翻訳

ケインズ『平和の経済的帰結』:アメリカ版とイギリス版

しばらく前に、ケインズ『平和の経済的帰結』(1920) とその続編 (1922) を翻訳した。 cruel.hatenablog.com cruel.hatenablog.com で、後者をやっていたときに、実はこの二冊とも、イギリス版とアメリカ版が微妙にちがっていることに気がついた。イギリス版…

偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。

最近さまざまなメディアにおける人民諸君の発言を見るにつけ、であるな、多くの者が堕落し、あるべき革命精神を忘れ、軽視し、捨て去っているように見えるのだよ。特にへっぽこリベラルえせ知識人どもよ。そうした反革命分子どもにも、更正の機会を与えてや…

レッシグ新刊で知ったアメリカ政治二極化の力学

久しぶりにレッシグの翻訳をしているんだけれど、なかなかおもしろい(部分もある)。 かつてのインターネット法や著作権法からレッシグの関心は大きく逸れて、ここしばらくのレッシグの本は、アメリカの選挙献金制度の改革がテーマになっていた。何度か、翻訳…

ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 改訳終わった。

はい、コロナ戒厳令開始前に、サイモン『意思決定と合理性』の改訳を始めました。 cruel.hatenablog.com で、終わった。まあ読みなさい。 ハーバート・A・サイモン『人間活動における理性』(1982) 読者のみんなは、ぼくに深く感謝するがよいのだ。これはそ…

ケインズ『平和条約改訂案』、結局全訳しちゃった。

しばらく前に、ケインズ『条約の改訂』が仕掛かりだけど放り出す、という話を書いた。 cruel.hatenablog.com でもなんか、気の迷いで結局全部訳しちまったよ、あっはっは。暇だなあ、オレって。まあ、ご笑納くださいませ。 ケインズ『平和条約改定案: 続「平…

スノーデン自伝 訳者ボツ解説

しばらく前、といってもコロナ前だからはるか昔のように思えてしまうけれど、かのエドワード・スノーデンの自伝を訳したのでした。NSAに気がつかれないよう、原文はタイプ原稿コピー、著者名も偽名、これについてネットで絶対話をするなという条件つきで、し…

ケインズ『平和条約改定: 続「平和の経済的帰結 (1922)」』仕掛かり:結局やっちまった

しばらく前に、ケインズ『平和の経済的帰結』を全訳した。 cruel.hatenablog.com もちろんご存じと思うけれど、これは第一次世界大戦後に、イギリス外交団の一員としてヴェルサイユ会議に参加したケインズが、あらゆるものをドイツからはぎとって、しかもそ…

ハーバート・サイモン『意思決定と合理性』の翻訳がひどすぎなので、訳し直してあげました。

ハーバート・A・サイモンって個人的にとても好きなんだけれど、こないだふと『意思決定と合理性』という短そうな本を手にとったら、いやあ、唖然としてその後ワナワナするくらい翻訳ひでえわ。 意思決定と合理性 (ちくま学芸文庫)作者:ハーバート・A. サイ…

格差の拡大は本当だろうか?——経済学者、格差の数字を見直す(The Economist より)

訳者口上:秋にピケティの新著が出たところで、The Economistの11/30号に格差についての議論を見直す研究についての話が出ていた。おもしろかったので勝手に翻訳。トップ層がすさまじく豊かになっているという見立ては、実はそんなに正しくないのではないか…

バラード『太陽の帝国』新訳は、当然大きく改善されています……と書きたかったんだけど。

先日ふと、バラード『太陽の帝国』の新訳が出たのを知った。しかも山田和子訳。 太陽の帝国 (創元SF文庫)作者: J・G・バラード,山田和子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/07/30メディア: 文庫この商品を含むブログを見る これについては、国書刊行会…

ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』拙訳についての論難は不当だと思うのです。

Executive Summary シモン・ストーレンハーグ『エレクトリック・ステイト』の山形の翻訳について、アマゾンレビューで悪口が出ているけれど、山形自身は不当だと思う。その主張と山形の言い分は以下の通り。 話者が二人いるのを、一人だと誤解している! → …

経済学でも男女で意見の相違があります

『エコノミスト』で、経済学者でも男女で意見に差が見られるという研究を紹介し、こういう意見の相違が研究にも影響するかもね、という記事を載せたところ、経済学関係者の出入りするフォーラム、Economic Job Market Rumors で関連スレッドが、まさにここで…

AI ハリー・ポッターの衝撃

『ハリー・ポッターと巨大な灰の山らしきものの肖像』 AIにハリポタ全巻喰わせて、新作を生成させたそうな。まあご覧あれ。 Botnik Studios こいつを見て、あまりに感動してしまいました。この支離滅裂、異常な構想力、唐突な破綻ぶり。デスイーターたちが何…

新年プロジェクト2018: The Economy

あけおめ(死語)。昨年は本当にろくでもない仕事が振ってきて、あまりのストレスで体重は一時5キロも減り (残念ながらその後リバウンド)、しかもそれが期間延長というトホホなことになって、秋に終わるはずが年内いっぱいかかり、ギリギリのところで何とか…

『MONEY』こと「お金を丸裸にする」の訳者あとがき

すでにご存じの方もいると思うけれど、また山形&守岡訳で、ウィーラン『MONEY』が出る。 MONEY もう一度学ぶお金のしくみ作者:チャールズ・ウィーラン発売日: 2017/12/18メディア: 単行本 これは実は、これまで出た『経済学をまる裸にする』『統計学をまる…

