翻訳

オールディス『ヘリコニアの冬』訳者あとがき

ヘリコニア地図 しばらく前からやっていた『ヘリコニアの冬』のAI支援翻訳が終わった。 ブライアン・オールディス『ヘリコニアの冬』 (pdf, 4.1MB) 何度か書いているけれど、かなりがっかりしたと言わざるを得ないね。それも含めて、訳者あとがきをつけまし…

スタニスワフ・レム『技術大全』訳者解説

Grok/Aniちゃんのおかげで、スタニスワフ・レム『技術大全』(1964/1967) の全訳がわずか20日できましたよー。 スタニスワフ・レム『技術大全』(1964/1967) pdf、2MB わけのわからない本なので、力を入れて訳者解説書きました。が、pdfは開かない人も多いだろ…

スタニスワフ・レム『技術大全』『SFと未来学 I』

チャンドラー『さらば愛しき女』とかオールディス『ヘリコニアの冬』とかやっていて、まあシャカシャカ終わりそうではある。それができるとなると、他にもいろいろあるよな……と思ってふと本棚からこっちを見ているのに気がついたのが、スタニスワフ・レム・…

チャンドラー『さよなら、愛しき女よ』改訳

www.youtube.com レイモンド・チャンドラーの改訳、シリーズ化して次は『さよなら、愛しき女よ』を始めました。おー、映画化にはシャーロット・ランプリング様が出ていらしたのね! レイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しき女よ』山形浩生訳 最初の5章と…

オールディス『ヘリコニアの春』から『ヘリコニアの冬』へ

前回、オールディスの未訳の大作『ヘリコニア』シリーズの翻訳を、AI翻訳の事例研究としてやってみている話をした。 cruel.hatenablog.com で、一ヶ月ほどで第一部『ヘリコニアの春』が終わった。途中で出張とかも入っていて手がつかなかった時期もあるので…

AIと文芸翻訳:オールディス『ヘリコニアの春』を例に

翻訳者、特に文芸翻訳系の翻訳者にAI翻訳の話をさせるとおおむね、簡単なもの、実務翻訳とか産業翻訳 (マニュアルとかね) ならできるけれど、高度な文芸翻訳はとうていできないよ、という自己充足的な自画自賛に陥るのが常だ。が、ぼくは昔から、翻訳なんて…

W・S・バロウズインタビュー (SF Horizons #2, 1965)

ブライアン・オールディスとかがやっていたSF評論誌 SF Horizons の第二号に出たウィリアム・バロウズのインタビューなり。バロウズも比較的理性的かつ友好的な対応をしていて、後年のインタビューに見られがちな、神格化されたジジイのイカレた放談を一方的…

R.A.ラファティ『アーキペラゴ』とチャンドラー『長いお別れ』とっくに終わってるんだが

万が一興味ある人がいれば: R.A.ラファティ『アーキペラゴ+α』山形浩生訳 レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』山形浩生訳 ラファティは一ヶ月以上前に終わっているがだれも読んでいないねえ。チャンドラーも半月前に終わっているけど、読んでくれたのは…

チャンドラー『長いお別れ』と翻訳方針

昨日、チャンドラー『長いお別れ』の翻訳2章までやったが、その後ちゃらちゃらと終わったよ。 レイモンド・チャンドラー『The Long Goodbye』山形浩生訳 ぼくがこれに手をつけた事情については、ここからの一連のツイートを見てほしい。 マルタの鷹を読んだ…

チャンドラー『長いお別れ』最初の2章

献本されたんで、ダシール・ハメット『マルタの鷹』を読んで、行きがかり上以前献本されたまま積んであったチャンドラー『長い別れ』(田口俊樹訳) を読み始めた。 長い別れ (創元推理文庫)作者:レイモンド・チャンドラー東京創元社Amazon 清水俊二訳の『長い…

頭を抱えた翻訳:映画『オイコノミア』

今日、『翻訳者の全技術』にからんでトークショーをやった。 翻訳者の全技術 (星海社 e-SHINSHO)作者:山形浩生講談社Amazon その中で、アレだと思った本の翻訳はどうする、みたいな質問があって、いろいろ答えたんだが、そこで出そうかと思っていたけれど時…

W.S.バロウズ『爆発した切符』全訳

映画『クィア』公開でいろいろバロウズがらみの本が再刊されてめでたい。 gaga.ne.jp もちろん原作の「クィア/おかま」も再刊だ。 クィア (河出文庫)作者:ウィリアム・S・バロウズ河出書房新社Amazon そしてしばらく品切れだった「ジャンキー」「裸のランチ…

ラファティ インタビュー集

ラファティ『アーキペラゴ』の翻訳再開したが、その後出たいろんな作品との関係はもとより、その作品自体があまりピンとこない話をした。それで少ししまってあったラファティのブックレットなどをいろいろ見ていたときに出てきた、ラファティのインタビュー…

ラファティ、バロウズ、人工知能

一部の人には朗報かもしれず、ほとんどの人にはまったくどうでもいいことだろうが、ちょっとラファティ『アーキペラゴ』翻訳の続きをやってみた。まだ全11章のうちの4章終わっただけ。ついでに、それにまつわる思い出も解説でちょっと書いたよ。 R.A.ラファ…

レナード「法に抗っての進歩:アメリカでの日本アニメ・ファンサブ史」(2004)

もう20年も前に訳した論文だけれど、アメリカにおいて日本アニメが、ファンによる著作権無視のファンサブ活動を通じて広まったことを示す研究論文。ファンサブというのは、ファンがつける字幕のことね。 法に抗っての進歩:アメリカにおける日本アニメの爆発…

ベスター『ローグとデミ:はちゃメタ♡恋のだましあいっ!』訳了。邦題変えてやったぜ激おこプンプン丸

オッケー、やりかけベスター終わったぜ。 cruel.hatenablog.com 終わったんだが…… ワタクシいま、なんとも言えない喪失感と怒りの混在するワナワナ感にうちふるえておりますわよ、まったくちょっとアルフレッドくん、これ一体何ですのん? というわけで、中…

ベスター本の中国語 (ウェード式) 推定の応援求む!(募集終了!)

