書評
パソコン初期のPC Magazine ポーランド版に連載されていた『中国語の部屋の秘密』は、なかなかおもしろかった、という話は前回した通り。 cruel.hatenablog.com 自分の考えたいろんな可能性が、なんか実現間近かもしれないぜ、というのをレム自身もかなりお…
Executive Summary 『SFと未来学』はポーランドのSF巨人スタニスワフ・レムが1970年に発表した超長編SF評論である。当時アメリカで流行していたハーマン・カーンらの未来学を見て、その無力ぶりとエリート偏重を論難し、SFこそは未来をもっと広い人々が考え…
はいはい、どんどんレムの積み残しを消化しましょう。 主の変容病院・挑発 (スタニスワフ・レムコレクシヨン)作者:スタニスワフ・レム国書刊行会Amazon で、これはレムの処女作の純文学作品『主の変容病院』と、晩年というほどではないが1980年代末、前回の…
以前、ずっと本棚に鎮座していたカルロス・フエンテスやトマス・ピンチョンやウィリアム・ギブスンにある日一気にケリをつけたように、いま自分がスタニスワフ・レムに一気にケリをつける時期にさしかかっているのは明らかだと思う。そしてずっと本棚にあっ…
レムの未訳書で、ポーランドの電子書籍で安く出ていたのでまとめて買った。レムがおセックスについて書くとなると、まあエロいわけはないんだけど、一応まあ見るだけみておくか、という感じ。 publio.pl まず最初の2章分、SEX WARSはどこに出たのかよくわか…
2000年に出たレムの、ほぼ最後に近い数冊の一つ、Okamgnienie. 『技術大全』『対話』をふり返っているというので、お手並み拝見と思って読んでみた。75ページしかないので、ほとんど一瞬。 レム「まばたき一瞬」(2000) 電子版カバー だが…… その中身はかなり…
はじめに あらすじ メタSF的結び / メタファンタジア あとがき 内容についての感想 既訳とその解説について おまけの感想:すべてを律する一般理論! 終わっちまった悲しみに:30年越しの感想 はじめに やったー!終わりにきた! 「メタSF的結び」と「おわり…
はじめに あらすじ 1. ブラッドベリのすごさ 2. ニューウェーブ/バラードのだめなところ 3. ヌーヴォーロマンのだめなところ 4. なぜそれがダメなのか? 文学、特にSFが目指すべきもの 感想 1. SFの「認識論的評価」と未来学の関係 2. 最高のブラッドベリ評…
はじめに あらすじ 感想 はじめに はい続き。スタニスワフ・レム『SFと未来学』第12章「棚卸し」。前章の最後で「次回は『総括』」と書いたけど、AIの翻訳がちょっとちがっていた。「その他」をまとめて扱いましょう……と言いつつ、やるのは冷凍睡眠とか、身…
題名の通り、AIサミットでの基調講演。 ヴァンス続きで、別にヴァンスのファンというわけじゃないが、AI会議でのアメリカのAI政策の話。 2025年パリAIサミットでのJ.D.ヴァンス米副大統領基調講演 このツイートで好意的に言われていたので、ちょっと見てみて…
Executive Summary アルセ『チェ・ゲバラ最後の真実』: チェ・ゲバラの1967年のボリビア侵略とその敗北について、大量のインタビューで追った本。細かい移動、作戦行動、物資、その他いろいろな話を、生き残りや当時の軍人、地元住民などの大量のインタビュ…
Executive Summary オーウェル『一九八四』をジュリアの視点から語り直した、フェミ版『一九八四』というふれこみで出てきた小説だが、その中身はというと、実はジュリアは体制側のスパイで、下々の男たちはみんな、ジュリアにハニーポットで陥れられただけ…
先日からずっと、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の勝手な翻訳とまとめをやっているのはご存じのとおり。 cruel.hatenablog.com 残った一つの章は、とっても大事なんだけれど長いので、仕上がるのはかなり先になるとは思う。が、それとは別の余談。 先日、…
ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげ…
[f:id:wlj-Friday::plain] ゲバラのキューバ戦争記録の邦訳 チェ・ゲバラの本は、同じものがあちこちからいろいろ出て題名も微妙に変わるので、同じものかどうかがわからずいろいろ面倒。以前、『ゲバラ日記』と称して出ているものが8種類もあることについて…
Executive Summary ジョージ・オーウェルが、第二次世界大戦中および大戦後に人気を博した通俗評論家バーナム『管理職革命』『マキャベリ主義者たち』を徹底的に批判した書評的エッセイ。バーナムは、マキャベリを引き合いに出して、政治は常にエリートのだ…
