Tooze『CRASHED』: アメリカ一極が終わって……次がない……

Crashed: How a Decade of Financial Crises Changed the World (English Edition)作者:Tooze, Adam発売日: 2018/08/07メディア: Kindle版 うーん。 まずは歴史認識の簡単なおさらい。世界が第一次世界大戦前は、金本位制をもとにしたヨーロッパ覇権みたいな…

ハーバート・サイモン『意思決定と合理性』の翻訳がひどすぎなので、訳し直してあげました。

ハーバート・A・サイモンって個人的にとても好きなんだけれど、こないだふと『意思決定と合理性』という短そうな本を手にとったら、いやあ、唖然としてその後ワナワナするくらい翻訳ひでえわ。 意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫)作者:ハーバート・A. サイ…

Ocean Blue, または安定と成長について

YouTubeに逃避をしていたら、なんとOcean Blueが今年新アルバムを出していたと知って驚愕。まだ存在していたのか! 昔のよしみで買って聞きました。 Kings and Queens /..アーティスト:Ocean Blue出版社/メーカー: Korda発売日: 2019/06/28メディア: CD Ocean…

格差の拡大は本当だろうか?——経済学者、格差の数字を見直す(The Economist より)

訳者口上:秋にピケティの新著が出たところで、The Economistの11/30号に格差についての議論を見直す研究についての話が出ていた。おもしろかったので勝手に翻訳。トップ層がすさまじく豊かになっているという見立ては、実はそんなに正しくないのではないか…

スノーデン暴露の背景解説書……その前に各種スノーデンインタビューの不思議。

スノーデンがらみで、さらに関連書を読んでいる。スノーデンが直接登場した各種の本を離れて見ると、土屋大洋『サイバーセキュリティと国際政治』はスノーデンを手がかりに現代のサイバー環境、国際政治、監視社会と自由のジレンマまで、広範な内容をきわめ…

ウルーソフ『遠い蟻たちの叫び』

以下の本に収録。 現代ロシア幻想小説 (1971年)作者: 川端香男里出版社/メーカー: 白水社発売日: 1971メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る 当時のソ連ならではのテーマを、当時のソ連において唯一可能だった文学という形式でしか書けないやり方で…

スノーデンの公表した日本関連文書

昨日、スノーデン関連の本をざっとレビューしたとき、小笠原みどりの『スノーデン・ファイル徹底検証』についてかなり論難した。 スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか作者: 小笠原みどり出版社/メーカー: 毎…

スノーデン関連書紹介

このたび拙訳で、エドワード・スノーデンの自伝が出ることになった。我ながらものすごい勢いで訳したので、やろうと思えば9月の原書発売と同時発売も可能だったと思うけれど、なんだかんだで11月末になりました。 スノーデン 独白: 消せない記録作者: エドワ…

バラード『太陽の帝国』新訳は、当然大きく改善されています……と書きたかったんだけど。

先日ふと、バラード『太陽の帝国』の新訳が出たのを知った。しかも山田和子訳。 太陽の帝国 (創元SF文庫)作者: J・G・バラード,山田和子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログを見る これについては、国書刊行会…

トルコ大統領が不敬にも捨てたという、トランプ大統領閣下のありがたきお手紙を植民地の下等民どもも味わってみたまえ。

もう多くの人が言っていることだけれど、ぼくは最近、フェイクニュースと現実のニュースの区別がつかなくなっていて、冗談ぬきで途方にくれている。このニュースが最初に出てきたときもそうだった。 www.asahi.com この手紙の実物が最初にでまわったとき、ぼ…

ウィリアム・ギブスン:意匠だけのファッションショー小説

Executive Summary ウィリアム・ギブスンの1990年代三部作と、2000年代三部作は、いずれの小説としての体をなしていない。ストーリーはどれもほぼ同じで、まったく必然性のない探索を、まったく必然性のないアート系女子が、大金持ちに依頼され、必然性のな…

ガルシア=マルケス『戒厳令下チリ潜入記』:ガルシア=マルケスは潜入してないし映画のおまけ。潜入して何が見えたかはまったくなし。

戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険 (岩波新書 黄版 359)作者: G.ガルシア・マルケス,後藤政子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1986/12/19メディア: 新書購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (23件) を見る ずっと本棚にあったのを初めて読…

Qubes OS 4.0 をLenovo Thinkpad X230 Tablet に入れてみると

Qubes 4.01 を Lenovo X250 にインストールして、少しずつ環境を作るとまあ使えるようになってきました。特にフォントがきれいになると、結構いい感じ。 そこへたまたま、ヤフオクでジャンクの Lenovo X230 TABLETを落札してしまいました。タッチスクリーン…

Qubes OS 4.0 on Lenovo Thinkpad X230 Tablet: Very Wierd

After installing Qubes 4.01 on Lenovo X250, things were pretty comfortable. After installing some decent fonts, things were becoming really useful. And then, I happened to get my hands on a junk Lenovo X230 TABLET. This thing has a touch s…

Qubes OS 4.0 を Lenovo Thinkpad X250 にインストールしてみた

(See the English version here) Qubes4.0 on Lenovo X250 Qubes OSを、Lenovo Thinkpad X250にインストールしてみたので、ご報告。 2019年7月、ちょうどエドワード・スノーデンの自伝を訳し終えた。 prtimes.jp もちろんこういうのを読むとパラノイアになる…

