ゲバラ『革命の回想』と『革命戦争回顧録』対比

[f:id:wlj-Friday::plain]

ゲバラのキューバ戦争記録の邦訳

チェ・ゲバラの本は、同じものがあちこちからいろいろ出て題名も微妙に変わるので、同じものかどうかがわからずいろいろ面倒。以前、『ゲバラ日記』と称して出ているものが8種類もあることについて書いた。

cruel.hatenablog.com

で、「ゲバラ日記」はボリビアで破壊工作して死んだときの日記だけれど、キューバ革命のときの日記/記録もやっぱりいっぱい邦訳がある。さすがに8種類はないけれど、なんか似たようなものが5種類 (たぶん探すと変なのがいろいろ出てくると思うけど、面倒だからこれ以上は見ない)。

で、読むほうも、いろいろ出てくるとどれを読むべきかで迷うと思うし、それで結局わかんなくてやめる例も多いと思う。それはもったいない。ボリビアの日記はどんどんドツボに入って陰惨だけれど、キューバ革命の記録は、勝った官軍側だし、なかなか勇ましくていいのだ。というわけで、読書ガイドも含めて比較を。

原書

まずそもそもの混乱は、原書が最低でも2種類くらいあることらしい。まず、1963年に革命の熱気に乗って出た本がある。そしてその後、2006年にいろいろ足した新版が出た。

そしてあとでまとめた革命戦争の記録に加えて、日記は別にあるということらしい。たぶん記録のほうは、日記からつまみ食いして整理したもの、ということになるんだろう。これは今後確認します。

邦訳

で、日記以外で3種類ある邦訳のうち、青木出版から出た「革命戦争の旅」というのは、どうやらこの最初のやつをすぐに出したものらしい。なんか朝日新聞が噛んでいるのかな? 原著題名は「革命戦争の道程」。

それとほぼ同時に出た『革命の回想』は、この『革命戦争の道程』に訳者の真木嘉徳がいろんな材料を他から持ってきて追加したもの。

そして『革命戦争回顧録』(中公文庫) は、2006年版の翻訳となっている。

日記のほうは、まだ手がまわらなくて見ていない。が、この革命戦争回顧録は、昔のやつとどのくらいちがうのか? ちょっと気になって対比してみました。

こうして見ると、真木嘉徳は2006年版とほとんど同じ内容を、1960年代に独自編纂していたんだなあ。すごい。しかも2006年版は昔のやつと、その後追加した文とが別建てになっているので、特に冒頭部分は年代がいったりきたりするけれど、『革命の回想』のほうはそれが年代順に整理されていて、話の流れがつかみやすい。よいですねー。たぶん当時としては非常に付加価値高かったはず。

中身まで細かく見ておらず、それぞれ最初と最後だけで比べているけれど、「最後の攻撃」を除けばほぼ同じ。

あと2006年版は、特に「最後の攻撃」のところで非常にプロパガンダ的な配慮があるのがわかる。『革命の回想』は、そうしたものがないので、むしろストレートな感じ。

ただしいまだと『革命戦争の旅』や『革命の回想』はそもそも手に入らないし、あと『革命戦争回顧録』は追加の話もいろいろあるので、いま読むならこっちでしょう。小犬を殺した話とか、センチメンタルながらも重要なネタもあるし。

翻訳の仕方も、平岡緑の訳は生真面目で固くて、どっちかといえば真木訳のほうが個人的には好みではある。が、それも趣味の範囲。

というわけで、こんど日記のほうも見て、どのくらい回顧録と重複しているのかも調べておきます。