フアン・マルティン・ゲバラ(弟) 「Che, My Brother」末弟の回想記だが美化と伝聞に終始。

Executive Summary 2017年に出た、かのチェ・ゲバラの、15才年下の末弟による兄の思い出……は前半だけで後半は自分の話。キューバ革命のときにまだ18才くらいなので、それ以前の兄エルネストについては (ほとんど家にいなかったこともあり) 漠然とした記憶し…

ラヴジョイ『ベルクソンとロマン主義的進化主義』:またはベルクソンなんてインチキ宗教!

エラン・ヴィタール。ベルクソンもおすすめしてます! 一連の『存在の大いなる連鎖』翻訳を終えたけれど、ラヴジョイ関連のツイートを検索して見てたら、哲学教師が、「ベルクソンとラヴジョイは同じ方向を向いている」という世迷い言を述べているのがあった…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!)

はいはい、ちょっとだけ残すのもいやだったので、やってしまいましたよ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』全訳 (pdf、3.3MB) これまでずっと続けてきたラヴジョイ、これで注も含めて全訳あげました。詩とか、長々しい引用とかはあまりに面倒なので訳してお…

ラヴジョイとマッカーシー『ステラ・マリス』:異世界性とこの世性

先日からずっと、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の勝手な翻訳とまとめをやっているのはご存じのとおり。 cruel.hatenablog.com 残った一つの章は、とっても大事なんだけれど長いので、仕上がるのはかなり先になるとは思う。が、それとは別の余談。 先日、…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義

ラヴジョイ、短い章なのですぐ終わってしまいました。 cruel.hatenablog.com ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) 楽天主義というと、ヴォルテール『カンディード』に出てくるパングロス博士の、「物事はすべて現状通り以外の形ではありえなかった…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ

ラヴジョイ、ちょろちょろ続いております。 cruel.hatenablog.com で、第5章にやってきました。この章はライプニッツとスピノザという大物が登場するのでなんかすごい哲学的な大バトルが出て、存在の大いなる連鎖という思想そのものに関わる話になるんじゃな…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置

はい、ラヴジョイの続き。 cruel.hatenablog.com 今回は、18世紀に、存在の大いなる連鎖が流行って、それが人間の立ち位置についての考え方に影響し、格差社会の弁明まで出てきました、という話。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理

ラヴジョイの続きです。 cruel.hatenablog.com 最後の第11講では、この存在の連鎖とか充満の原理、さらにその元になっている神様の異世界性とこの世性の両立が不可能だというのがあらわになって、それが一気に忘れ去られる様子が述べられていた。 cruel.hate…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争

またラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の続きです。第3講。第2講で異世界性とこの世性/存在の連鎖の発端を説明し、4講でそれが天文学でいろいろ応用されたので、その二つの間の中世の話で、何かその天文学の前段にあたるひねりがあるかも、というのが期待だ…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第8講:18世紀生物学

はい、ひまつぶしにラヴジョイの続きですよ。前は天文学だったけれど、今回は生物学です。個人的にはオリバー君の話につながるのが楽しかったが、もうオリバー君なんて知らないよな、みんな。 cruel.hatenablog.com 今回の話はとても簡単。18世紀になって、…

ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ

しかし、考えて見りゃラブジョイは40%くらいやったんだよな。そろそろ「ちXま学X文庫;山形浩生ダメだし改訳シリーズ」とかできそうだわな。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com 改訳じゃないけどソローのやつとかクルーグマ…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観

はいはい、やめようかなと思っていたラヴジョイですが、第2講で舞台設定ができて、第11講でいきなり結論になってしまうのは、ちょっとつまらない。その途中でどんな具合で論が進むかをみるために、多少は土地勘のある (他の部分よりは:スピノザやライプニッ…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学と三つの原理

お待ちかね (だれも待ってないか) 『存在の大いなる連鎖』第2講の翻訳。 まずは、暇な人は訳をごらんあれ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第2講:ギリシャ哲学における観念の創成:三つの原理 みんな読まないだろうからあらすじを。 前回の第1講は、そも…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう)

昨日、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講を見て、その滅多斬りぶりがスゲえという話をした。 cruel.hatenablog.com 一晩寝ると、なおさらすごいな、と思う。ふつう、ここまでやらないと思うのだ。普通はどうするだろうか? なんとかポジティブに終え…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげ…

クルーグマン『経済発展と産業立地の理論』の改訳

数日前に、なぜだか知らないがアーサー・ラブジョイの本を訳し始めた話は書いた。 cruel.hatenablog.com で、それとまったく関係なしにやりはじめちゃったのが、このクルーグマンの本だ。 で、訳文がこれ。 クルーグマン『開発、地理、経済理論』(3章はまだ…

