2023年6月 アフリカ代表団とプーチン大統領との会合

Executive Summary

2023年6月、アフリカ連合を筆頭に、アフリカ大陸代表として7ヶ国で構成される代表団が、ウクライナとロシアを訪問。ウクライナ侵略により生じた食糧危機とエネルギー危機でアフリカが苦境に陥っているので、平和を目指す対話路線をプーチンに陳情した。自国の直接的な利害と同時に、アフリカとして主体的にこうした戦争仲裁のような活動を行うのはこれが初めてであり、今後自分たちも国際関係の中で、平和と良好な世界の構築に向けて構築したい、できることがあるならウクライナとロシアとの和平に少しでも貢献していきたい、国連憲章に基づく安定した国際秩序を作りたいという決意を述べ、対話と人道支援を訴えた。

これに対してプーチンは、代表団の話を聞き終える手間すらかけず、自分たちは国連憲章に一切違反しておらず、ウクライナの流血クーデーター政権とその飼い主の西側が悪いのであり、食糧危機は西側の無謀な金融緩和と横取りのせいだから自分たちは何もしない、すでに対話には応じ、2022年前半にトルコで和平条約に調印までして (そんなものが出てきたのはこのときが初めて)、その約束どおりキエフから軍を撤収してやったのに、ウクライナは恩知らずにもそれを反古にして (交渉は多少の歩み寄りはあったが合意にはいたらず、さらにブチャ虐殺が露見し完全に決裂)、攻撃を続けているのだ、相手が悪い、対話に応じないのは向こうだ、さらにお前らの言ってる人道支援だのはとっくにやっとるわい、とアフリカ側の陳情をその場で一蹴した。


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2023年6月17日 サンクトペテルブルクにて

以前の合意にしたがって、アフリカ7ヶ国の代表がサンクトペテルブルクに到着し、ウクライナをめぐる状況の解決可能性について議論を行った。

代表団は、ザンビア大統領ハカインデ・ヒチレマ、アフリカ連合議長兼コモロ大統領アザリ・アスマニ、セネガル共和国大統領マッキー・サル、南アフリカ共和国大統領シリル・ラマポーサ、エジプトアラブ共和国首相ムスタファ・マドブーリー、コンゴ共和国国務大臣および大統領府長官フロレント・ンツィバ、ウガンダ特務大統領特別公使ルハカナ・ルグンダ。

ロシア側の出席者は外務大臣セルゲイ・ラブロフと大統領補佐官ユーリー・ウシャコフ。

アフリカ代表団とプーチン@サンクトペテルブルク (c) RIA Novosti

 

ロシア大統領ウラジーミル・プーチン:

アフリカ連合議長兼コモロ大統領アザリ・アスマニ殿、セネガル共和国大統領マッキー・サル殿、南アフリカ共和国大統領シリル・ランポーサ殿、ザンビア共和国大統領ハカインデ・ヒチレマ殿、エジプトアラブ共和国首相ムスタファ・マドブーリー殿、コンゴ共和国およびウガンダ代表のみなさん。

友人諸君。

みなさんをサンクトペテルブルクにお迎えできて心底嬉しく思います。

アフリカ諸国との包括的な関係発展はロシア外交政策の重点です。我々は一貫して、アフリカ諸国と、主要な地域機関——アフリカ連合——との伝統的な友好関係を、平等、相互への敬意、国内問題への不干渉の原則に基づいて強化する立場を維持してきました。

今年、我々のアフリカパートナーたちとの協力は、可能な限り最大の広範な形で積極的に進められています。記念碑的なインベント——第2回ロシアアフリカサミット——が間もなくここサンクトペテルブルクで開催され、そのための包括的な準備が進められております。政治関係、貿易や経済的なつながり、科学技術、人道問題など各種分野での協力について、有望な新しい方向性がこのサミットで示されるものと私は確信しております。

