ケインズ『人物評伝』全訳おわった。

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epubケインズ『人物評伝』表紙。
年明けてからケインズ『人物評伝』を訳し始めて、月の内になんとか終わりました。

ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』pdf 2.7MB

 

ジョン・メイナード・ケインズ『人物評伝』epub 1.4MB

epubは、pandocで機械的に変換しただけ。現在は、もとの翻訳は半分くらいをlatexで書き、残り半分はmarkdownで書いて、pandocでlatexにして、そのlatexをもとにepubにしている。記事毎の改ページとか、きちんとできていないし、まだepubとして改良の余地はたくさんあると思う。今後これは改良しましょう。

(ふーむ、epubってxhtmlのかたまりなのか……ちょっとそれを知っていじってみました。表紙も一応くっつけておきました。このままアマゾンにでも出そうかね。xhtmlのかたまりということは、markdownを使う必然性はあまりなくて、latex-->html/epub変換だけすればいいということになりそうだなあ。)

読み方

読み方は、好きなところを読んでいただければいい。雑文集だし、通読する意味はまったくない。個人的におもしろいのは

やっぱ、人物評伝で一般にいちばんおもしろいのは、変人とキXXイ、それと肩の力が抜けたやつですねー。

一方、最初の政治家編は、本当に読む人の興味次第になってしまう。あと、いちばん長く、いちばんケインズ的には力こぶが入っているアルフレッド・マーシャルの伝記は……すまん、かなりダレるし無意味に長くて、訳しながら投げだそうかと思ったことも数知れず。『経済学原理』なんていまはほとんど読まれていないし、その成立事情をアレコレ述べられても、なかなか関心は持てないのだわ。奥さんのことを書いたやつのほうが、短いし気楽だし、雰囲気が伝わるんじゃないかと思う。

 

とはいえ、決してつまらないわけではない。もうちょっと読まれてもいいんじゃないかと思うけれど、既存の訳は本当に生気の無い訳文で本当にひどい代物。あれを楽しんで読める人は、何人いることやら。やっぱり、文章として発表したものと、口頭での発表とはちがうので、それを訳し分けるくらいの手間はあってもいいんじゃないの? おふざけの部分は、多少はおもしろく訳して罰は当たらないのでは? それを多少は改善しようと思って訳したので、まあ気が向いたら読んでやってください。

見所その1:文体

ケインズの、ハイソなイギリス知識人の、もってまわった言い方、気の利いた引用やほのめかしを多用して己の知識をひけらかすやり方については、これを見るとかなりよくわかると思うし、それを多用しすぎて現在では何を言っているのかよくわからない部分も多い。ケインズの英語は流麗で見事な名文で云々、だからわかりにくいのだ、というようなことを言う人は結構いる。でも、そもそもわかりにくい時点で名文じゃないやね。彼は(あるいは同じ事だけれど20世紀初頭という時代は) こういう書き方がよいとされていたというだけで、ケインズはそれにはまりすぎて、わかりにくくなっているのだ、ということはおわかりいただけると思う。

実は本書には一つだけ、そうでない文章がある。最後のアインシュタインについての文だ。これは、彼は発表を意図していなかったらしく、その書きぶり、口調、文体、すべてちがう。彼の外向きの文と内向きの文のちがいは、こういうのを見るとよくわかると思う。

見所その2:思想

そしてそのアインシュタインの文を見るとむき出しにされている反ユダヤ思想。すごいなー。他のところでは結構老獪に、いろんな自分の考えを露骨には出さないようにしているだけに、驚きます。

あとは読んでのお楽しみ

が、まあ最初に述べたように、流し読みするもよし。あと結構、昔のイギリスの変な風習とかで誤解しているところもあるだろうから、何かお気づきの点があれば、ご一報くださいな。