ハッカー、ピンチョン、スティーブンスン

シンセンで、ハッカースペースと華強北の電気街と工場とベンチャーとインキュベーション/アクセラレータとその他あれやこれやを見物してきて、非常におもしろかったんでまた後日くわしい報告は鋭意執筆中なんだが……

Haxにいって飯に流れたところへグーグルグラスかけた関係者がやってきて、話をして自己紹介したとき、「ヒロオだ」と言ったらそいつが「ヒロというと、つい『スノウクラッシュ』思い出しちゃうよな」と即座に言って驚愕。ぼくの名前聞いただけでいきなりあの小説のほうに話が飛ぶとは!

ちなみに、スノウクラッシュの主人公はピザ配達人のヒロというのです。こんなところで言及してるけど、ぼくは自分と同じ名前のやつが出てくるので私的に喜んでいただけで、でもそれをいきなり連想する人がいるとは思いませんでしたよ。

ということでいきなり話はそっちのネタに。ニール・スティーブンスンはその後、BeOS についての絶賛文とか書いたあとに、長ったらしい(がおもしろいかと言われるとうーん)本ばかり書くようになって最近全然読んでいないけれど、最近は何をしてるんだろうねえ。

というような話でやたらに盛り上がり、でも最近あんまり小説読んでいないが……といってそいつが「おまえならたぶん楽しめるが、正直いってほかにだれにもすすめられない、オレ一人しかおもしろくないであろう小説」と言って絶賛というかけなすというか、複雑な言及をしていたのが、トマス・ピンチョンの最新作『Bleeding Edge』。

ハッカーとネット系のネタばかりなところへ当時のニューヨークのローカルネタが多すぎてほとんど内輪小説みたいなんだって。だれが想定読者なのかわからないけど、でもはまれば面白いとのこと。

ふーん。なんかほめている書評はみんな口ごもったようなものか、ほめかたがあまりに漠然としたものばかりだったんだけれど、そういうことですか。ぼくも読まずに放ってあったんだけれど、これ聞いて俄然読む気になってしまったわ。でもそういうことだと、いま新潮での訳者陣でちゃんと訳せる人いるのかなあ。訳者陣はみんな勉強家だからあれこれ調べて注は書いてくれるかもしれないけど、ネタをネタとしてわかるのと、ネタを調べてお勉強としてわかるってのはちがうから。There's a difference between getting the joke, and understanding the explanation of the joke, you know.

それでそのまま、そいつの案内で5人ほどで群れて深圳のクラブに流れたら、そこにいたイタリア人のジジイにアタックされて……と言う話はまたいつかするかも。




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