ロシアはアフリカ諸国により、世界および地域の安定性と安全保障の維持、紛争の平和的解決、国際関係のより公正なモデルの確立を支持するアフリカ諸国の筋の通った立場に対し、最大級の敬意を抱いていることを、ここで強調したい。

独立の主権的で平和な政策追求の野心も支持いたします。ウクライナ危機に対するアフリカ友邦のバランスの取れたアプローチも歓迎します。

友人諸君、紛争解決の方策を探そうというみなさんの関心には感謝します。ウクライナをめぐる状況についての話し合いという皆さんの申し出を、我々は即座に受諾しました。

みなさんがこの文脈で具体的なアイデアや提案をお持ちと聞いております。この問題は南アフリカ共和国大統領と何度も議論してまいりました。この問題定期について彼に感謝いたします。

改めて強調しておきますと、公正の原理と参加国の正当な利益の原則に基づいた平和の実現を求めるあらゆる人々との建設的な対話に我々はオープンです。

ではこれで議事をアフリカ連合議長兼コモロ大統領アザリ・アスマニ殿に譲ります。

そしてその後、我々はこの議場に入る直前に合意した通り、代表団の全員の意見をアルファベット順に拝聴します。合意の通りです。

ありがとうございます。

アフリカ連合議長&コモロ大統領アザリ・アスマニ ((c) RIA Novosti)

アフリカ連合議長兼コモロ大統領アザリ・アスマニ (重訳): ありがとうございます。

ウラジーミル・プーチン閣下、アフリカの偉大な友人にしてロシア連邦大統領殿、

同僚のみなさん、閣下諸賢、アフリカ代表団の国家元首および政府代表の皆さん

大臣のみなさん、紳士淑女の皆様、

まずはプーチン大統領閣下およびロシア国民に、私たちがここサンクトペテルブルクという伝説的な美しい大都市で享受している温かい歓迎を感謝いたします。

また我々を受け入れる時間を割いて下さったことにも感謝します。ロシアとウクライナを敵対させ、すでにかなり長期間続いている危機において、持続可能な平和を見つけるために我々なりに貢献したいというこの代表団の望みを信じて下さったことにも感謝いたします。

大統領閣下、紳士淑女の皆様。

私はアフリカ連合議長です。2月にこの役職に就きました。またアフリカ連合の使命の実施を続ける責任もその時に負いました。アフリカ大陸のみならず、全世界の平和と安定性を促進するということです。

大統領閣下、友人諸君、ご存じのとおり戦争は常にひどい結果をもたらしますし、それが長引けば、影響も深まり空前のものとなります。これについて我々があなたに今さら教えることなどございません。貴国はこれまで多くの痛々しいできごとを体験されてきたのですから。

この危機は今ここにあるもので、スラブの隣接する友邦2つに関連するばかりか、世界全体にも影響します。特に、我々アメリカ大陸に影響するのです。食糧安全保障とエネルギー安全保障の面で空前の問題を引き起こしております。

だからこそ我々は今という時期に貴国まで出かけて、アフリカ大陸の代表団として、常にロシアとアフリカを結びつけてきた友情を示そうと決めたのです。あなたの言い分を聞いて、あなたを通じロシア国民の意見を聞きたいのです。そしてこの惨状を終わらせるためにウクライナとの対話を始めるよう奨めたいのです。

我々がこのミッションに乗り出したのは、残念ながらアフリカ人として、我々が多くの紛争を目撃してきたからです。そしてこうした問題は、対話と会談を通じてしか解決できません。我々の経験をあなたと分かち合い、よい結果を探し、この危機からのよい出口を見つけたい。我らが兄弟たるラマポーサ大統領は、ロシアとウクライナ両国を対話に向けて説得できるのではないかと期待する提案を行いました。