Qubes OS 4.0 Installation for Lenovo Thinkpad X250

Qubes4.0 on Lenovo X250 This is a pseudo-novice guide for installing Qubes OS on an Lenovo X250. July 2019, I just finished translating the Autobiography of Edward Snowden into Japanese. Of course, this makes you paranoid. You start to sus…

ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』拙訳についての論難は不当だと思うのです。

Executive Summary シモン・ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』の山形の翻訳について、アマゾンレビューで悪口が出ているけれど、山形自身は不当だと思う。その主張と山形の言い分は以下の通り。 話者が二人いるのを、一人だと誤解している! → …

脱グーグルを目指してはみたけれど:クラウドコンピューティングとの苦闘

個人的にはネットやコンピュータのセキュリティに関する意識みたいなものは、かなりそのときの気分次第でやたらに変動を繰り返す。 ときには、「いやあ、オレには隠すものなんか何もないよ、グーグルやフェイスブックやはてなやWeChatがどんな検閲かけてNSA…

キューバの経済 番外編: ノマドの夢と現実

キューバの話は書きかけがいくつかあるんだけれど、なんとなくまとめるところでモチベーションが落ちて放置してある。一つの理由は、コルナイ・ヤーノシュ『不足の政治経済学』を読んだら、ぼくが考えていたような話がすでにかなりきちんと考察されていて、…

お嬢さんは中東の石油相の遺産をもらえるそうです。

まったくどうでもいい話だけれど、近くのカフェで御禁制品のファーウェイMatebook Xでかっこよく仕事をこなしていたところ、隣でそこそこ妙齢の女子が二人ダベっている。その一人曰く: 「なんか変な英語のメールがきたのよー、中東からでぇ、なんか億万長者…

キューバの経済 番外編: モンゴル唯一の自販機

うーん、前回かなり気合いを入れたつもりなのに、反応が薄くてがっかりですよ。減価償却ガー、といったあたりですでにかなりみんなの理解力を超えたということなのかしら。 まあ仕方ない。今回は息抜きで、番外編としてコメントできた、モンゴルの自販機の話…

キューバの経済 Part3: 利益は「計画からのずれ」!社会主義会計と投資

前回、キューバ経済に見る「効率性」の考え方のちがいについて述べて、それをもたらす資本や投資の不足を指摘した。今回はその資本や投資の話を…… はじめに: モンゴルの財務諸表 開発援助がらみの仕事で、いろんなところでいろんな変なものを見てきたけど、…

平成の30冊:考えるだけ無駄でしたがカード3000円ゲット

朝日新聞の平成の30冊なるものの結果が発表された。 book.asahi.com 文芸偏重ならあらかじめそう言っておいてくれれば…… 山形もアンケートに回答していろいろ考えたけど、考えるだけ無駄でした。が、クオカード3000円(いや、図書カードだったかな)はもらった…

キューバの経済 Part2: 経済の「効率性」とは?――物流と『ザ・ゴール』

はじめに:社会主義の「いいところ?」 前回の、憲法改正の話を書いたら、はてなブックマークに「社会主義のよいところも書くべき」というコメントがついて、ぼくは少し驚いた。えーと、どんなところが「いい」と思ってるんだろうか? 強いて言うなら、格差…

キューバ番外編:Cubacell 携帯での3Gインターネット接続マニュアル

Executive Summary; キューバのインターネット事情はかなり劣悪であり、公園や公共施設付近にある官製 wifi アクセスポイントに、アクセスカードを使って一時間1ドルで接続するしかなかった。が、2018年12月から、待望の3Gモバイルインターネットが開始され…

キューバの経済 Part1: 憲法改正と市場経済

1. はじめに 最近、キューバでのプロジェクトが始まって、いま二回目の現地調査。キューバというと、みんなゲバラにカストロ、葉巻で、ついでにブエナビスタ・ソシアルクラブで町中が音楽に満ち……というような漠然としたイメージしか持っていない。このぼく…

統計の不備と、各種統計の「相関」の話

Executive Summary 統計の信頼性について疑問を呈した柳下毅一郎のツイートを、山形は一蹴した。が、その後勤労統計の集計方法の不備が露見した。ここから、この統計は捏造であり、それが相関しているならすべての統計が捏造だ、という極論を述べたブログが…

「平成の30冊」への山形の投票

朝日新聞が、「平成の30冊」なる企画をするのでアンケートをされた。回答すると、図書カード3000円だそうで。3000円だとあまり深く考える気も起きないし、また山形の選評とかがどこかに載るわけではなく、トップ30を選ぶために集計されるだけなんだよね。 通…

マクナマラの悲しい弁明

マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓作者: ロバート・マクナマラ,仲晃出版社/メーカー: 株式会社共同通信社発売日: 1997/05メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ (19件) を見る 久々にバンコクにきたのに、約束時間までの空き時間が少し…

内蒙経営策:満州帝国の二番煎じプロジェクト(実はちがう)の全貌

その昔、CUTにこんな文章を書いたことがある。 アゾット/亜素州をめぐる幻想と現実。 かのクラフト・エヴィング商会『クラウド・コレクター』の書評なんだけど、その枕に使ったのが、ぼくの曾爺さんかなんかのインチキプロジェクトの話しだった。 その曾爺…