カストロ

チェ・ゲバラ広島行きの謎、および三好徹『ゲバラ伝』

いま訳しているゲバラ本、詳細なだけあって、とにかくおもしろいエピソード満載ではある。その一つが、1959年ゲバラの来日および広島訪問のエピソードだ。 簡単に背景を。1959年1月、世界の驚きをよそにキューバ革命が成功してハバナは制圧されてしまい、新…

オリバー・ストーン『コマンダンテ』:きみ、何しに行ったの? 少しは事前調査とか仕事したら?

Executive Summary 2002年あたりに、3日にわたってオリバー・ストーンがフィデル・カストロに密着したインタビュー映画。 だがストーンは脈絡なく抽象的な質問をするだけ。相手が怒ったり口ごもったりするような質問は一切ない。また質問の答を受けてさらに…

プーチン本その3:『オリバー・ストーン オン プーチン』:ストーンが頼まれもしない反米提灯かつぎをする情けない本/映画

Executive Summary 『オリバー・ストーン オン プーチン』(文藝春秋、2018) は、同名のプーチン連続インタビューシリーズの文字版。2015-2017という、プーチンやロシアをめぐる各種の大きな事件が次々に起きた時代で、本当であればまたとない情報源となれた…

ローレンツ『諜報員マリータ』:信じられないほど頭と股のゆるいカストロ愛人

Executive Summary マリータ・ローレンツ『諜報員マリータ』は、カストロの愛人になり、その後殺されかけ、CIAの手先として暗殺作戦に使われて未遂に終わり、その後ケネディ暗殺にも関係していたという、波瀾万丈の女性の自伝。 だが常に股はゆるく、男とす…

メネセス『フィデル・カストロ』:ごく初期の独自取材に基づく批判的なカストロ論

Executive Summary メネセス『フィデル・カストロ』は、パリ・マッチ記者のメネセスによる独自取材のカストロ伝。シエラ・マエストラの山で、通訳なしで直接取材もしていて、非常にしっかりしたもの。彼はソ連系の社会主義団体シンパであり、必ずしもそれに…

 マシューズ『フィデル・カストロ』(1971):提灯持ちと自己宣伝のかたまり。

Executive Summary マシューズ『フィデル・カストロ』は、キューバ蜂起の泡沫勢力でしかなかったカストロたちをシエラ・マエストラの山の拠点に訪ねて取材し、カストロこそが反バティスタの旗手という宣伝に加担したニューヨーク・タイムズ記者によるカスト…

ラフィ『カストロ』:ほぼ唯一のまともな意味での伝記。視点も批判的だが明確で最新。

Executive Summary ラフィ『カストロ』(原書房、2017) は、2021年時点で日本で出ている最新のカストロ伝。他の伝記が公式プロパガンダの羅列にとどまるのに対し、カストロに対するきわめて批判的な視点を元に、一般人がカストロの生涯を見て疑問に思う、革命…

フアナ・カストロ『カストロ家の真実』:カストロ一家は悪くなかったというだけ

Executive Summary フアナ・カストロ『カストロ家の真実』は、フィデル&ラウルの妹が書いた、カストロ一家の内側から見たカストロ兄弟と革命だ。著者は革命に幻滅してCIAに協力し、亡命するに到った人物として、視点は一応は批判的なものとなる。 しかしそ…

宮本『カストロ』:1996年の本で古いし、詳しい年表レベルにとどまる

Executive Summary 宮本『カストロ』(中公新書、1996) は、内容的に公式発表の情報を年表にそってまとめただけ。目新しい視点も分析もないし、キューバ大使だったくせに、カストロ兄弟と直接の接触がまったくなかった模様。しかも記述は1990年代止まり。現代…

コルトマン『カストロ』:多少の留保はつけつつ基本はカストロの公式プロパガンダ通り

Executive Summary コルトマン『カストロ』は、イギリスの外交官が書いたカストロ伝。一応は客観的な書き方になっているが、個人的にカストロと親密だったせいか、きわめて好意的な書き方、というより公式プロパガンダからあまり逸脱しないものとなっている。…