ハイブリッド日本 文化・言語・DNAから探る日本人の複合起源 (東アジア叢書)
- 作者: 上垣外憲一
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: 単行本
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前にこの本、朝日新聞の書評委員会で拾ってきたんだが、日本人がいろいろ混じっているなんてあたりまえではないか、と思ってあまり興味を持てずに流してしまったのだけれど、ダイアモンドの『銃、病原菌、鉄』追加章を読んで、その後あれこれ見ていると、思ったほど当たり前ではないんだねー。そんなわけであらためて読んで見た。前よりはずっとおもしろく読めた。DNA の分析や言語の話についてもあれこれ出ていて、ダイアモンドのやつよりは詳しい。当然だけど。また、神話などについての記述もそこそこ詳しい。
やっぱり日本人の起原の一部としては、白村江の戦いで負けた朝鮮の人たちがたくさん逃げてきたのはまちがいないところなので、そういう影響はあるはず。で、遺伝的ないろんな話は解釈がいろいろあるんだけど、一つには、「朝鮮半島からきた」と単純にいった場合に何を意味するか、という問題。単に「朝鮮半島を通ってきた」という話もあるし、そこに住んでいた人があるとき移住してきた、というのもある。
さらに嫌韓なネトウヨ諸氏は、朝鮮半島から来たというだけでいまの韓国人だの北朝鮮人だのがどうしたこうしたとキーキー言い始めるんだが、その朝鮮半島自体もやたらに人が入れ替わっていてあれが滅びてこれがやってきて、というわけで解釈もいろいろあり得る。朝鮮半島からきた、というだけでは何も言えないっつーことで、朝鮮半島ときいた瞬間にバカな条件反射起こすのはやめないと、ということ。ネトウヨ的には、この本は親韓的な本ってことになると思うのでそれだけでアレだろうけど、でもいろいろ解釈できておもしろい部分も多い。稲作も、遺伝子を見ると朝鮮半島経由ではないかもしれないようで、江南から直接きたのかも、とか。でも一方で朝鮮半島の影響もあるので云々かんぬん。ほんと色々あって一筋縄ではいかない。
ただ書き方として、どこまでがわかったこと、どこまでが定説ないし有力な説、どこまでが著者の単なる思いつきなのか、という区別があんまりできていないのがちょっと困りもの。日本と朝鮮語が別れたのが五千年くらい前だというのを、著者は自分がじっくり言語を見ていて独自にそう思うと書くんだが、いやそんな、にらんでてわかるもんじゃないと思う。
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.