サンスティーン『スター・ウォーズによると世界は』の訳者解説と嬉しい感想

つい先日、拙訳でサンスティーン『スター・ウォーズによると世界は』(早川書房)が出た。 スター・ウォーズによると世界は作者: キャス・R.サンスティーン,Cass R. Sunstein,山形浩生出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/21メディア: 単行本この商品を…

自分の翻訳をめぐるちょっとした愚痴。

翻訳についての人の感想は様々だ。そして翻訳がちょっと面倒なのは、それが訳者だけのオリジナルではないからだ。原文があって、それをもとに翻訳は行われる。ある訳文があって、それがある読者にとっては読みにくいと思えた。それはだれのせいかといえば………

Obstfeld はやっぱオブストフェルド、だってさ。

一部の方はご存じだろうけれど、こんな本の翻訳を終わっていま怒濤のゲラ直し中なのだ。 クルーグマン国際経済学 理論と政策 〔原書第10版〕 ハードカバー版作者: Paul R. Krugman,Maurice Obstfeld,Marc J. Melitz,山形浩生,守岡桜出版社/メーカー: 丸善出…

The Economist に出た、最近のチョムスキー

え、チョムスキーってこんなことになってんの、というのが面白かったので、例によって勝手に翻訳して紹介。ぼくはおもしろいと思うんだけれど、昔朝日新聞にチョムスキー本の書評をのせたら、finalventがなにやら山形はまるっきりわかっていないと言いたげな…

ファシズム学ぼう! ムッソリーニ『ファシズム:ドクトリンと制度』

The Doctrine of Fascism作者: Benito Mussolini出版社/メーカー: Howard Fertig発売日: 2006/09/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 前にムッソリーニの伝記を書評したとき、いくつかムッソリーニ関係の本を読んだんだけど、見てみると…

ケインズ『平和の経済的帰結』翻訳終わったぜ。

はい、先月末にはじめたケインズ「平和の経済的帰結」、終わったぜ。乞食ども、持ってきやがれ。 ケインズ「平和の経済的帰結」(pdf 1.2 Mb) http://genpaku.org/keynes/peace/keynespeacej.pdf そのときに述べた通り、題名のPeaceは、講和条約のことではあ…

ケインズ「講和条約の経済的帰結」:ドイツよ、これを読み直そうぜ。

もはや泥沼というしかないユーロ情勢。えらそうなこと言ってるドイツだって、借金まともに返してないじゃないか、というピケティの突っ込みがあったけれど、それはまともな歴史感覚と、適切な金貸しとしてのバランス感覚がある人ならみんな思ったこと。が、…

エンゲルス「イギリスの労働階級」終わった!

ちょっと気が向いて、若き日のエンゲルスのルポを訳しはじめたのが1年ほど前だったけど、ぼちぼちやってるうちに終わりました。エンゲルス自身が若書きだと言っているので、若々しくしてみた。産業革命の成果にものすごく興奮しつつ、一方で労働者のひどい状…

ピケティなんざ後回し! 

昨日ピケティをやっていて、何であれ年0.1パーセントの成長でも三世紀続くとものすごくでかくなる、という話が何十ページも続くので少し飽きたところで、TeXLive を2014 年版にアップデートしたりして寄り道をしていたが、突然 dvi ファイルが鬱陶しく思えて…

ピケティ『21世紀の資本』:せかすから、頑張って急ぐけれど、君たちちゃんと買って読むんだろうねえ……

Note (2014.08.04) What follows are some rants by the Japanese translator of "Capital in the 21st Century." I realized that it can be taken out of context (and that some people actually do such things), so I guess I need to explain what's g…

モーム『パーラーの紳士』:せっかく全訳あるので

The Gentleman In The Parlour作者: W. Somerset Maugham出版社/メーカー: Vintage Classics発売日: 2001/10/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見るサマセット・モームは、決して好きな作家ではない。大学一年生の英語(およびその前の受験…

『ティモシーなんとか』:既訳ひどすぎじゃね?

またまた翻訳のグチ。そろそろシリーズ第一作の改訳版が出るようで(ゲラも戻しました)、第二作目はまあそんなに改めるべきところはなく、さくっと流して訳し終えかけてるんだが、第三作目を見始めてぶち切れ。なんですの、既訳のあの機械翻訳さながらの金…

ケインズ「お金の改革論」

エンゲルスからちょっと寄り道して、若き日のケインズ。ケインズがマネタリストでもっと明解な文章を書いた頃の代物の全訳。まだ「ケインズ経済学」にはなっていない。その一方で、ブレトン=ウッズ体制につながるアイデアの萌芽は出ている。貨幣数量説全面…

エンゲルス「イギリスの労働階級」

ちょっと気が向いて、若き日のエンゲルスのルポを訳してみた。訳出したところは前置きで、おもしろいのはこの次の「大都市」の章。でもここまでの章も、エンゲルスが産業革命にすっごい興奮しているのがよくわかっておもしろいところ。エンゲルス自身が若書…

ディック『聖なる侵入』:旧訳、改めて原文と付き合わせるとかなりトホホだなあ。

聖なる侵入 (創元推理文庫)作者: フィリップ・K・ディック,大滝啓裕出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1991/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 9回この商品を含むブログ (12件) を見る大滝訳って、ヴァリスでもそうだけど、普通の英語をまともに訳せて…