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エゴサーチ: 富岡日記とSF業界の後編

(承前)で、2014年5月に『富岡日記』関連の話題以外で、もう一つ山形が話題にのぼっている話が……大森望が日本 SF 作家協会に入れなかった話。その原因は、巽孝之と小谷真理が大森望にずっと私怨を抱いているから、ということなんだが、それをさらに悪化させたのは、山形が聞きかじってきて裁判のタネにもなった小谷揶揄の替え歌にあって、何やらその替え歌に大森が関与していたという邪推があるとかないとか。 『オルタカルチャー日本版』の「真相」 まずはっきり言えることは、その替え歌をぼくに教え…

エゴサーチ:富岡日記とSF

富岡日記 (《大人の本棚》)作者:和田 英みすず書房Amazonツイッターで、2014年4月末にエゴサーチをしてみると、何やら突然二種類のネタでもりあがっていて、騒動好きのワタクシといたしましては嬉しい限り。一つ目のネタは、富岡製糸工場が世界遺産入りするとかで、ぼくが勝手にスキャンしてアップロードした富岡日記が俄然注目を集めていること。すばらしいことです。が、言っておくとぼくは富岡製糸工場の世界遺産入りをまったく評価していない。というのも…… なぜぼくが『富岡日記』をアップロ…

消費税引き上げ前夜に:2014年の経済ジャーナリズム (月刊Journalism 没原稿)

Journalism 2014年1月号出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2014/01/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るもうすぐ消費税率引き上げなので、その前に昨年末に書いた原稿をアップしておく。朝日新聞の雑誌「Journalism」が、2014 年の経済ジャーナリズムについてということで、要求通りのものを書いたのですよ。ところが、ゲラまで直したあとで、いきなり編集長判断でボツ、とのこと。その後、実際の雑誌が出たのを見たところ……とにかく全…

ドラゴン・ヒストリーときたか!

ナチスのキッチン作者: 藤原辰史出版社/メーカー: 水声社発売日: 2012/06メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (21件) を見る昨日の書評のあとで少し見ていたら、変なものに遭遇。ナチスのキッチンが、なぜかアメリカアマゾンにも出ているんだけれど、その著者名が Fujiwara Dragon History ドラゴン・ヒストリーですか! すげえ。確かに、直訳すればこうなるけど……これ、どうなっているんだかよくわからない。当然自分のエゴサーチもしてみた…

藤原『ナチスのキッチン』:せっかくの調査が強引なイデオロギーはめこみで台無し。

…いうのは重要な知見だ*1。でもそこから、凡庸な官僚はすべてナチズムの萌芽であり、すべて虐殺につながる、と論じたらそれは倒錯だ。それなのに、この手の倒錯はしばしば見かける。おかげで往々にして、ナチスを持ち出してあれやこれや言う議論は、無内容でくだらない連想ゲームと悪質な印象操作に堕す。ナチス関連のいろんな話に、野次馬的にでも興味を持っているぼくのような人物は、これでさんざん痛い目にあっている。というわけで本書『ナチスのキッチン』を手に取ったのは、そうした期待と警戒心の入り交じっ…

「宇宙SFの現在」の感想

Space, the Final Frontier?作者: Giancarlo Genta,Michael Rycroft,Franco Malerba,Michael Foale出版社/メーカー: Cambridge University Press発売日: 2003/02/13メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る稲葉振一郎がシノドスに「『宇宙SF』の現在」(2014.03.22) なる一文を寄稿している。論点としては、最近のSFでは宇宙進出がバー…

Wasik Keynes's Way to Wealth : ケインズの具体的投資法はおもしろいが画期的ではない

Keynes's Way to Wealth: Timeless Investment Lessons from The Great Economist (English Edition)作者:Wasik, John F.発売日: 2013/11/29メディア: Kindle版 2013/11/19 山形浩生 Executive Summary 世界金融危機の後で再びいちやく注目を浴びているジョン・メイナード・ケインズは、大経済学者としての顔とともに、投資家、投機家としての顔…