ご存じの通り、我々は昨日ウクライナに行き、ゼレンスキー大統領と会談して、彼の話を聞き、紛争の解決を見出すための私たちの提案を話しました。

大統領殿、首脳のみなさん、紳士淑女の皆様、

アフリカの仲裁は、平和の名のもとに行われる仲裁活動なのだという点は強調させてください。我々が暮らすグローバル化した世界では、ある国や地域が危機にさらされれば、その性質がどんなものであれ——我々はこの点はよく知っています——実に様々な国々が脅威に直面するのです。だからこそ我々は、こうした危機を防ぐために手を尽くさねばならないのです。

大統領閣下、あなたとロシア国民にお届けしたいと願うメッセージの核心がこれです。仲間である両国の間の平和こそが、あなたの地域のみならず世界全体の安定における鍵となる要素なのです。そしてアフリカにとっても、これまでロシアとの間で享受してきたすばらしい関係を考慮すれば重要な要素となります。

我々アフリカ諸国の首脳一同、アフリカ大陸の代表は、あなたが平和的な解決を選んで下さるよう希望しております。この面であなたが行う努力について、我々はあなたを、2つの友邦を支援する用意があります。

ご清聴ありがとうございます。

 

ウラジーミル・プーチン: 親愛なる友人よ、お言葉をありがとうございます。

全面的な議論を行い、その後にこの機会を利用して私の立場を表明し、意見交換を行いましょう。皆様の昨日の旅行結果も含めて。

では今度はセネガル共和国マッキー・サル大統領に議場をお譲りしましょう。

セネガルのマッキー・サル大統領 ((c) RIA Novosti)

セネガル大統領マッキー・サル(重訳): ありがとうございます、ウラジーミル・プーチン大統領。

閣下、親愛なるウラジーミル、まずはすばらしい歓迎と、我々との面会の時間を割いて下さったことに感謝いたします。

あなたは常にアフリカを気にかけ、懸念について我々が話すときには、いつも耳を傾けてくださいました。これはロシアとアフリカとの関係が良好であることを裏付けるものです。こうした関係は、最初のサミット以来さらに改善されました。間もなくワレアレは第2回ロシアアフリカサミットを、ここサンクトペテルブルクで開催します。七月になります。

大統領どの、この場を借りて、改めてこのような友好的な雰囲気の中で我々を迎えてくれたことに感謝いたします。

2022年6月3日にも我々を迎えていただきありがとうございました。当時私は、アフリカ連合議長としてロシアに参りまして、平和と沈静化のメッセージをお伝えいたしました。我々は特に、ロシアとウクライナからの食糧と肥料供給の問題を懸念しておりました。あなたは我々にしっかり耳を傾け、この紛争を解決するために我々を支援する用意があると示してくださいました。あなたや他の関係者、トルコや国連などのおかげで、我々は合意に達しました。穀物輸出再開合意です。

大統領閣下、我々が再びあなたと面会しているのは、我々の新たな仲裁ミッションの一部としてです。アフリカ連合議長がすでにこのミッションについて述べました。我々はロシアとウクライナの紛争の仲裁者です。

このイニシアチブは善意のものであり、アフリカ大陸がこの大規模な大戦争において善意を伝えるためのものだという点は強調させてください。人道問題を解決したいし、この紛争の両側に信頼と対話を取り戻すための条件を作りだしたいのです。

昨日、キエフを訪れまして、このメッセージを伝え、善意について語り、ゼレンスキー大統領の話を聞きました。私は対話がまだ可能だと指摘し、それが決して論外ではないと述べました。ただし国連憲章準拠といったいくつかの条件は言及されました。私はロシアという、国際連合の創立国であり、国連安全保障理事会の常任理事国も、その憲章には従うものと確信しております。そして今日、いくつかの問題を議論する機会があります。これについては南アフリカからの同僚からお話いたします。

大統領閣下、軍事面での地上の状況にもかかわらず、対話や議論のチャンネルは維持するのが重要なのだと我々は固執いたします。少なくとも人道問題が優先事項となり、その他和解のあらゆる側面も議論できるようにしなければならないのです。人道活動は強化されるべきだと思えますし、特に戦争捕虜の交換や民間人に関わる問題ではそれが重要です。こうした問題について詳しい議論ができればと考えます。

