ケインズ『平和条約改訂案』、結局全訳しちゃった。

しばらく前に、ケインズ『条約の改訂』が仕掛かりだけど放り出す、という話を書いた。

cruel.hatenablog.com

でもなんか、気の迷いで結局全部訳しちまったよ、あっはっは。暇だなあ、オレって。まあ、ご笑納くださいませ。

ケインズ『平和条約改定案: 続「平和の経済的帰結」』 (1922)

内容的には『平和の経済的帰結』から3年たって、実際の賠償の進展、それをめぐる様々な動きをまとめつつ、多少は現実的になった部分と、もっとひどくなった部分を整理して示したものとなる。本人が言うとおり「続編」だ。だから当然、こっちと併せてお読みなさい……まあ本当に読むならね。

ケインズ「平和の経済的帰結」(pdf 1.2 Mb) https://genpaku.org/keynes/peace/keynespeacej.pdf

とはいえ『平和の経済的帰結』の主張がまったく見当違いとか、そこでの見通しとはまったくちがう方向性が出てきた、といったことはない。ほとんどが、おおむね『平和の経済的帰結』での分析通りに進んでいるということで、新規性はない。ただ各国政治の権謀術策や詭弁がすごい、というのが見所。

でも21世紀の現時点では、ロイド=ジョージ氏がどこの会議でクレマンソーとどんな密約をしようが、まあ100年前のどうでもいい話で、歴史的な意義しかない本ではある。たぶん、実際にこれを読む人は……いないよねえ。

で、改訂案というのはとにかくドイツからの賠償金はどんどん減免しろ、というもの。まあ、それが実際にどうなったかは、トゥーズのナチス本を読んで下さい。

ナチス 破壊の経済 上

ナチス 破壊の経済 上

ぼくも、細かく見直して訳を手直しする気力はさすがにない。何か気がついたらご指摘くださいな。

 

ちなみに、ここでケインズは30年にわたって賠償総額の6%を取る、という話を主張しているけれど、それに対する批判もある模様。

himaginary.hatenablog.com

うーん、ケインズの書いたものを見ると、別にケインズがここで責められる理由はないと思うなあ。「彼らは連合国の国民の利潤や収益から30から40年に亘って年貢を徴収するなどということは思いつかなかった」というのは、明らかにウソだと思う。具体的な手法はこの時点では未定だったけれど、でももっと壮絶な賠償条件を課そうとしていたからこそ、ケインズは怒っているわけでしょ。30年割賦にしなかったら、ロイド=ジョージたちはどうやって賠償金をむしりとるつもりだったわけ? それは30年割賦よりマシなやり方だったと言えるの? ウソだと思うなあ。

その条件ですらナチスの台頭につながったのを予見できなかったというのは、あまりに岡目八目すぎる批判だとは思う。が。閑話休題

 

さて、次に何をしようか。もっと読む人の少なそうな、「インドの通貨と金融」でもやろうか、それとももう少しキャッチーな「説得論集」や「人物論集」にしようかな。実はこの本をやっちまうことに決めたのは、「説得論集」のため。本書が終わったことで、「説得論集」はかなり翻訳ができあがっていることになるので (というのもあれは相当部分が、本書や『平和の経済的帰結』や『お金の改革論』の抜粋なんだよね) そんなに手間をかけずに全部できてしまうんだ。期待している人もいないだろうが、乞うご期待。