ケインズ「お金の改革論」

エンゲルスからちょっと寄り道して、若き日のケインズ。ケインズがマネタリストでもっと明解な文章を書いた頃の代物の全訳。まだ「ケインズ経済学」にはなっていない。その一方で、ブレトン=ウッズ体制につながるアイデアの萌芽は出ている。貨幣数量説全面支持の本だと言われるけれど、三章読むと必ずしもそうではないね。基本は貨幣数量説だけど、でもきちんとその通りにいかない場合もたくさんあるから注意しようね、というのが延々書いてあって、貨幣数量説をボコボコに否定した『一般理論』と、実は立場的にそん…

パワーズ『幸福の遺伝子』:同じ話の繰り返し。

幸福の遺伝子作者: リチャードパワーズ,Richard Powers,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見るパワーズ、『ガラテイア2.2』でもうかなり見放していたんだが、一冊で何がわかろうかいとも思うし、また一部のコメントによれば『ガラテイア2.2』は駄作という話もあったのでもう一冊読んでみました。がっかり。ガラテイアとまったく同じ話で、人工知能か幸福の遺伝子かという小道具を変えただけなのね。アズペ…

エンゲルス「イギリスの労働階級」

ちょっと気が向いて、若き日のエンゲルスのルポを訳してみた。訳出したところは前置きで、おもしろいのはこの次の「大都市」の章。でもここまでの章も、エンゲルスが産業革命にすっごい興奮しているのがよくわかっておもしろいところ。エンゲルス自身が若書きだと言っているので、若々しくしてみた。 イギリスにおける労働階級の状態 (pdf 671kb) 次の章はおもしろいのでこのまま進める予定で、その後は、まあ気が向けば、ですな。エンゲルスは理論家としてはアレながらイデオローグとして優秀だったら…

根本『物語 ビルマの歴史』:通り一遍で重要な点に踏み込めていないのでは?

物語 ビルマの歴史 - 王朝時代から現代まで (中公新書)作者: 根本敬出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/01/24メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見るはーいみなさんこんにちは。これを書いているのはミャンマー行きの飛行機の中。直行便で乗り換えなしで行けるのは本当にありがたいね。 で、この飛行機の中で読んでいたのが根本敬『物語 ビルマの歴史』(中公新書)だ。去年、ミャンマーには何回か出かけたけれど、その歴史や現状についてまとめて読んだことはな…

クラウス『宇宙が始まる前は何があったのか?』:ぜんぜん関係ないが、3匹のクマって……

宇宙が始まる前には何があったのか?作者: ローレンスクラウス,Lawrence M. Krauss,青木薫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/11/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見るこの表記の本を読んでいて、なかなかおもしろいんだが、ちょっとひっかかったところ。こんなくだりがあるのだ。 そして、平坦な宇宙のシミュレーション画像は、童話『3匹のくま』に出てくる赤ちゃん熊のベッドのように、大きくもなく小さくもなく「ちょうど良い」サイズである…

カルロス・フエンテス『我らが大地 (テラ・ノストラ)』: その5 読了!!

Terra Nostra (English Edition)作者:Fuentes, CarlosFarrar, Straus and GirouxAmazon やったー、昨日から100ページほど残していた部分完読! 読み終わったぜー! 最後の部分は、エル・セニョールの死……なんだが、そこになぜか、現代に生まれ変わったインディオの老婆としての旧女王(狂女)と、だれだかわからない人物との現代メキシコシティにおけるからみが入る。そのだれかが、南米の歴史をすべてその場で反芻し、無限の…

ニコニコ学会ベータでの失望 (12/21)

ニコニコ学会ベータというのがあって、いろいろ学問チックなことをニコニコ動画的な形でみんなでつっこみ入れながら紹介したり討議したりしましょうという代物。それの第五回シンポジウムがあって、お呼ばれしたのででかけてまいりました。お呼ばれといっても、妻の分はちゃんと払ったので無料ではなかったんだけど。http://niconicogakkai.jp/nng5/さてぼくはこの日の朝にミャンマーから帰ってきたばかりなので、体力的に少しきつかったのではあるけれど、ちょっとはおもしろい話もき…

コープランド『チューリング』:この程度で刷り直したのお??

