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ピケティの予習に:オースティン、ゾンビ、ヴァンパイア

ネタ 経済学

Capital in the Twenty-First Century

Capital in the Twenty-First Century

ピケティ、半分終わりましたわよん。この調子でいけば年末はなんとかなりそうだが、予定よりも遅れている……

遅れの理由としては、文中で史料として頻出する18世紀の小説とか、20世紀初頭を舞台にした映画とかをいちいちチェックしなきゃいけないためもある。富の構造と経済成長が昔の社会をどのように形成していたかという傍証として、こういう文学作品とかも結構使われているので、一応眼を通すんだが、結構うざい。

ゴリオ爺さん

ゴリオ爺さん

でも、まさにそのうざい部分、現代のぼくたちにはピンとこない部分こそが、当時の社会における富と所得の性質に関する常識というものを反映している結果なのだ、というピケティの指摘はなかなかおもしろい。バルザックゴリオ爺さん』における労働所得と資本所得の対比とか、言われて見ればなるほど、という感じ。

とはいえ、それがわかってもジェーン・オースティンとか、いま読むのは面倒だし退屈だわー。そう思っているあなたの一助ともなればと思って紹介。

高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

高慢と偏見とゾンビ(二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

アメリカでは半年くらいやたらにはやったマッシュアップ小説。のたくたした退屈な田舎貴族とオールドミスの日常に、ゾンビたちを侵入させるとそれだけで小説世界が一変! あまりのくだらなさに涙が出るけれど、でもゾンビ以外の部分はちゃんとオースティンの世界なので、何も心配なし。楽しく古典が読めます……

……とはいったものの、このマッシュアップ、ピケティが指摘するオースティン世界の一つの特色をつぶしてしまっている。それは、田舎貴族どもは資本(土地)からのあがりだけで暮らしていて、働かないということ。この本だと、ちゃんとゾンビと戦ったりしているので、その点はちゃんと認識する必要がある。が、年末までにこれでも読んでおくと、理解が深まりますことよ。

この手のくだらないマッシュアップといえば、「リンカーンヴァンパイアハンター」(邦題「リンカーン:秘密の書」)は本当におもしろい映画だったのに、全然話題にもならなかったが、よくできた楽しい映画なのでついでに見ておいてくださいな。ちなみに、この映画でネタにされているアメリカ南部の奴隷制に関する考察もピケティにちゃんと出てきます。予習もかねて是非ごらんくださいな。

(こういう紹介を見ると、ぼくがふざけて変なモノを紹介して喜んでるだけだと思ったり、またここで紹介されたものを見たり読んだりして、「馬鹿にしている」とか怒る人がたくさんいるんだけれど、おふざけや冗談からでも学べるものはある、というか優れた作品ではまさにそのおふざけのツボこそが見事にいろいろなものの本質をついているんだ、ということがわからん人は、たぶん何も本当に学ぶことはできないと思うのだ。)




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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.