6月9日のロシアによるウクライナ捕虜の釈放は歓迎したいと思います。これは戦争捕虜釈放の合意に達するための、とてもよい決断だったと信じます。

大統領閣下、我々はあなたのお話もうかがいにまいりました。そして、アフリカはロシアとウクライナの平和を求めているとお伝えしたかった。我々は、対話と妥協を通じて平和が可能だと確信しております。

ご静聴ありがとうございます。ありがとうございます。

 

ウラジーミル・プーチン: 誠にありがとうございました。

南アフリカ共和国大統領、シリル・ラマポーサ殿、お願いします。

南ア大統領シリル・ラマポーサ ((C)RIA Novosti)

南アフリカ共和国大統領シリル・ラマポーサ: ありがとうございます。あなたにご挨拶を申し上げたい、プーチン大統領、ロシア連邦大統領殿、そしてさらに改めまして、我が同輩たる国家元首のみなさんおよび政府首脳や来場できない大統領の代理公使のみなさんにもご挨拶さしあげます。

面会に同意してくださいましてお礼を申し上げます。我々はアフリカ7ヶ国の平和イニシアチブであり、基本的にこの紛争においてロシアとウクライナの間の平和を促進する、講和ミッションなのです。

ご提案申し上げたいことが十点ございます。私たちの提案は本当に、10の要素を核としております。

第1点はもちろん、我々は耳を傾けたいということです。ここに参ったのは話をうかがうためです、昨日ゼレンスキー大統領に話を聞いたように。彼はいろいろな点を述べられましたし、また我々もあなたに会い、この戦争をめぐるあなたの見方を聞くつもりだと申しました。傾聴し、あなたが述べられる見方を認めたいと思って下ります。しかし我々はまた、世界の多くの主要プレーヤーからも、他に多くの提案が行われていることも承知しております。彼らも平和提案を出しております。我々の提案は、すでに提出された他の提案と競合するものではありません。

我々が挙げたい第2点、この広範な提案における主要な論点は、この戦争は止めねばならず、交渉と外交手段を通じて止められねばならないというものです。戦争は永遠には続きません。あらゆる戦争は停戦せざるを得ず、どこかで終戦するしかないのです。そして我々は、この戦争を終わらせてほしいというきわめて明確なメッセージを伝えにやってまいりました。我々がそう申し上げるのは、この戦争がアフリカ大陸に負の影響を与え、さらには世界中の他の多くの国にも悪影響をもたらしているからです。大陸としてアフリカは、経済で悪影響を受けており、商品価格が上がり、特に穀物と肥料価格が上がっています。そしてこれは、継続中の戦争の結果です。我々がここに参った理由の一つでもあります。この戦争が終結することが、我々の集合的な利益となるのです。

ご提案したい第3点は、紛争の鎮静化をお願いしたいということです。両側での紛争の激化は平和プロセスを促進するものではありません。ですから、平和への道を探る中で、紛争の鎮静化を実現していただきたい。

第4点は、これまた多くの他の提案でも触れられていますが、我々は国の独立主権を、国連憲章に基づいて承認するということです。そして確かに、その憲章の条項に従い、我々みんなが国際的に認知された原則にもとづいて行動すべきであり、したがってその理由からして、我々はこの憲章にしたがって各国の独立性を承認すべきだと提案します。

提案したい第5の点は、すべての国にとって安全保障が確保される必要があるということです。この問題はあらゆる方面から定期されており、あらゆる方面が何らかの保証をもとめており、我々もそれに同意します。

提起したい第6の点は、我々各国に影響している問題でして、黒海経由の穀物輸出解放を訴えたいのです。どんな封鎖措置があるにせよ、それを開いて、穀物や商品を市場に開いていただきたいのです。