…った。なお、文中の[*番号] は原注を示し、訳注は [] 内に言葉で補った。言語のmachine は歯車などを使ったハードウェアとしての意味合いの強い場合は『機械』とし、論理的な意味で用いられるときは『マシン』としたことをお断りしておく。」 うーん、ざっと見るとこれだけみたい。他にも細かいところで何かあるかもしれないけれど。でも……たったこんだけのために刷り直したんですか??? びーっくり。ウェブにサポートページでも作って軽く直してけばすむと思うのに。ついでに、カンバーバッチ…

モンテッソリ式経営:企業は幼稚園ではない

モンテッソリ式経営 (Shumpeter: Montessori Management The Economist 2013/9/7 p.58) 翻訳:山形浩生 『インターンシップ』は、役立たずの中年二人がグーグルのインターン社員として経験を積むという映画だが、ハリウッドの夏物コメディの低い基準から見ても、かなりひどいシロモノではあった。だが、一つだけいいポイントはついていた。技術企業が社員のために滑り台を用意したり、プロペラつきの帽子をかぶるのを認めたりするのはばかげている…

Duff McDonald The Firm: McKINSEY & THE INVENTION OF AMERICAN BUSINESS (2013) 査読評価書

マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密作者: ダフ・マクドナルド,日暮雅通出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2013/09/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る昔、査読した本の邦訳が出版されたので、査読書をおいておく。なお、文中にもあるけれどぼくが読んだのはまだ未定稿。実際に出版されたものは、以下の査読書よりある程度は改善されている可能性が高い(章の構成など明らかに変わっているので、少し整理された…

新都市はつらいよ:世界の新都市の苦境

Starting from Scratch: Urban Dreamscapes (The Economist 2013/9/7 p.22) マスダールシティの建設計画が2006年に発表されたときには、SF古典『デューン:砂の惑星』から飛び出してきたように思えたものだ。アブダビの砂漠の中、世界最大の化石燃料備蓄の上に、世界初のカーボンニュートラルで廃棄物ゼロの都市を造ろうというのだから。だがこの都市は直接砂の上に建つのではない。あらゆる建物は持ち上げたデッキの上に建つ。そのデ…

あらためて、オリンピックに経済効果なんかないこと。

昔、Voiceに、オリンピックに経済効果なんかないし、無理して誘致すべきでない、というコラムを書いた。 オリンピックには経済効果なんかありません。(2007/05) 2007年の話で、ここで話題にしているのは、2016年リオデジャネイロオリンピックが選ばれたときの話。ぼくが言ったとおりアメリカ大陸になったでしょー。で、その中で話題にしている研究というのは、以下のものだ。 Jeffrey G. Owen (2005) "Estimating the Cost and Benef…

Elephantish markets.

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)作者: パオロ・バチガルピ,鈴木康士,田中一江,金子浩出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/05/20メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 629回この商品を含むブログ (122件) を見るYesterday, I dug up my review about some BS book called Stalking the BS, and I was also reading Paolo Bacigalupi Windu…

Stalking the Black Swan: 散漫な後知恵ばかり。

Stalking the Black Swan: Research and Decision Making in a World of Extreme Volatility (Columbia Business School Publishing)作者: Kenneth A. Posner出版社/メーカー: Columbia Univ Pr発売日: 2010/02メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見る 総評 いま三くらい。各章とも、ブラックスワンに不意打ちされない…

Naim The End of Power 査読: 目新しさに欠け提言も弱い。

The End of Power: From Boardrooms to Battlefields and Churches to States, Why Being In Charge Isn’t What It Used to Be作者: Moises Naim出版社/メーカー: Basic Books発売日: 2013/03/05メディア: ハードカバー クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る 0. Executive Summary お金と権力は一極集…

中東のノンアルコールビール:アルコール 0.0%ではなく0.00%!!

最近のアラブ系のニュースはあまりに陰惨で悲痛なものばかりなので、少し気晴らしにくだらないネタを: 罪なきビール:中東の醸造所 (Sin-Free Ale: Brewers in the Middle East The Economist 2013/8/3 号) 飲んべえ諸賢はノンアルコールビールに何の意味があるのかと頭を抱えるかもしれないが、その人気は世界中で高まっている。昨年には、22億リットルが消費された。これは五年前から80パーセントの増加となる。先進国では、その消費者…

フェイスブックは人を不幸にする!

