チャンドラー『さらば愛しき女』とかオールディス『ヘリコニアの冬』とかやっていて、まあシャカシャカ終わりそうではある。それができるとなると、他にもいろいろあるよな……と思ってふと本棚からこっちを見ているのに気がついたのが、スタニスワフ・レム・コレクションだった。

スタニスワフ・レムは、評論系もいっぱい書いていて、この本にもちょっとだけ収録されている。それでスタニスワフ・レム・コレクションの第2期が出るときいて、そっちのほう期待していたんだよね。だってあまり残ったネタがないし。
ところがラインナップ見ると、そっち方面はまったくやらないのね。まあレムの評論ってすごく面倒くさいし、長ければ長いほど風呂敷がどんどん広がって、レムの本家サイトでも「だんだん広がってレムの万物理論と化す」と言われてしまっているから。それを読む価値があるかというと……どうなのかねえ。
その中身についても、かなり偏狭でドグマチックであることは、以前ぼくが指摘した。ぼく以外の人は読んでいないらしくて何も言っていないのがとてもアレではある。
でも、そこそこおもしろいんだ。そして彼は一応、レトリックの人ではなくこむずかしくても理屈の人なので、文章も非常にAI翻訳にのりやすいのだ。
というわけで、ちょっと始めて見ましたよ。英語からの重訳になるが。
この本は、技術の進化論みたいな話しで、ブライアン・アーサー『テクノロジーとイノベーション』みたいな味わいも出てくるんだが、その後いきなり話がわけのわからないほうに進んで、人類からサイバネティック機械への文明の肩代わりみたいなヘンテコな代物になる。本家サイトでは、これがレムの考えの母艦みたいな最も大きな基本とのこと。いろんな小説のネタにもなる。まだ最初の15%くらいだけれど、かなりうまくAI翻訳にのる。東西冷戦が強く影響してしまうのは、まあ時代の制約ってことで。
ちなみにAI翻訳くんは当然ながら、英語だけでなくポーランド語もこなせるはずだし、あとドイツ語もできる。レム『SFと未来学』は、むかしズーアカンプから出た独訳を少し日本語にして、沼野ジューギに見せたら、あれは訳さなきゃいけないと思っているが直接ポーランド語からやる余裕がない、ドイツ語からでも訳があれば、それを元に仕上げることは可能だろうと言っていたので、『技術大全』終わったらそっちに手を出して (ポーランド語から訳しちゃってもいいが、AIの出した結果が正しいかチェックできない。ドイツ語ならできる)、というのもやりましょうかね。30年前に買ったドイツ語の本がやっと日の目を見る、かもしれないぜ……と言ってる間に冒頭部分ちょっとやっちゃいましたよ。沼野充義がチェックするはずはないと思うけど。
しかし先日バルセロナにでかけてサグラダ・ファミリアが絶対完成しないと言われていたのに、CADと3Dプリンタの発達でまがりなりにもあと五年で完成とか言われるようになったのと同様に、AIのおかげで自分でも完成どころかこれ以上手をつけることもないと思っていたものがどんどんできてしまうのは、我ながら感慨深いなあ。
ちなみに当然、すでに商業翻訳進行中で、レム・コレクション第3期に出る予定だったというなら、すぐひっこめるのでご一報を。