2021-01-01から1年間の記事一覧
Executive Summary チェ・ゲバラは2回結婚している。二人とも、回想記を書いている。 最初の奥さんイルダ・ガデアは、ずっと年上だがペルーで過激派の重鎮だったため追放され、ゲバラをグアテマラとメキシコで急進的なマルクス主義勢力と接触させた人物。完…
Executive Summary マリータ・ローレンツ『諜報員マリータ』は、カストロの愛人になり、その後殺されかけ、CIAの手先として暗殺作戦に使われて未遂に終わり、その後ケネディ暗殺にも関係していたという、波瀾万丈の女性の自伝。 だが常に股はゆるく、男とす…
Executive Summary メネセス『フィデル・カストロ』は、パリ・マッチ記者のメネセスによる独自取材のカストロ伝。シエラ・マエストラの山で、通訳なしで直接取材もしていて、非常にしっかりしたもの。彼はソ連系の社会主義団体シンパであり、必ずしもそれに…
Executive Summary マシューズ『フィデル・カストロ』は、キューバ蜂起の泡沫勢力でしかなかったカストロたちをシエラ・マエストラの山の拠点に訪ねて取材し、カストロこそが反バティスタの旗手という宣伝に加担したニューヨーク・タイムズ記者によるカスト…
Executive Summary Polèse The Wealth and Poverty of Cities: Why Nations Matter (Oxford, 2021) は、経済発展の原動力として都市のイノベーションを重視する近年の流行に対し、いや都市発展の基盤となる制度をつくるのは国だから都市より国が重要なんだと…
Executive Summary ラフィ『カストロ』(原書房、2017) は、2021年時点で日本で出ている最新のカストロ伝。他の伝記が公式プロパガンダの羅列にとどまるのに対し、カストロに対するきわめて批判的な視点を元に、一般人がカストロの生涯を見て疑問に思う、革命…
Executive Summary フアナ・カストロ『カストロ家の真実』は、フィデル&ラウルの妹が書いた、カストロ一家の内側から見たカストロ兄弟と革命だ。著者は革命に幻滅してCIAに協力し、亡命するに到った人物として、視点は一応は批判的なものとなる。 しかしそ…
Executive Summary 宮本『カストロ』(中公新書、1996) は、内容的に公式発表の情報を年表にそってまとめただけ。目新しい視点も分析もないし、キューバ大使だったくせに、カストロ兄弟と直接の接触がまったくなかった模様。しかも記述は1990年代止まり。現代…
Executive Summary コルトマン『カストロ』は、イギリスの外交官が書いたカストロ伝。一応は客観的な書き方になっているが、個人的にカストロと親密だったせいか、きわめて好意的な書き方、というより公式プロパガンダからあまり逸脱しないものとなっている。…
Executive Summary 多くのものはいまや、価値が本来の機能ではなく、それ以外の本来の機能との差分/diffに宿るようになっている。酒はもともとアルコールの酩酊感のためのものだが、いまやアルコール以外の不純物がお酒の味の主役になっている。食事は栄養摂…
Executive Summary デヴィッド・グレーバーは、いまの資本主義を批判するので人気があるが、最近の労働が実は無意味なものと化し、そこに従事している人びとが虚無と疎外感にとらわれているという『ブルシット・ジョブ』(2018) は、実際の人びとの労働意識を…
1. キューバ再び:経済危機のさなか さて久々にキューバにきているのだけれど、キューバはいますごいことになっている。まず、アメリカの制裁がどんどん厳しくなり、各種の船はキューバに寄っただけで嫌がらせされ、キューバへのフライトもどんどん潰された…
Executive Summary 2021年10月に、ナオミ・ウルフのツイッターアカウントが垢バンをくらった。コロナ陰謀論とワクチン否定論の最も低級な代物をバラマキ続けたせいだが、それ以前からナオミ・ウルフはどんどんおかしくなっていた。 もともと主著『美の陰謀』…
Solved!: How other countries have cracked the world's biggest problems and we can too作者:Wear, AndrewBlack Inc.Amazon Andrew Wear Solved! How other countries have cracked the world’s biggest problems and we can too (2020, Black) 査読 2020…
2020年10月に依頼された、マリアナ・マッツカートの新著の査読。冒頭のコロナでの話とかでもわかるとおり、いまにして思えば (半年しかたっていないのに!) ずいぶん拙速で妥当性のない話になっているように思う。ベトナムなどは社会封鎖は成功したけれど、…