提起したい第7の点は、必要とする人々や、紛争の結果として苦しむ人々に対する人道支援を確保すべきということです。

提起したい第8の点は、マッキー・サル大統領も述べられたもので、両側の戦争捕虜の釈放です。これに関係した別の課題は、この紛争に囚われた子供たちです。彼らもまた、やってきた場所、自分の家に帰されるべきです。

我々の第9点は、すべての戦争は破壊につながるので、戦後復興が必要であり、我々は戦争を超えて起こるべき再建を支援すべきだということです。

第10点はですね、プーチン大統領、我々が戦争終結に向かうプロセスへのさらなる関与を期待したいということです。我々はこの点をゼレンスキー大統領に明確に伝え、彼はアフリカ大陸やここに会したアフリカ諸国として、我々もそこに一役買えるという点に同意されました。ですから我々は、本日のこの取り組みを超えて、さらなる取り組みを行うようお願いしたいのです。というのも戦争を終わらせるには、たくさんの会合や取り組みが必要となることが多いのですから。そしてここに会しました7ヶ国が代表しているアフリカ大陸として、我々にも行える貢献があると本当に信じております。そして、この貢献は両国に対する最大限の敬意を持って行うつもりであり、両者が定期した立場を尊重しつつも、共通の立場がそこから生まれ、平和につながる立場が生まれると信じてその貢献を行うものであります。

これまで提起されてきた各種の提案は、見出すべき平和の基盤を敷くものだと考えますし、それこそまさに我々が探究したいと考えるものです。それにより我々みんなが共に、この戦争の終結に向けて貢献できるのです。

プーチン大統領、これらは我々がゼレンスキー大統領にお示しした提案の要点となります。それをいま、あなたにも提示いたします。我々は、いまこそ両者が交渉をすべき時だと信じております。交渉してこの戦争を終わらせるのです。というのもこの戦争は大きな不安定性と被害を世界中の諸国に及ぼしているからで、我々アフリカ諸国も、この戦争の影響を感じているのです。

我々がここに参ってあなたと共有したかったのは、以上です。そして最後に、これが歴史的なミッションだと言うことは述べておきたいと思います。アフリカ大陸は、ここで7ヶ国が代表しておりますが、この種のミッションに本当の意味で関わったことはありません。したがって、この一歩を踏み出したのは、我々だって貢献できるのだと信じてのことだというのは申し上げたい。我々の言い分に耳を傾ける時間を割いていただき、感謝したいと思いますが、もっと重要なこととして、あなたのおっしゃることにも耳を傾けたい。我々を迎え入れてくれて、誠にありがとうございます。

ロシア大統領ウラジーミル・プーチン ((c) RIA Novosti)

ウラジーミル・プーチン: 大統領殿、友人諸君

すでに合意したとおり、これから議場をそれぞれの代表団長に、喜びと関心をもっておゆずりします。しかし貴いご来賓三名からの発言を聞いて、まずはここに我々が集まった理由と、何を議論するのかについて少し言わせていただきたい。

まず。みなさんもご存じの通り、私も確信していることだが、ウクライナでのあらゆる問題は2014年ウクライナにおける、憲法違反の武装流血国家クーデターの後で生まれたものです。このクーデターは西側スポンサーたちの支援を受けていました。実は連中はこれについて、まったく隠そうとしていません。クーデターの準備と実行に使った金額まで具体的に述べています。そしてこのクーデターこそが現在のキエフ指導者たちの権力の源なのです。これが第一点。

第二に、その後、ウクライナ国民の一部はこのクーデターを支持せず、そうした地域の住民はその事件に続いて権力を握った者たちに屈しないと宣言したのです。ロシアはそうした人々を支援するしかなかった。そうした地域との歴史的なつながりや、そうした地域住民との文化言語的なつながりを考えてのことです。

長きにわたり、我々は平和的手段でウクライナ情勢を回復しようとしてきました。お聞き及びかもしれませんが、いや何かお聞きになっているはずですが、ベラルーシ首都のミンスクで対立する勢力の間の、これに対応した合意が調印されたのです。こうして、通称ミンスク停戦プロセスが開始されました。

