- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/01/26
- メディア: 雑誌
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東洋経済の2015.01.31号がピケティ特集。ざっと見たけれど、なかなかいいできだと思う。前半はピケティに関する特集、後半はピケティとは関係なく、経済学のおもしろいトピックをいろいろ紹介。
pp.46-95というかなりのページを割いた特集で、内容も結構充実している。特によくできているのは、pp.58-63。r>gについて、かなり深い分析と、経済学におけるこれまでの分配の扱いについて。よく調べてあるし、まとまりもいい。
pp.64-65のピケティ批判論の紹介は……メンツはカラフルだけれど(グリーンスパンsan、ジョーンズ、コーエン、アセモグル他)、どれもブログの感想文や印象批評レベルの批判コメントばかりなので、そんなに深くない。が、いろんな人がどこにケチをつけているかについては、おおまかな見取り図はわかるんじゃないかな。また日本の格差についての話 (pp.68-69) も非常に有益。
(ちなみにアセモグルは制度についての考察がないと批判してるんだけれど、ぼくから見ると『21世紀の資本』はまさに制度こそが重要だと言ってる本だと思うんだけどなあ。「制度」って人によって意味がぜんぜんちがうのでやーね、と思うと同時に、どうもアセモグルは『21世紀の資本』の中で、ビルゲイツを大した根拠もなくヨイショしている、イノベーション神話に踊らされたお調子者エコノミストとして茶化されたのをかなり根に持っている模様。かわいい♡)
つまらんのが、竹田あおじの哲学的な経済学「批判」と称するもの(pp.67-68)。本当にくだらないことしか言っていない。ピケティは、経済学はあまり威張るな、とくさしているけれど、でも一方で経済学はある程度の実績はある。それに対して、哲学は大したことできてないくせに、上から目線で他の学問にもの申せると思ってるとは。こんなのに2ページも割くとはね。それと、ポストピケティという本の著者の紹介 (p.72-73) は、あまり大した内容ではなく、かなりがっかり。さらに木暮太一の「今こそマルクス、スミスに向き合おう」(pp.74-75) って、何なのこれ。古典に向き合うと知恵がつまってますって、言ってること皮相どころか産毛を撫でる程度のもの。なぜこんな人たちが出てきているのかは不明。
あと、リフレ派になんとかケチをつけたいという下心が方々にのぞいているのは、まあご愛敬。石橋湛山は実はリフレ派ではなかったんですか? ふーん。ピケティは金融政策がお嫌い? ふーん。が、これも鼻につくほどではない。どうせくるだろうと思ってはいたので……問題点については、田中秀臣ブログを参照してほしい。
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20150126#p1
その後に続く、経済学のおもしろトピックというのは、最近の経済学話題書から、行動経済学っぽいネタとか都市集中ネタとかお金と幸福の話とかを挙げたもの。ピケティとは関係ないけど、『貧乏人の経済学』も採りあげられているし、都市集中ネタはグレイザー出してくれたし。山形的には、市が栄えて特に文句を言うべきにも非ず。
- 作者: アビジット・V・バナジー,エスター・デュフロ,山形浩生
- 出版社/メーカー: みすず書房
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- 作者: エドワード・グレイザー,山形浩生
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ということで、全体に悪くないよ。読んで損したとはまったく思わないし、いろんな雑誌記事の中でまとまりもあるし結構いい。定価の690円払うかどうかは……あなたの価値観次第。でも都心に住んでる人は、道端で100-200円でリサイクルしてる雑誌売りの在庫で見かけたら買って損はなし。
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.