レムの未訳書で、ポーランドの電子書籍で安く出ていたのでまとめて買った。レムがおセックスについて書くとなると、まあエロいわけはないんだけど、一応まあ見るだけみておくか、という感じ。
まず最初の2章分、SEX WARSはどこに出たのかよくわからない。1992年に書かれている。あと『高い城・文学エッセイ』の巻末のリストを見ると、1996年に本として出たらしい。がその中身は実にくだらない。「いまや人口爆発が切実な問題になっているので、人口抑制をしなくてはならない。地球温暖化も資源枯渇もすべては人口問題の副産物にすぎない! だから21世紀はスター・ウォーズならぬ、セックス・ウォーズが起こるだろう!」
……自分で言っていてダサいと思わないのか、という以上に、何の何に対する戦争なのかよくわからん。これは反出生主義だというんだが、哲学的意味での反出生主義じゃなくて、むしろ反出産主義ですな。そしてそこで提案されているのは、みんなが期待しているような、DMM同人のセックス絶倫競争なんかではなくて、むしろセックスさせない競争。つまり:
- 女性の生殖可能年齢を短縮させるホルモン療法
- 教会による「埋めよ増やせよ」倫理の改変
- でも具体的にどうすればいいかはわからないが、この問題を注視しているオレえらい
だそうです。
で、この本はそれにもっといっぱいくっつけて、2006年に出ている。追加された記事は、ポーランドの文芸カルチャー月刊誌 Odraに1993-2003年にわたり連載されたレムのコラム「森林的考察」(Rozważań sylwicznych) のコレクション。まあ大盤振る舞いで85本ほどもつけてある。
たくさんあるのは結構なんだが……内容的にきわめて重複が多い。月刊誌だから、テーマが少し繰り返しになっても問題はないんだが、それぞれの回にもまとまりはぜんぜんなく、思いつきをそのまま垂れ流していて、何かビチっとした考察や分析が行われているわけではない。ちょっとまとまりなさすぎ。
そしてひたすら繰り返されるテーマは
- 人口爆発はヤバい。そのためにセックスを抑制する政策/薬がいる
- そのために優生学をマジでやったほうがいい
- バイオ技術の発達はすごい
- 情報洪水がひどくなっていて、商業主義のクズばかりが流れてくる
- VRが普及してきた、オレはそれを『技術大全』で予想したが無視された
- それはポーランドが辺境だからだ。ポーランドは哀れだよ……
- カーンやトフラーは英語だから未来学で大儲けしたが、全部予想はずれていいツラの皮だ。
- 未来予測なんかはずれるに決まってるんだよ。でもオレ当てたりしてるけど。
ここに加えて
- ポーランド文壇のゴシップ
- 最近のポーランドを中心とした本や雑誌の記事、およびテレビや映画の話
- 時事政治についての感想文
- 特にテロ問題についての懸念
- 過去のポーランドの思い出
昨日見たいに概要つけようかと思ったけれど、100本近いやつに見出しとあらすじつけるの面倒すぎだし、内容的にそんなことする価値もない。不確定性原理が、測定を厳密にやったら否定されたとか、怪しいこともあれこれ書いているし、大丈夫かなあ。
ポーランド読者だけに向けて書かれていることもあるし、それですらかなりしょぼく、読む価値はほぼない。ただ、ときどき過去のポーランドの思い出、自分の創作のやり方がちょろっと出てきて、まあそういうのを拾ってみてもいいかも、とは思うが、そういうのは研究者とかがやればいいこと。
AI全訳は、一応ここにあるので、見たい人は見てもいいけど。細かくはみてません。