ところが西側諸国やキエフ政府当局者たちは、単にこちらを釣っていただけで、その後ほぼ公然と、我々の平和的合意には従わないと述べ、本当に平和的プロセスから脱退したのですよ。

友人たちよ、ロシアがウクライナで形成された独立国を認知せざるを得なくなったのは、この後のことだったのです。ルハンスク人民共和国とドネツク人民共和国。この両国を我々は、8年も承認してこなかったというのに。

さてこの一件の国際法的な側面に話を移します。問題:我々はこうした地域の独立を承認する権利があったか? あります。国連憲章に完全に準拠しています。というのも国連憲章の対応条項に基づけばこうした地域は独立を宣言する権利を持っていたからです。これで我々は彼らを承認する権利が与えられ、承認したのです。

そして、友邦協力条約に調印した後で、我々は国連憲章に完全に準拠した形で彼らの支援を提供する権利を持っていました。キエフ政権はこの問題を武力解決しようと何度も試み、まさに航空機、戦車、砲弾を民間人に対して使う軍事行動を仕掛けてきたのです。この戦争を2014年に始めたのはキエフ政権なのです。そして国連憲章の51条に従い、我々は自衛条項を掲げて彼らに支援を提供する権利があったのです。

だからこそ、同輩のみなさん、私がいま述べた論理は、国際法と国連憲章のどちらから見ても一点の曇りもないものであり、これは私自身の見解でもあり、我が同僚や専門家たちも同じ意見なのです。これが最初の話です。

第二の話は、我々みんなが懸念していることですが、まちがいなく世界経済、食料、そしてそこに関わるすべて、インフレなどの話です。

強調しますが、国際食料市場における危機はロシアがウクライナで行った特別軍事作戦が引き起こしたものではありません。ウクライナ情勢よりはるか以前から発達しつつあったもので、それが浮上したのは西側諸国——アメリカとヨーロッパ諸国——がコロナ対応における問題を解決しようとして、まったく不当な形で——それも経済的に正当化できないというだけではありません——お金を刷り始めたせいなのです。

そしてこの巨額のお金を刷ったことで——アメリカでは、確か9兆ドルで、ヨーロッパでは5兆ユーロでしたか——世界市場のあらゆる商品財を吸い上げてしまい、掃除機のように、自分だけの利益のためにそれをやって、独占的な立場を濫用し、発展途上国を不利な状況に追いやったのです。詳細は避けますが、これは、ロシア語の表現だと医学的な事実で、一目でわかることです。

さて、穀物イニシアチブの話に移りたいと思います。はい、確かに何が起ころうとも、ウクライナ紛争に関わるどんな問題があっても、ロシアとウクライナの紛争があっても、発展途上国はアフリカ諸国を含め、食料が必要であり、苦しんではならないというのは理解しております。

我々は、ウクライナの穀物を世界市場に供給しても、貧困や飢餓の問題が解決されるとは考えません。いいえ、そうはならないのです。それでも、国連事務総長グテレスの提案を受け入れて、できる限りのことはやりました。まさに当時彼が言ったようにウクライナの穀物を、まず何よりもアフリカ最貧国に確実に供給するためにね。譲歩をしたのです。

その結果はどうでしょうか、紳士淑女の皆様? 数字を挙げましょう。数字はドライで偏りがありません。

6月15日現在、我が国とトルコの支援によりウクライナ港湾からは3170万トンの農産物が輸出されています——エルドアン大統領はこの点で尽力してくれました。3170万トン——なかなかの数字です。

この3170万トンのうち、アフリカの窮乏した国々に出荷されたのは、たった97.6万トンです。つまりジブチ、ソマリア、スーダン、リビア、エチオピアです。たった3.1%ですよ、紳士淑女の皆様。こうしたヨーロッパの新植民地主義列強、実質的にアメリカは、またもや国際社会と、窮乏したアフリカ諸国を欺いたのです。3170万トンが輸出されたのに、アフリカの窮乏国に到達したのはたった3%。