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)作者: デビッド・カークパトリック,小林弘人解説,滑川海彦,高橋信夫出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2011/01/13メディア: ペーパーバック購入: 33人 クリック: 2,842回この商品を含むブログ (240件) を見る Get A Life!! Facebook is Bad for You (2013/8/17号 p.68) フェイスブック参加の誘惑に抵抗し続けてきた人々…

センとバグワティがけんかしとるでー。

[rakuten:rakutenkobo-ebooks:11462598:detail]なんか、センとドレーズのインドについての新刊が出て、その書評が The Economist に載ったのね。 Beyond Bootstrap(2013/6/29号) で、この中でバグワティが引き合いに出されていて、バグワティはインドが経済成長のためにもっと規制緩和とか貿易開放とかしなきゃいけないよ、とこれまで言ってきたけれど、この本はその上ををいって…… とある部分に、バグワティはカチンと…

報酬を出すと献血の質も量も下がる、というのはまちがいかも……

…というのが本の主張で*1、ベンクラーはこれを使って報酬目当ての行動がいかに見下げ果てた代物であるかを匂わせるとともに、これに疑問を呈したケネス・アローなどの経済学者どもも、いかに私利私欲の金銭動機に頭が染まりきったおめでたい連中かを浮き彫りにしようとしていた(この本は、経済学者にものすごい敵意と偏見をむき出しにしているのも特徴)。でも、Science を読んでいたら、この研究結果が疑問視されているんだって。もう完全に決着ついた話だと思っていたのでびっくり。http://www…

アセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するか』上巻:サクサク読めておもしろい。が、前からこの種の制度派について思っていた疑問はそのまま。

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源作者: ダロンアセモグル,ジェイムズ A ロビンソン,稲葉振一郎(解説),鬼澤忍出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/06/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (30件) を見るということで読み始めました。上下巻の本だし中身が濃そうなので、この出張中に全部読み終えるのはとても無理だろうと思って上巻しか持ってこなかったけれど、思ったよりサクサク読める。というのも、中身のほとんどは歴史的なエピソードで、しかもそ…

ぶにょぶにょそん他『機械との競争』:他の説明との比較がまったくないのが不満。ブックデザインお見事。

機械との競争作者: エリック・ブリニョルフソン,アンドリュー・マカフィー,村井章子出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2013/02/07メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 46回この商品を含むブログ (41件) を見るまずこの本を採り上げるなら、一応お約束なのでこれを……原題は一応意識してるみたいなので、言及してあげるのが筋ってもんでしょー。で、本の内容はつまらない。機械が発達しているので、単純作業はどんどん置き換えられ、それを使える高技能でスーパースターな超高…

佐倉『「便利」は人を不幸にする』:くだらないラッダイト抑圧反文明論。ドラエモンすら読み損ねている。

…なければ、というわけ*1。でも実際は、便利なものを求めるのは一般の人々だ。だれも人に便利さを強制してはいない。コピーは便利だけれど、それがいやなら手書きで資料を写してもぜんぜんかまわない。消費社会だって別に無理に便利さを生み出しているわけではない。人々がほしいものをうみだそうととし、いろんなものがもう少し使い勝手がよくならないかという工夫の結果でしかない。それがよくないと思うなら、ご自分がやめるのは勝手だ。ご自分が不便さの中で生きるのはまったくおすきなように。でもこういう人々…

実測データ収集へのこだわりで、被曝水準の低さが裏付けられる

…ムの客観性を賞賛した*1。懐疑派はあまり評価していない。「(ホールボディカウンターの)検出限界が高いせいで体内のセシウム水準を見落としているし、体内のセシウムがどのように健康に影響するかはわかっていない」と Atsuhito Ennyu は語る。かれは全国で福島からの放射性物質をモニターしようという市民活動で活発な地球化学者だ。早野は賞賛も文句も意に介さない。「自分でも、『なんでこんなことやってるんだろう』と何度も自問しましたよ」と彼は笑う。その質問には、他の人々が喜んで答え…