ラフ『バッド・モンキーズ』:映画にするとよさそうだが、二度は読めない

バッド・モンキーズ

バッド・モンキーズ

かつてほめたマット・ラフの小説で、そのほめた話が訳者あとがきでも言及されている。基本的に精読ではなく読み飛ばしように作られていて、テーマや世界も『下水道、ガス、電気――公共事業三部作』のような広がりはなく、志も小さくて、小さくまとめようという意図で書かれて、小さくまとまっている。悪と戦う秘密組織ねえ。それに対する反組織か。でも基本、この組織はザコに時間割きすぎじゃない? というのが 1.5 回目に読んだ印象。「24」もそうだけど、この手のサスペンスどんでん返しものって、一回目は驚きでいいけど、二回目以降は、なんかつじつまがあわなかったりバランスが悪かったりでいまいちなんだよね。

SFは、再読に堪えない傑作がたくさんあると書いていたのは、確か村上春樹周辺のだれかだったと思うけれど、本書は再読に堪えない佳作という感じかな。期待しないで読めばおもしろいと思う。でもここでほめて期待させると、期待負けすると思う。こういう本の紹介はむずかしいところ。もっと説明したいところだが、説明すると読むまでもなくなっちゃうし。

このマット・ラフとかがはやった頃、クリストファー・ムーアの本とか、めちゃくちゃなプロットと奇想天外な想定や小道具をてんこ盛りにして、中二病っぽい話をおふざけまじりに軽く描くような小説がはやったんだよね。

Island of the Sequined Love Nun

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いわば欧米版ラノベってところか。もう少しはやるかと思ったんだけど、すたれ気味みたいで少し残念……と書いたところでびっくり。クリストファー・ムーアって訳されてるのか! 原著は流し読みだけだったからこんど読もう。

アルアル島の大事件 (創元推理文庫)

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