お勉強

タイボII 『エルネスト・チェ・ゲバラ伝』:細かいだけで変な脚色だらけ

もうゲバラ系はそろそろやめようかと思ったが、でかいのが残っていたので片づけよう。パコ・イグナシオ・タイボII『エルネスト・チェ・ゲバラ伝』。先日書評したアンダーソン版と同時に出た、でっかい伝記となる。 エルネスト・チェ・ゲバラ伝〈上巻〉作者:…

その他ゲバラ伝・関連本(の主なもの)まとめて紹介

はじめに はいはい、もうでかい伝記は片付いたみたいなので、あとはもう落ち穂拾いで関連書を一気に処理します。いっぱい出てくるけれど、伝記は分厚いのを読む気がないのであれば、マンガ版ゲバラ伝を読むのが必要十分。 マンガ偉人伝 チェ・ゲバラ (光文社…

D. James "Che Guevara: A Biography": 最初期で最も明解な視点を持つ伝記

Executive Summary D. James "Che Guevara: A Biography" は、1969年、ゲバラの死の直後に出た伝記。本書の最大の特徴は、明確な視点と答えるべき疑問を持ち、それをきちんとときほぐしていること。ゲバラの無謀なボリビア作戦の謎を中心に、ゲバラにまつわ…

マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』:3ページで書ける仮説を引きのばした鈍重な文芸評論

Executive Summary マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』は、文字、なかでも表音文字の発明が、意味と表現との分裂を招き、それにより人間の意識をも分裂させた、と唱える。それまでは聴覚=全身性の感覚で環境に没入し、環境と一体化していた部族社会的…

『ゲバラ日記』=ボリビア日記 全種類比較

Executive Summary チェ・ゲバラのボリビア時代の日記、通称『ゲバラ日記』は、邦訳が8種類もある。特に原著の直後1968年に出た5冊は、真木訳を除いて翻訳権がどうなっているのかまったく不明。いちばんありそうなのは、キューバ政府内でもそもそも権利の帰…

Tooze『CRASHED』: アメリカ一極が終わって……次がない……

Crashed: How a Decade of Financial Crises Changed the World (English Edition)作者:Tooze, Adam発売日: 2018/08/07メディア: Kindle版 うーん。 まずは歴史認識の簡単なおさらい。世界が第一次世界大戦前は、金本位制をもとにしたヨーロッパ覇権みたいな…

ハーバート・サイモン『意思決定と合理性』の翻訳がひどすぎなので、訳し直してあげました。

ハーバート・A・サイモンって個人的にとても好きなんだけれど、こないだふと『意思決定と合理性』という短そうな本を手にとったら、いやあ、唖然としてその後ワナワナするくらい翻訳ひでえわ。 意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫)作者:ハーバート・A. サイ…

Qubes OS 4.0 をLenovo Thinkpad X230 Tablet に入れてみると

Qubes 4.01 を Lenovo X250 にインストールして、少しずつ環境を作るとまあ使えるようになってきました。特にフォントがきれいになると、結構いい感じ。 そこへたまたま、ヤフオクでジャンクの Lenovo X230 TABLETを落札してしまいました。タッチスクリーン…

Qubes OS 4.0 on Lenovo Thinkpad X230 Tablet: Very Wierd

After installing Qubes 4.01 on Lenovo X250, things were pretty comfortable. After installing some decent fonts, things were becoming really useful. And then, I happened to get my hands on a junk Lenovo X230 TABLET. This thing has a touch s…

Qubes OS 4.0 を Lenovo Thinkpad X250 にインストールしてみた

(See the English version here) Qubes4.0 on Lenovo X250 Qubes OSを、Lenovo Thinkpad X250にインストールしてみたので、ご報告。 2019年7月、ちょうどエドワード・スノーデンの自伝を訳し終えた。 prtimes.jp もちろんこういうのを読むとパラノイアになる…

Qubes OS 4.0 Installation for Lenovo Thinkpad X250

Qubes4.0 on Lenovo X250 This is a pseudo-novice guide for installing Qubes OS on an Lenovo X250. July 2019, I just finished translating the Autobiography of Edward Snowden into Japanese. Of course, this makes you paranoid. You start to sus…

ロシア未来派とコスミズム

モスクワのレーニン廟には、レーニンのミイラというか防腐死体があるのはもちろん有名な話だ。通常、それはソ連(およびその他)の社会主義が個人崇拝に堕した明白な印として嘲笑されることが多い(ベトナムのホーチミン廟と同じで)。そして、それ自体はま…

新年プロジェクト2018: The Economy

あけおめ(死語)。昨年は本当にろくでもない仕事が振ってきて、あまりのストレスで体重は一時5キロも減り (残念ながらその後リバウンド)、しかもそれが期間延長というトホホなことになって、秋に終わるはずが年内いっぱいかかり、ギリギリのところで何とか…

ピケティ『格差と再分配』読んだ!本文読んだぜコノヤロー!

