ゼレンスキー大統領の2025ミュンヘン安保会議演説

2025年ミュンヘン安全保障会議で、ヴァンス米副大統領の演説の翌日に行われた、ゼレンスキー大統領の演説の全訳。

2025年ミュンヘン安全保障会議 ゼレンスキーウクライナ大統領の演説

Executive Summary

ゼレンスキー大統領は、ロシアの脅威がウクライナだけでなく欧州全体に及ぶ可能性を指摘し、ヨーロッパ独自の軍隊(欧州軍)の創設を提案した。彼は、アメリカの支援を当然としてきたヨーロッパを戒め、トランプ政権以前からアメリカの支援に変化が見られたことを指摘する。そしてアメリカ支援継続のためにも統一ヨーロッパとしての立場強化を訴えた。ヨーロッパ諸国は、独自に迅速な対応を可能にする軍備生産や防衛体制と、安全保障を実現する統一的な外交政策を構築すべきだと述べている。

また、ウクライナを当事者から除外した形での和平交渉には強く反対し、ウクライナの主権と領土保全を尊重したうえでの包括的な平和対話とプーチンへの継続的な圧力を求めた。停戦ライン/安全保障ラインとして従来の国境線を据え、それをNATOまたは類似組織が死守する体制を提案している。

(Note:ChatGPTくんに要約作らせて見たが、まず外部資料を勝手に引っ張ってきてカンニングしようとしやがる。これだけ見てまとめろと言ったが、今一つ要領を得ない。この演説のぶつ切り形式のせいかもしれない。ほぼ全面的に書き直している。あと、最初は2行のまとめ (欧州軍つくれ、プーチンへの圧力継続)だけ。正直、この講演はそれしか言っていないとも言えるんでまちがいじゃないんだが……)

感想

さて、この演説については、ユーロクラットどもが「昨日の民主主義お説教に比べ、これは実にすばらしい」みたいなおべんちゃらを述べていた。が、そんなにすごい演説かなあ。

そしてこれが、トランプ政権のちゃぶ台返しの可能性を受けて出てきたのかははっきりしない。もちろん、自分たちの頭越しにプーチンと密談されたのは不快で、それは明言し、それ以外にトランプの態度への不満もチクチク匂わせている。だがその一方で、このアメリカの態度変化はトランプ以前からのもので、自分も米大統領選以前からこの方向性を提案していた、と述べている。これは本当なのか、それとも「アメリカ依存を続けるつもりが風向き変わったので慌てて対応した」と思わせないための牽制なのか。そして、アメリカの態度変化で仕方なくであるにせよ、それを追い風として自分が昔から思っていたことを述べたにせよ、この方向性は、昨日のヴァンス演説とまったく同じではある。オールヨーロッパとして、もっと存在感出して、自分で自分の防衛に積極的に関われ、という話だ。

正直、この演説を去年やっていれば (そして欧州がそれに応えていれば) 今のアメリカも一目おいたとは思うんだがねー。

その一方で、これまでのヨーロッパの脆さを見ていると、この提案にどこまで現実味があるのか、というのは野次馬的に興味があるところ。これ自体、決めるまでに百年かかりそうだ。マクロンが、パリで緊急首脳会議を招集したのは、この話をたぶんしたいんだろうが、何がまとまるかはお手並み拝見。

ユーロクラットどもは、この提案に魅力を感じるだろうとは思う。基本的には、彼ら(講演中の「ブリュッセル」) の権益拡大を正当化してくれるものだから。そして、ロシアの脅威と、アメリカの圧力の中で、役人たちが自分たちの権益を増やす口実も揃っている。そして、言っていること自体は非常にまっとうだと思うし、何か出てくると (それもすばやく) いいなとは思う。とはいえ、Twitterで揶揄されていたがヨーロッパってのは決意表明とかは好きで、ゴージャスな会場で集まって声明出すのは好きだが、それっきりでやんねーから……

余談

あと、ヴァンスとゼレンスキーの話を見て、結局ロシアというのは、いま武器生産調達力や兵員をガシガシ持ってるのか、もう足りなくてアップアップしているのかが今一つ見えない。開戦当時は、ロシアはボールベアリングも工作機械も調達できなくなり、戦車工場も止まり、軍事パレードに借り物の前世紀の遺物T34しか出せない、若者もいなくて兵も払底、もう時間の問題だぜ、という論調だった。ところが、ヴァンスの話やこれを見ると、なんか武器弾薬は余裕で、人もまだまだ豊富にいるという話になっている。中国やイラン/ベラルーシ/カザフからの迂回輸入で、物流やサプライチェーン方面はもう完全に回復してしまったってこと?ここらへん、どうなっているのかよくわからない。