よりはずっといい小説だった。特に、その後のフエンテスを知…

ヘッセ『なぜ数学は人を幸せな気持ちにさせるのか』:ありがちな数学パズル集もどきだが、納得できないところ、イミフなところが散見されていま一つ。

なぜ数学は人を幸せな気持ちにさせるのか作者: クリスティアン・ヘッセ出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン発売日: 2012/03/12メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 269回この商品を含むブログ (6件) を見る数学は楽しいよ、…

上垣外『ハイブリッド日本』:日本人は昔からあれこれ混血を進めてきました、という本。

ハイブリッド日本 文化・言語・DNAから探る日本人の複合起源 (東アジア叢書)作者: 上垣外憲一出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン発売日: 2011/08/26メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 206回この商品を含むブログ (1件) を見る前にこの本、朝日…

コスタ『文明はなぜ崩壊するのか』:そこまで話を落としてしまったら、なんでも言えちゃうではありませんか。

文明はなぜ崩壊するのか作者: レベッカコスタ,Rebecca Costa,藤井留美出版社/メーカー: 原書房発売日: 2012/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 408回この商品を含むブログ (3件) を見るうーん、うーん、うーん、なんか頭痛がすごく痛いよう。いろんな文…

ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』:不勉強な左派と図に乗った右派の両方をくさし、経済学の価値を認めるべきところでは認めろと主張するえらい本。

資本主義が嫌いな人のための経済学作者: ジョセフ・ヒース,栗原百代出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2012/02/09メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 834回この商品を含むブログ (15件) を見る2008年金融危機に始まる世界不況、さらには震災後に…

ジョン・キール『モスマンの黙示』:なんだよ、モスマンが出てきて予言するんじゃねーのかよ。

モスマンの黙示 (1984年) (超科学シリーズ〈2〉)作者: ジョン・A.キール,植松靖夫出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1984/03メディア: ? クリック: 38回この商品を含むブログを見るむかーしから本棚にあって、オレはいつかこれを読むのかねえ、と自分でも…

岩田健太郎『主体性は教えられるか』:主張はわかるが無内容。

主体性は教えられるか (筑摩選書)作者:岩田 健太郎発売日: 2012/03/01メディア: 単行本題名見て、おもしろそうだと思ったんだが、大はずれ。著者はお医者さんで、最近の連中は主体性がない、と嘆いている。自分で治療法を決められず、先例にならうしか能がな…

チャトウィン&セロー『パタゴニアふたたび』:パタゴニアをテーマにした文芸ネタの楽しい博識くらべ

パタゴニアふたたび作者: ブルースチャトウィン,ポールセルー,Bruce Chatwin,Paul Theroux,池田栄一出版社/メーカー: 白水社発売日: 1993/12メディア: 単行本 クリック: 64回この商品を含むブログ (3件) を見るこれ、翻訳あったんだ。知らなかった。原著はな…

保坂和志『魚は海のなんとか』:暴論めかしつつ深遠なことを書いたつもりで、愚鈍さと卑しさを露呈させた駄文集

魚は海の中で眠れるが鳥は空の中では眠れない作者: 保坂和志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/03/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 205回この商品を含むブログ (13件) を見るいやこの本って、自分は実は(勉強してないけど)頭がよくて、作家様だ…

Sulloway Freud: Biologist of the Mind: うーん、こんなのが問題になるほどフロイト業界ってアレなのか?!(訂正:アレ「だった」のか?!)

Freud, Biologist of the Mind: Beyond the Psychoanalytic Legend作者: Frank Sulloway出版社/メーカー: Harvard University Press発売日: 1992/01/01メディア: ペーパーバック クリック: 31回この商品を含むブログ (1件) を見る家の本棚に10年以上転がって…

フエンテス『聖域』:神話構造を現代に重ねる習作。根底にあるナルシズムのためにいやな小説になっている。

Executive Summary フエンテス『聖域』(国書刊行会) は、メキシコの大作家フエンテスの習作。神話的な物語を現代に重ねて、大女優の母親にエディプス的に焦がれる自分を書いたものだが、最終的にその焦がれる対象が自分になるで、すべてがナルシズムでしかな…

上田美和『石橋湛山論』:石橋研究業界内部に向けた本にとどまり、それ以上の広がりはない。

石橋湛山論―言論と行動作者: 上田美和出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2012/02メディア: 単行本 クリック: 25回この商品を含むブログを見る石橋湛山ってだれだか知らなくて飯田泰之に嘲笑されたところへ、朝日新聞の書評で本があったので読んでみること…

大田俊寛「オウム真理教の精神史」:オウムの「なぜ」を描き出した一冊で、学問としての社会的責務を宗教学者が真摯に考えた立派な本。

オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義作者: 大田俊寛出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2011/03メディア: 単行本購入: 61人 クリック: 1,271回この商品を含むブログ (25件) を見る先日、オウム関係者の死刑判決で、遺族は「なぜ」がわからず不…

井手「ニューロポリティクス」:MRIで政治的指向を分析というが、「政治」に到達していないんじゃないか。

ニューロポリティクス―脳神経科学の方法を用いた政治行動研究作者: 井手弘子出版社/メーカー: 木鐸社発売日: 2012/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 24回この商品を含むブログ (3件) を見るなぜか、この本アマゾンで扱ってなくて、ここに出てこないん…

増川宏一『日本遊戯史』:当時はこんな社会でこんな遊びが流行りました<--それで?

日本遊戯史―古代から現代までの遊びと社会作者: 増川宏一出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2012/02/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 66回この商品を含むブログ (5件) を見る日本の昔から、当時はこんな社会で、こんな遊びがはやってたようです、という…

長山靖生『戦後SF事件史』:なんだ、ぼくが一回も出てこない事件史なの?

戦後SF事件史---日本的想像力の70年 (河出ブックス)作者: 長山靖生出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/02/11メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 122回この商品を含むブログ (34件) を見るなんだ、戦後 SF 事件史で、愛国戦隊大…

高橋洋児『過剰論』:○経のなれの果ての爺さん警世グチ論集。

過剰論 経済学批判作者: 高橋 洋児出版社/メーカー: 言視舎発売日: 2012/01/30メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 125回この商品を含むブログを見る暗黒卿のご親戚ですか、と一瞬思ってしまう名前ながら、マル経で博士をとってしまってつぶしが効かなくな…