ラヴジョイは「冷笑系」:非ビリーバーの優位性

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』を勝手に翻訳している話をした。 cruel.hatenablog.com で、引き続きやっていて、第2講もいまのところ、なかなかおもしろい。まだ前半だけだけれど、言われていることはやはり単純だ。 頻出する観念として「異世界性」と「…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』

その昔、荒俣宏だったかで、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』をほめていて、その後高山宏が、ニコルソンとかの紹介で観念史をいろいろもてはやしていた頃に、読もうかと思って邦訳を買って取りかかった。 存在の大いなる連鎖 (ちくま学芸文庫 ラ 10-1)作者:…

ゲバラ『革命の回想』と『革命戦争回顧録』対比

[f:id:wlj-Friday::plain] ゲバラのキューバ戦争記録の邦訳 チェ・ゲバラの本は、同じものがあちこちからいろいろ出て題名も微妙に変わるので、同じものかどうかがわからずいろいろ面倒。以前、『ゲバラ日記』と称して出ているものが8種類もあることについて…

Schumpeter "The Theory of Economic Development" (1934)

Schumpeter "The Theory of Economic Development" ちょっと参照する用があって、本棚にあったはずが見あたらないのでオンラインで転がっているだろうと思ったら、ろくなのがないので自分で作ってしまいました。翻訳ではありません。英訳版です。 原文のドイ…

オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946)

Executive Summary ジョージ・オーウェルが、第二次世界大戦中および大戦後に人気を博した通俗評論家バーナム『管理職革命』『マキャベリ主義者たち』を徹底的に批判した書評的エッセイ。バーナムは、マキャベリを引き合いに出して、政治は常にエリートのだ…

1984年縦書きepub版の暫定版

一部の人の要望に応えて、1984年の縦書きepub版を作って見たが、ルビがうまくいかない。ルビだけ表示されて、地の文字が出てこないというのは何なんだ。 まあないよりましでしょう。以下の目次の下にリンクしてあるので、見てみてください。 genpaku.org MS-…

オーウェル『1984年』全訳完成

Big Brother is Watching YOU!!! 2023年の年頭に宣言した通り、オーウェル『1984年』の全訳をあげました。 genpaku.org html版と、pdf版があるので、まあお好きに。当然、クリエイティブコモンズなので、自由にお使いください。個人的にはいま出版されている…

焚書坑儒の続き:学者もその批判も昔から同じ。徐福も、無駄金づかい。

以前、史記の焚書坑儒の話をした。 cruel.hatenablog.com ここでは、焚書坑儒の理由が封禅の儀式をめぐる話と関係があるんだろう、という説を紹介してそれの通りに書いた。でも、その後も史記をちまちま読んでいたんだが、なんか秦の始皇帝のところを読むと…

トマス・ピンチョン「『1984年』への道:オーウェル『1984年』序文」

Executive Summary トマス・ピンチョンによるオーウェル『1984年』への2003序文。本書が単なる反ソ反共小説ではない。オーウェル自身、立派な左派社会主義者ではあった。だが彼は、制度化された社会主義が己の権力にばかりこだわり、スターリニズムに目を閉…

オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性

Executive Summary トマス・ピンチョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書…

ピケティ『資本とイデオロギー』読書ガイド

目次: 目次: はじめに 1. 『資本とイデオロギー』の概略 1.1 .『21世紀の資本』のあらすじ: 1.2. 『資本とイデオロギー』の全体的な話 1.3. 『資本とイデオロギー』のあらすじ 第I~II部:歴史上の格差レジーム/奴隷社会&植民地 第III部:20世紀の大転換 …

プリゴジンくんの想い出を語るプーチン

Executive Summary 8/23あたりに起きた、ワグネルグループのプリゴジン粛清不慮の死をめぐるプーチンコメント。思わせぶりな部分もあるが、現時点では単なる事実確認。ただ雰囲気としては、ウクライナ/悪の西側による殺害、ということにしたい感じが漂ってい…

チェ・ゲバラ広島行きの謎、および三好徹『ゲバラ伝』

いま訳しているゲバラ本、詳細なだけあって、とにかくおもしろいエピソード満載ではある。その一つが、1959年ゲバラの来日および広島訪問のエピソードだ。 簡単に背景を。1959年1月、世界の驚きをよそにキューバ革命が成功してハバナは制圧されてしまい、新…

6/26 プリゴジンの乱に対するプーチン弁解の見方

Executive Summary 6/24プリゴジンの乱についてプーチンが6/26に出した玉音放送は、プーチンが今回の騒乱で何を気にしているかがうかがえる。ワグネルがほとんど何の抵抗もなしにモスクワの手前に到達できたし、また一部では歓迎すらされたというのを大変気…