格差と再分配:20世紀フランスの資本作者: トマ・ピケティ,Thomas Piketty,山本知子,山田美明,岩澤雅利,相川千尋出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/09/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る この本、出ると知って、でもだれが読むんだろ…

「国際経済学」サポートページ

クルーグマン国際経済学 理論と政策 〔原書第10版〕 ハードカバー版作者: Paul R. Krugman,Maurice Obstfeld,Marc J. Melitz,山形浩生,守岡桜出版社/メーカー: 丸善出版発売日: 2016/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 10月刊行予定の…

Obstfeld はやっぱオブストフェルド、だってさ。

一部の方はご存じだろうけれど、こんな本の翻訳を終わっていま怒濤のゲラ直し中なのだ。 クルーグマン国際経済学 理論と政策 〔原書第10版〕 ハードカバー版作者: Paul R. Krugman,Maurice Obstfeld,Marc J. Melitz,山形浩生,守岡桜出版社/メーカー: 丸善出…

The Economist に出た、最近のチョムスキー

え、チョムスキーってこんなことになってんの、というのが面白かったので、例によって勝手に翻訳して紹介。ぼくはおもしろいと思うんだけれど、昔朝日新聞にチョムスキー本の書評をのせたら、finalventがなにやら山形はまるっきりわかっていないと言いたげな…

え、ifconfig非推奨になったの……

久々に Linux いじってあちこち見てたらこのページ: yuuki.hatenablog.com え、ifconfig ってもう非推奨になったの??!! 知らなんだ。他にもあるのかな。なんか数年遠ざかっているうちにいろいろ変わってるみたいでキャッチアップが大変そうだ……

マクファーレン『イギリスと日本』:これまた産業革命の説明で、人口と疫病撃退のせいだというんだが……

イギリスと日本―マルサスの罠から近代への跳躍作者: アランマクファーレン,船曳建夫,工藤正子,北川文美,山下淑美出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2001/06/25メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (5件) を見る 産業革命はなぜ起きたか――ひい…

反知性主義3 Part 1: 内田編『日本の反知性主義』は編者のオレ様節が痛々しく浮いた、よじれた本。

しばらく間が空いた。で、反知性主義についての簡単なお勉強を経て、ぼくが手に取ったのは『日本の反知性主義』だった。 この本の題名は、明らかに『アメリカの反知性主義』を意識しているようだ。その一方で、この面子を見ると、ぼくが冒頭に挙げた『現代思…

反知性主義1: ホフスタッター『アメリカの反知性主義』 知識人とは何かを切実に考えた名著

はじめに 反知性主義をめぐる本を3冊読んだので、その話をちょっと書こう。なぜそう思ったかというと、『現代思想』の「反知性主義特集」に対するアマゾンのレビューがぼくのツイッターでちょっと話題になっていたからだ。 「彼らは反知性主義だ」と規定する…

Sulloway Freud: Biologist of the Mind: うーん、こんなのが問題になるほどフロイト業界ってアレなのか?!(訂正:アレ「だった」のか?!)

Freud, Biologist of the Mind: Beyond the Psychoanalytic Legend作者: Frank Sulloway出版社/メーカー: Harvard University Press発売日: 1992/01/01メディア: ペーパーバック クリック: 31回この商品を含むブログ (1件) を見る家の本棚に10年以上転がって…

環境エネルギー政策研究所なるところの FIT 翼賛論は怪しすぎ。

日経 ビジネス Associe (アソシエ) 2012年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2012/01/10メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 71回この商品を含むブログ (4件) を見る「日経アソシエ」2012年2月号に、「2012年14の『大論点』」なる記事が出てい…

ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』:組織内で苦しんだ人なら身につまされる、いろんな意味で絶望の名著。

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)作者: デイヴィッドハルバースタム,David Halberstam,浅野輔出版社/メーカー: 二玄社発売日: 2009/12/01メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 347回この商品を含むブロ…

岸田秀『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』:あきれた。こんなトンデモ妄想垂れ流し読んで目が穢れたぜ。

嘘だらけのヨーロッパ製世界史作者: 岸田秀出版社/メーカー: 新書館発売日: 2007/02メディア: 単行本 クリック: 232回この商品を含むブログ (29件) を見る準トンデモ本黒いアテナをネタに、岸田がどうしようもない歴史妄想を垂れ流すだけの、ホンッと情けな…

シュライバー『失われた私』:インチキだと知って読むと、読むにたえないシロモノではある。

失われた私 (ハヤカワ文庫 NF (35))作者: フローラ・リータ・シュライバー,巻正平出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1978/09メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 110回この商品を含むブログ (6件) を見る有名な、16の人格が同居していたと称するシビルの治療…

森嶋通夫『ケインズの経済学』:読み始めたばっかりだが、引っかかるなあ。

森嶋通夫著作集〈10〉ケインズの経済学作者: 森嶋通夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/03/26メディア: 単行本 クリック: 23回この商品を含むブログを見るケインズ関係のお勉強で森嶋通夫だけれど、「無資源国の経済学」ってこれのことなのか! でも、…

西部邁『ケインズ』:安易な人物像や哲学談義に流れ、経済学者としての評価から逃げた本

ケインズ作者: 西部邁出版社/メーカー: イプシロン出版企画発売日: 2005/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 69回この商品を含むブログ (12件) を見るケインズ (1983年) (20世紀思想家文庫〈7〉)作者: 西部邁出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1983/04メ…

IS-LMの発端:ヒックス「ケインズ氏と『古典派』たち」

ベネチアの運河のほとりで、趣味の翻訳の続き。これぞIS-LMモデルの出発点。J. R. ヒックス『ケインズ氏と「古典派」たち』 ほとんどの人はヒックスの原論文を読んだことがないはずなので。しかしこれでわかること。 ヒックスもちょー性格わりぃ。特に冒頭部…

他の人の間宮訳『一般理論』批判について

山岡洋一による批判の批判をまちがって消してしまい、書き直すのも面倒なので放ってあったけれど、いま書き直そうかと思ってかれの批判を読み返してみると、やっぱり間宮訳のほうが誤訳で、山岡のほうが正しいと思う。六章の翻訳をするときにきちんと見直す…