できる人はダラダラ上手: アイデアを生む脳のオートパイロット機能
- 作者: アンドリュー・スマート,Andrew Smart,月沢李歌子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2014/05/15
- メディア: 単行本
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現代人はとにかく、忙しくしすぎている。時間マネジメントとかがんばっちゃって、少しでも無駄な時間なしに活動しようとしてる。でもそれはかえって逆効果で、もっとダラダラしたほうがいいよ、という本。
はい、その主張には大賛成。おっしゃる通り。でも、本にするにはそこで、なぜダラダラしたほうがいいんですか、というのを書く必要があるよね。さらに、ダラダラしていても大丈夫なんだよ、害はないんだよ、というのも言いたいところ。
著者がまず言うのは、ダラダラして無為に何もしないときのほうがいい発想が生まれる、というもの。いろんなえらい人が、何もしていないときに「ピーン!」とひらめいた話がいろいろ出てくる。なるほど。そういうことはあるかもしれない。これはつまり、ダラダラする時間があったほうが生産性がかえってあがる、ということだ。
でも、あがってる事例を見ると、たぶんそのひらめいた人はそのあと、かなりシャコシャコがんばって仕事をしてそのアイデアをまとめたと思うんだよねー。それと、がんばっていろいろやった中での思いつきというのもいっぱいあると思う。どっちが多いんだろうねえ。
細切れの時間を有効に使おうとすると、かえってその切り替えのために効率が下がる、と著者は言う。これはその通り。メールとか電話とかで考えが中断されると、生産性は40パーセントも下がる、という研究があるそうな。だから、細切れ時間の有効活用なんてこと自体がダメ、そんなことを考えるタイムマネジメントなんて要らない、とのこと。これはその通りだと思う。
次に、ダラダラして平気だ、というののために出してくるのが、脳のオートパイロット機能。脳は勝手にいろいろやってくれるので、意識的にがんばらなくてもいい、というもの。そしてその裏付けとして出てくるのは、自己組織化とか創発性とか。ここらへんの(かなり付け焼き刃的な)記述が物凄く長い。要するに、脳は自己組織的にいろいろ仕事をしてくれるから、意識的にがんばらず寝ているだけでいろいろ片付く、というもの。それはありがたい。そういう部分もある。しばらく頭の中で寝かしておくと考えが整理される、というのはよくあること。
でもその一方で、ダラダラしていても出張精算は片付かない、という厳然たる事実もあるんだよねー。頭の中では片付いても、何か形にするのはオートパイロットでは無理。無心の境地で小人さんがいろいろやってくれるのは……著者の言っていることとはちがうと思う。
そして最後のほうでは、シックスシグマとか生産性向上のがんばりとかは、脳の平常オートパイロット状態を乱すアッパーなくすりづけみたいな状態で不健全である、という。だから生産性向上とか経済成長とか求めず、あるがままの脳にまかせろ……
でも、最初のほうであなたは、ダラダラするのはいいアイデア浮かぶ生産性向上の手法だ、みたいなこと言ってましたよね。それが最後ではそういうんじゃないという話になってますよね。なんかこう、主張がぶれてませんか?
いや、ぼく怠けるの大好きだし、多少ダラダラするほうがいいとは思ってる。なんか意味のなさそうなことをやっているうちに、変なものにぶちあたるのがぼくの強みだし。でも、こういう本って、なんかダラダラするのを頑張ってやってしまう人を生むような、そういう変な自己矛盾というか、シンガポール人みたいに真面目にガリ勉して遊びをやってしまうみたいな、そんな感じがあるのよねー。決してきらいな本ではない。ただそこらへん、ちょっとわだかまりが残るんだ。
- 作者: ポールラファルグ,Paul Lafargue,田淵晋也
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 文庫
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あ、ラッセルのこの本知らなかった。こっちもちょっと見てみよう。
- 作者: バートランドラッセル,Bertrand A.W. Russell,堀秀彦,柿村峻
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.