これが詐術でなくてなんでしょうか? 連中は何世紀にもわたり世界全体にウソをつくのに慣れすぎて、いまだにそれを続けているのです。一方、38.9%——1230万トン——がEU諸国に出荷され、11%はトルコ、残りは他国に出荷されました。

だからこそ、この問題にご注目いただいたのです。ウクライナの穀物を世界市場に供給しても、食料を必要とするアフリカ諸国の問題は解決されません。この話にはまた戻ります。

さて、話し合いですか。

ラマポーサ大統領殿、友人諸君、

ロシアは話し合いを拒否したことはありません。これは強調しておきたいが、エルドアン大統領の助けのもとで、トルコはロシアとウクライナの間で実に多様な対話の場を主催し、信頼醸成手段を編み出そうとしました。まさにあなたが今おっしゃったことです。そして条約の草案も作成しました。ウクライナ側に、この条約が機密になるなどと合意したことはありませんでしたが、それでもそれをだれにも見せなかったし、それについてコメントもしませんでした。

この条約草案を着そうしたのは、キエフからの交渉団のトップの一人です——彼はそれにサインした。ほらごらんなさい、ここにあります。名称は『ウクライナの永続的中立性と安全保障に関する条約』。まさにあなたのおっしゃった保証ですよ、我が友、南アフリカ共和国大統領殿。全18条。

さらに付録もあります。ほら——もう細かい話もしませんが——軍とかそういう話をしております。すべて書かれていますよ。兵器の数や兵員の数まで。これが文書で、キエフ代表団のイニシャルも入っています。これが署名です。

「これがその和平条約草案です」(プーチン) ((c)RIA Novosti)

しかし我々が約束通りキエフから軍を撤収したのに、キエフ当局は、そのご主人どもがいつもやることですが、そいつを歴史のゴミ箱に叩き込み、いや穏健な表現にしましょう。汚い表現は避けるようにしましょう。彼らはこれを拒絶したのです。他の合意からも彼らが離脱しないという保証はどこにあるのでしょうか? しかしそんな状況下においてすら、我々は話し合いを拒絶したことなどありません。

友人諸君、

話し合いなどしないと宣言したのは、我々ではなく、ウクライナ首脳部なのです。さらに現在のウクライナ大統領はこれに対応して、一切の話し合いを禁じる政令に署名しています。だからこそ私は、あなた方の懸念を理解し、それを共有しております。そしてもちろん、みなさんの提案はすべて検討する用意があります。しかし我々は話し合いを拒んだことはない——拒んだのはウクライナ側で、そういう政令まで出しているのです。

こっちにどうしろと言うんですかねえ?

戦争捕虜の話ですが、これは継続中のプロセスです。これに言及してくれて大いに感謝します。サウジアラビアとUAEをはじめ我が国のパートナーや友邦たちはこの面で尽力してくれています。このプロセスを続ける用意はありますよ。

子供の話ですか。子供は神聖なる取り組みです。我々は彼らを紛争地帯から遠ざけ、彼らの命を救ってその健康を守ったのです。起きたのはそういうことです。だれも子供たちを家族から引き離したりはしない。だからこそ我々は、孤児院を丸ごと移転させましたし、子供が家族と再会するのに反対したこともありません。もちろんその親戚たちがやってくればの話ですが。これについては一切障害はないし、今後もありません。この点は保証いたします。

議論の途中でしたがこれが申し上げたかったことです。時間を割いていただき恐縮です。

では続けましょう。こんどはザンビア共和国大統領、ハカインデ・ヒチレマ殿に喜んで議場をお渡しします。

お願いします。

(訳注:2023年6月20日現在、クレムリンサイトは、他のアフリカ代表の発言を収録してない)