フォーゲル他『十字架の時』全部終わったー

やりかけていたこれ、本編は全部終わったー。

cruel.hatenablog.com

本体はこれです。

https://genpaku.org/TimeontheCross/timeonthecross_j.pdf

なんだかこないだから、Word--> pdfで目次のリンクが全部ずれる。またしおりもちゃんと作ってくれなくなった。だからpdfにちょっと不具合はあるけど、大目に見てくださいな。

補遺に関しては、もともとは全部やるつもりだったが、手法解説の部分はとてもテクニカルになっちまうんだよなー。それをやるのはあまりに手間なので、研究の心得を書いた補遺Aだけは、訳して本文に加えた。その他、手法や統計処理その他に関するテクニカルな補遺は、原文を見てくださいな。ここにある。

https://genpaku.org/TimeontheCross/TIME%20ON%20THE%20CROSSsupplement.pdf

全体の主張は、アメリカ南部の奴隷制は見事な生産システムとなっていた、というもの。奴隷がひたすら鎖につながれ、鞭打たれ、虐待されまくったというイメージは正しくないし、また奴隷制はすべて悪いという思いこみで、奴隷制は効率悪い、生産性が低い、放っておいても絶滅寸前だった、などと論じるのは正しくない、と述べる。むしろ奴隷制はきわめて効率が高く、現在の工場のような、見事な分業と労働管理システムと、MBAでも通用しそうな、見事なインセンティブ管理を行っていた。

ただし、それは別に奴隷制がすばらしいということではない。奴隷制は映画ほどバカみたいに暴力は使わなかったけれど、でもその生産性の高さは、暴力なしにはあり得なかった、というのも本書は明らかにする。

そして、南北戦争時代もその後も、奴隷解放論者たちですら実はものすごい人種差別の権化だった。黒人は無能だから鞭で叩かないと働かないのだ、というのが彼らの基本的な立場。

そして奴隷解放後は、実は黒人の社会経済的地位はかえって下がった。でも奴隷制悪い、奴隷解放はいい、というイデオロギーに凝り固まっていた関係者たちは、奴隷解放を礼賛するあまり、そうした黒人の実際の状況や生活水準に目を向けなかった……

その他、おもしろい話だらけなので、是非ご一読を。