Ben-Joseph Rethinking a Lot:駐車場の研究。悪くはないんだが……

ReThinking a Lot: The Design and Culture of Parking

ReThinking a Lot: The Design and Culture of Parking

なんと駐車場の研究書。駐車場は、凡庸で、単純で、醜いものとさえ思われているけれど、特にアメリカの生活では不可欠。さらにその醜くダメなはずの駐車場は、しばしば非公式のコミュニティ空間として活用される。駐車場を罵倒して不毛な車文明を嘆いて見せるのは知識人の常道だけれど、実はそんなステレオタイプでは話はすまないのだ。この論点を、駐車場の歴史や現在の各種の様態分析を通じて教えてくれる。

そして後半は、駐車場をうまくデザインに取り込み、公共アートや植栽と組み合わせてみたり、他の機能を持たせたりといった事例の紹介になる……んだけれど、うーん、ここで紹介されているものが、工夫はされているしいい感じではあるんだけれど、なにか画期的なものだという感じはしないのだ。駐車場を毛嫌いするのではなく、それが公共的な空地として持つ可能性をもっともっと活かすべきだという著者の主張には大いに賛同するんだけどね。

現実は日本の至る所にあるコインパーキングとか、そんなもののほうに動くんじゃないかとは思うんだ。そういう市場的な対応は本書ではあまり検討されていないのが残念。意外なものに着目しておもしろいし、いいことを言っているとは思うんだけれど、もう二、三歩驚きの要因がほしいんだ。

なお、これは空地利用としての検討からもわかるとおり、空き地型の駐車場のお話。駐車ビルのタイポロジーやデザインに関しては、以下の本がまとまっていそう。ただ、日本のパーキングタワー型のやつまで扱っているかはわからないけど……

The Architecture of Parking

The Architecture of Parking



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