いま訳しているゲバラ本、詳細なだけあって、とにかくおもしろいエピソード満載ではある。その一つが、1959年ゲバラの来日および広島訪問のエピソードだ。 簡単に背景を。1959年1月、世界の驚きをよそにキューバ革命が成功してハバナは制圧されてしまい、新…
先日、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』の1995年あとがきや、新装版への2003年序文を訳した。 訳しても読んだ人は、たぶんぼく自身以外はあまりいないと思う。長ったらしいし、テメーらみんな、度しがたい怠けものだから。が、読んだ人なら (そし…
Executive Summary 木村汎『プーチン』三部作 (藤原書店、2015-2018) は、書きぶりはあまりにひどい無内容な水増しぶり。だがその中身はかなりきちんとしている。プーチンの自伝的エピソードのごまかしも述べ、また変な柔道談義で舞い上がることもなく、北方…
Executive Summary ポランニー『ダホメ王国と奴隷貿易』に描かれている17-19世紀ダホメ王国は、市場システムを持たない。国内ではすべての作物を王様が召し上げ、一大宴会でそれを民草に配り、それ以外のわずかな部分を、王が配るタカラガイで、市場で定額で…
Executive Summary 情報寄せ集めで、文章もまったく構築性がなくて構文レベルでむちゃくちゃで意味不明。そして中身は基本的にロシア擁護であり、ロシアが侵略を繰り返すのも、他国がプーチンに配慮しないからいけない、ウクライナがプーチンの言うことを聞…
Executive Summary 2002年あたりに、3日にわたってオリバー・ストーンがフィデル・カストロに密着したインタビュー映画。 だがストーンは脈絡なく抽象的な質問をするだけ。相手が怒ったり口ごもったりするような質問は一切ない。また質問の答を受けてさらに…
Executive Summary 『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋、2018) は、同名のプーチン連続インタビューシリーズの文字版。2015-2017という、プーチンやロシアをめぐる各種の大きな事件が次々に起きた時代で、本当であればまたとない情報源となれた…
Executive Summary カブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』(青土社、2006) は、葉巻をめぐる歴史、文学、映画、政治、その他ありとあらゆるエピソードを集め、さらにダジャレにまぶしてもう一度昇華させた楽しい読み物。著者が逃げ出したキューバへの郷愁も…
Executive Summary ゴルバチョフ『ペレストロイカ』(講談社、1987) は、ソ連の体制の刷新と解体から、やがてはソ連そのものの消滅をもたらしたという、当時の世界構造の一大変革につながった図書として、いつか読もうと思いつつ果たせずにいた。いま、35年た…
Executive Summary プーチン他『プーチン、自らを語る』(扶桑社、2000) は、突然ロシア大統領になってどこの馬の骨ともわからなかったプーチンが、生い立ちから大統領としての問題意識までを率直に語ったインタビュー集。幼少期の記述などはこれがほとんど唯…
Executive Summary 朝日新聞『プーチンの実像』(朝日新聞社、2015/2019) は、日本のぶら下がり取材的にプーチンが日本や自分たちと行った会見やその周辺人物のインタビューをあれこれ行っているが、明確な視点がないために、それが単なるゴシップのパパラッ…
Executive Summary 落合淳思『殷』は、落合の甲骨文研究に基づく、殷の社会についての分析で、非常にしっかりしていておもしろい。同時にその殷の研究自体が、直接資料である甲骨文を中心に研究しようとする立場と、後代の創作があまりに多い文献を重視する…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 II』は、産業イノベーション都市の理論のはずだが、まず冒頭にある産業イノベーションや都市立地の理論のまとめがあまりに雑でいい加減であり、したがってその後の各種都市の記述にとってのフレームワークを…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 I』は、都市がイノベーションの場だからえらいのだ、という結論ありきの本。第一巻では、高踏文化に見られる創造性がテーマとなっている。しかし冒頭にある創造性の理論のレビューがあまりにショボく、その…