The Great Convergence: Asia, the West, and the Logic of One World
- 作者: Kishore Mahbubani
- 出版社/メーカー: PublicAffairs
- 発売日: 2013/02/05
- メディア: ハードカバー
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世界のいろんなあれこれがいまや収斂しつつあり、一つの世界文明が生まれつつあり、みんな共通の生活水準やらスタイルやら価値観となり、グローバルな倫理とか道徳が共有されるようになります、という本。すでに戦争も減り、貧困もなくなり、温暖化という共通の目的に向けて協力するようになり云々。
もちろんまだいろいろ課題はある。中国とアメリカとか、政府とNGOのちがいとか。イスラムとその他世界とか。イスラムは特に研究開発にお金つかわないし女を軽視するしまともな科学もないし、ろくなもんじゃない……けど、なんかどっかの王族とかが世界最高の科学研究機関を作ろうとしていることからもわかる通り、科学は実は重視されてるんだってさ。
で――いろんな断層があるんだけれど、その解決に向けてあれこれ努力することはできる。そのためには、国連にもっとお金をあげればいいんだって。世界のいろんな問題を挙げつつ、世界が一つの価値観に向けて云々という最終章の結論は、とにかく国連にお金を、という話に終始。
そんだけですか? いまの国連にそんな期待ができるかどうか、まともな検討はなし。国連そのものも結構機能不全で使えねーと思うんだが、そういう評価とか改革案とかはなし。いまの国連のダメさかげんは、とにかく各国が自分のナショナリズムにこりかたまってお金を国連に出さないからいけないそうな。
もちろん見る部分によっては収斂するところもあるしそうでないところもあるし、グローバルな文明ってどういうものを想定するのかによっても話はちがうし――均質な文化を考えるのか、いろいろごちゃごちゃしているのを一つの文明を考えるのか――枠組み次第で何でもいえる話で、そこらへんのきちんとした整理はできてない本。つまりは、読んでもそんなに参考にはならないんじゃないか。細かいところはまあおもしろい部分もないわけじゃないが、目新しさもないように思う。
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.