
はじめに
はい続き。スタニスワフ・レム『SFと未来学』第12章「棚卸し」。前章の最後で「次回は『総括』」と書いたけど、AIの翻訳がちょっとちがっていた。「その他」をまとめて扱いましょう……と言いつつ、やるのは冷凍睡眠とか、身体交換にともなうセックスの話と、あと宇宙旅行での異星生命体の話。
もう完全にワンパターンで、「SFはバカ、何も考えてない」と一言書いたあとで、「このテーマは真面目にやればこういう可能性がある」とそのテーマに関する自分のご高説をずらずら書くだけ。
例によって「こういうアイデアがあり得る」というのは、確かにそうかもしれない。でも別にそれを使わないからって責められるいわれはない、とは思う。その設定が、その作者のやりたかった問題提起にあっているか、というほうが大事でしょうに。
さらにここに描かれたテーマ、身体交換にともなうセックスの話って、前のエロスとセックスの章にまとめたほうがよくない? 異星生命体の話は、宇宙SFの話とまとめてできるでしょ? するとこの章ってすごくおさまり悪くないですか?
あらすじ
取り残したものがいろいろあるので、片づけておこう。ただ個別にやるといろいろありすぎるから、ここでは生物学に関連したテーマについて大くくりに扱うことにする。そもそもSFは話を動かす動機がご都合主義で、マッドサイエンティストとか。そして放射線でどんな突然変異でも起こることにされて、安易きわまりないね。
出てくるバイオテクノロジーとしては、冷凍睡眠、不老長寿、身体改造がある。でもみんな、冷凍睡眠なんかが実現したら社会にどんな影響が及ぶか全然考えてない。不老長寿とかもみんなきちんと考えていない。
身体改造や好きな姿になれる能力というのはよく出てくる。でも、ファッションとか化粧を通じて別の姿になりたいというのはあるよな。そしてそれはセックスとその文化的規範の話と強く結びついてくるものだ。身体が保つ美しさの規範というのも様々な意味を持ち、セックスの過剰でセックスが持つ意味が失われたりもしている。でも身体を自由に変えられると、その規範も大きく変わるはず。いまも整形を通じた新しい身体の形が登場しているけれど。またセックス以外にも使途にあわせた身体交換とかもあるし、精神的な影響もあるだろう。
あとSFでは異世界の異星物がたくさん出てくるけれど、みんなワンパターンで想像力がない。実際の生物のほうがずっと創意工夫に富んでいる。実際の進化のプロセスでどこが変わる可能性があったを考えれば他にもアイデアは出てくるし、そこから人間が別の身体になった可能性も出てくる。でも身体は、代謝系とか多くの部分が意識と切り離されて動いているから成り立っている。身体の形を自由に変えるには、各種の機能をすべて意識的に制御しなきゃいけないから無理筋ではある。あ、オレって泰平ヨンでそういうアイデアを小説にしたぜ (どんなもんだい)
感想
いや、本当におさまりの悪い章。冒頭にも書いたけれど、エロスとセックスの章や、宇宙SFの章とまとめたら少しは見通しがよくなったんじゃないの? けなしている作品まで同じなんだから (ブリッシュ『悪魔の星』とナオミ・ミッチスンのスペースウーマン小説)。だれか本当に、構成とか編集とかしてあげればよかったのに。
そして「科学的な裏付けのある発想だってあり得るぞ! SF作家どもはそんなこともわからんバカ! もうちょっと深く考えろ! ところでおれはそういうアイデアを、すでにちょっと小説にしてみせたぜ」というのをひたすら繰り返すだけなんだけれど、この章では尻切れトンボぶりがさらにひどいうえ、冷凍睡眠とか不老不死とか、もっといろいろ作品の幅もあると思うし、こんな投げやりの書き殴りですませるくらいなら、採りあげないほうがよかったのでは?
次はブラッドベリ&ニュー・ウェーブです。でもブラッドベリが「美文だが無内容」と書かれるのはわかってるんだよなー。まあ仕方ない。