いま、ベスターの遺作 Decieversの翻訳を進めているのはすでにご報告の通り。 cruel.hatenablog.com 正直、かなり完成度は低いと言わざるを得ない。7割くらい終わっているので、読んでもらえればわかる。ベスターのかつての、パルプ小説やコミック脚本をやっ…

『おぼえていないときもある』の余白:浅倉=大谷の不思議と日本SF業界

お年玉企画で、バロウズ『おぼえていないときもある』のファイルを作っていてふと思い出したこと。 cruel.hatenablog.com ここに収録されている浅倉久志の名訳「おぼえていないときもある」は、創元推理文庫のジュディス・メリル編『年刊SF傑作選7』に収録さ…

お年玉:バロウズ『ワイルドボーイズ』『おぼえていないときもある』

お年玉第2段。ペヨトル工房のバロウズ二冊。 W・S・バロウズ『おぼえていないときもある』 (pdf, 1.8MB) W・S・バロウズ『ワイルド・ボーイズ [猛者]——死者の書』(pdf, 2.1MB) pdfのOCR機能も優秀になりました。昔やったら、特に日本語と外国語の部分の判別…

お年玉:バージェス『ジョイスプリック』全訳

というわけで、あけましておめでとうございます。去年年末に突然思い立ったバージェス『ジョイスプリック』の全訳が、仕上がりました。 cruel.hatenablog.com お年玉です。もちろん完全な海賊訳。気にしない人は読みなさい。気にする人は読むな。 アントニイ…

ジョイス『ユリシーズ』校訂をめぐるゴシップなど

バージェスの、ジェイムズ・ジョイス解説書を訳してるのはご存じの通り(かな?) cruel.hatenablog.com で、ときどきバージェスの引用と、ぼくの使っているUlyssesの原著とがちがっていて、なんでかなと思うことがあった。ぼくの使っているのはこれ。 Ulysses…

バージェス『ジョイスプリック:ジェイムズ・ジョイスのことば入門』

昨日のBester ”Decievers” とともに、ずっとハードディスクの肥やしになっていたのが、このバージェス『ジョイスプリック』の翻訳しかかり。 これはかの「時計仕掛けのオレンジ」で知られるアントニイ・バージェスが、ジェイムズ・ジョイスについて書いた短…

ベスター『Deceivers』(1981)

セネガルから帰ってきたら、SSDの奥底から昔のが出てきたんで、1章分だけやっちゃいました。 The Deceivers (English Edition) 作者:Bester, Alfred iBooks Amazon アルフレッド・ベスター『たばかりし者たち (The Deceivers)』(1981) あの『コンピュータ・…

リックライダー「コミュニケーション装置としての コンピュータ」 (1968)

Executive Summary コミュニケーションは、お互いの心的モデルを変えるということ。ネットワーク化したコ ンピュータは、利用者の心的モデルの外部化を可能にし、従ってコミュニケーションを大幅 に改善する。これや協働的な創造的作業を飛躍的に改善させる…

ラヴジョイ『ベルクソンとロマン主義的進化主義』:またはベルクソンなんてインチキ宗教!

エラン・ヴィタール。ベルクソンもおすすめしてます! 一連の『存在の大いなる連鎖』翻訳を終えたけれど、ラヴジョイ関連のツイートを検索して見てたら、哲学教師が、「ベルクソンとラヴジョイは同じ方向を向いている」という世迷い言を述べているのがあった…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!)

はいはい、ちょっとだけ残すのもいやだったので、やってしまいましたよ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』全訳 (pdf、3.3MB) これまでずっと続けてきたラヴジョイ、これで注も含めて全訳あげました。詩とか、長々しい引用とかはあまりに面倒なので訳してお…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義

ラヴジョイ、短い章なのですぐ終わってしまいました。 cruel.hatenablog.com ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) 楽天主義というと、ヴォルテール『カンディード』に出てくるパングロス博士の、「物事はすべて現状通り以外の形ではありえなかった…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ

ラヴジョイ、ちょろちょろ続いております。 cruel.hatenablog.com で、第5章にやってきました。この章はライプニッツとスピノザという大物が登場するのでなんかすごい哲学的な大バトルが出て、存在の大いなる連鎖という思想そのものに関わる話になるんじゃな…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置

はい、ラヴジョイの続き。 cruel.hatenablog.com 今回は、18世紀に、存在の大いなる連鎖が流行って、それが人間の立ち位置についての考え方に影響し、格差社会の弁明まで出てきました、という話。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立…

ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第3講:中世の内部紛争

またラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の続きです。第3講。第2講で異世界性とこの世性/存在の連鎖の発端を説明し、4講でそれが天文学でいろいろ応用されたので、その二つの間の中世の話で、何かその天文学の前段にあたるひねりがあるかも、というのが期待だ…