ケレーニイ『迷宮と神話』:結論は一行だがたたみかける語り口は楽しい。

迷宮と神話―迷宮の研究--ある神話的観念の線反射としての迷宮

迷宮と神話―迷宮の研究--ある神話的観念の線反射としての迷宮

昔から本棚に居座っているので、とりあえず読む。前半は、迷宮というのが内臓であり(でも性器ではない)らせんであり、そしてその中心で死と生をつなぐものとなっており、生、死、再生がそこにはこめられているのだという話と、それが舞踏と持つ共通性の……分析というべきなのか、それとも一方的な「あれもある、これもある、こんなのもある、あれもそうだ」というたたみかけというべきなのか。ケレーニイがいま、神話研究なんかの分野でどういう評価になっているのか知らないけれど(ユングとつるんでいたというだけでかなりポイントを下げてしまうんだが)、昔読んだ『螺旋の神秘』が非常に似たような記述で、ふーんという感じ。

後半は、ヘルメスという神様の役割みたいな話。こちらも死と生をつなぐ存在で、でも死の中にある再生を生の中に持ち込む存在になっている、という主張。これもまた、あれやこれやとたたみかけるスタイルで、いろんなことがきちんと論証されているのか、それとも煙に巻かれただけなのかはよくわからないが、その煙に巻き方は非常に楽しく博識な人の独演会を聞いているような印象。

図版をもう少し文中にちりばめてくれるともう少しわかり易かったかな。決してこの分野に詳しいわけでもないしすごい関心があるわけでもない人間としては「ふーん」というのが関の山だが、読んでいる間は楽しゅうございました。



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