Executive Summary ハーマン・カーン『紀元2000年』(1967) は、クルーグマンのエッセイでは全然予測が当たっていないボケ役に使われていたが、その文の中ですらかなりいい予想をしていると指摘されていて、予測が全然あたらないという文章の主題と全然マッチ…
いま訳している分厚い本がもう、話があっちとびコッチ飛びして、結局どこに行こうとしているのか、そもそも何の本なのかもときどきわからなくなっきて、いまは一生懸命『マヌ法典』なんか読んでおりますが、うーん。 分厚いから本当なら集中して片づけたいん…
ちょうどリドレー『人妻とイノベーション』を読んでいるところで、なかなかおもしろい。 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する作者:マット・リドレー発売日: 2021/03/05メディア: 単行本 これについては、またきちんと書く機会もあるだ…
なんかこんど、ラジオのレギュラーコメンテーターやることになったのよ。 www.joqr.co.jp サイトには出ていないけれど、ツイッターに出たからすでに解禁なんだと思う。番組全体が少し時間が遅れて長くなるとのこと。そしてその情報によると、山形は火曜の7:4…
先日、「資本主義の行き詰まりがあちこちで見られる中で新たな経済思想は〜」みたいな話をきかれて、ぼくはちょっと言葉に詰まった。というのも、資本主義がそんなに行き詰まっているとはぼくは思っていないから、なのだ。 それで、ちょっと以前読んで気にな…
ピケティの新著、翻訳鋭意進めております。その中で古い本がたくさん引用されてて、中にあったのが、コンドルセ。 人間精神進歩史 第1部 (岩波文庫 青 702-2)作者:コンドルセ発売日: 1951/03/05メディア: 文庫 引用ヶ所の邦訳ページを調べなくてはならないの…
トマス・ペインのAgrarian Justice、よく題名の直訳で、「農民の正義」とか紹介されているので、農地改革のすすめかなんかだろうと思って読みはじめたら、ぜんぜんちがいました。 なんと1795年の段階で、ベーシックインカムの必要性を実に明解に訴えた先駆的…
いろいろ忙しくなってきたので、例によってケインズ『説得論集』の全訳をあげてしまいました。1931年の原著すべてプラスアルファになっております。 J.M.ケインズ『説得論集』pdf 1.3MB https://genpaku.org/keynes/essaysinpersuasion/JMKessaysinPersuasio…
こないだ石岡瑛子展にいってきて、大正解だったというのは前に書いたとおり。何やら終わり近くは連日満員だそうで、ご愁傷様です。 cruel.hatenablog.com さて、そこでも書いたことだけれど、その中であのMISHIMAの金閣寺が、ちょっと浮いていて空回りしてい…
以前、H・G・ウェルズによるスターリンのインタビューの翻訳を載せたら、それなりに好評を博した。 cruel.hatenablog.com その後、ちょっとまた別の興味でケインズ全集を見ていたら、なんとこのインタビューへの言及があって、ケインズがこれにコメントをよ…
先日、ケインズの「芸術と国家」という文章を訳した。 cruel.hatenablog.com そのとき、これがケインズ全集に入っているかどうかいちいち確かめたりしなかったんだが、別のことを調べていたら、出ているのがわかった。 社会・政治・文学論集 (ケインズ全集)…
Exectuive Summary ピケティ新著のサポートサイト用に、図表の加工を外注したい。報酬は出たときに訳書をあげるだけ。以下の仕様を見てわかるヤツだけ応募しなさい。 はじめに 高齢な方々の中には、はるか昔にトマ・ピケティ『21世紀の資本』とかいう本がな…
epub版ケインズ『人物評伝』表紙。 年明けてからケインズ『人物評伝』を訳し始めて、月の内になんとか終わりました。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』pdf 2.7MB ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』epub 1.4MB epubは、pandocで機械的に変換…
ケインズの人物評伝の訳は続いていて、マルサスが終わってスタンリー・ジェヴォンズになっている。 マルサスはかなり温厚でまともな人だったらしいけれど(まあ牧師さんだから)、それでも結構面倒な人ではあったみたい。同時代の人の証言によると、 「だが…
1933年のケインズ。 急に忙しくなったので、余計なことに手を出し始めて、ケインズ『人物評伝』の訳をこの連休に始めた。政治家、経済学者、科学者のパートがある中で、政治家の部分が終わったので、まあご覧あれ。 ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝…