鬼頭宏『2100年、人口三分の一の日本』

2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)

2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書)

日本の人口減少とその影響概観としては結構よい本だと思う。冒頭で、2010年国勢調査で人口が減る……と思ったら実は減りませんでした、という話になっているのは、著者としては当てがはずれて残念でした、というところ。でもまあ今後の減少トレンドは確実で、それに伴う高齢化は当然避けられない。すると、それを支える側もつらいので、まず年寄りを働かせよう、女ももっと働かせよう、ということになる。地方部は歯抜けで手がつけられなくなるから、市町村合併後、もっとつぶすところはつぶして居住地をまとめろ、あとは国内で閉じるのは無理だから外国とのいろんな取引や交流を増やせ――基本はおっしゃる通り。

最後あたりの各種提案は、思いつきの域を出ないものも多いが(新しい文明像を、とか)、重要な論点は一通りカバーしていると思う。こないだ触れた、「田舎の家のたたみ方」のテーマとも関連した話で、ここらをうまくつなげられるといいんだろうけど。たぶん私権制限の議論をしなきゃいけないんだろうね。10年以上放置してある山林や家屋はもう没収とか。あと、20までは選挙権やらないのと同様に、70過ぎたら選挙権剥奪とか。が、むずかしい話。(それにこの本自体の中身とは無関係)。

このシリーズでこれまで見てきた本ほどはお手軽な本ではない。腰を据えて読んだほうがいい。暗澹たる気分にはなるだろうけれど付記。*1



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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.

*1:okemos氏が「以前はこの手のネタには、人口問題解決に貢献できなくてすいません、とか言ってたが、もう言うのも疲れてきた。」なるブクマツイート。でもぼくが子供の頃には「ソイレントグリーン」とか見て、「あ、子供とか作らないのが人口問題解決になるんだ、そうでないと人口爆発で人類滅びちゃうんだ」と思っていた。それが数十年でまったく逆の話になるとは。